表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/43

第二話 友達

 お昼時の学校内は、生徒と教師の声で賑やか。それぞれが自分の時間を楽しんでいた。


 ワイワイと賑やかな教室内に一人、椅子に座りスケッチブックを広げている女子生徒が居た。


 肩まで長い黒髪に、色白の肌。

 茶色の瞳は、スケッチブックへと真っ直ぐ向けられている。


 制服は着崩すことはせず、スカートは膝より長い。

 リボンもきっちりと付けていた。


 今の季節は夏なので、半袖のワイシャツを着用していた。


 生徒の名前は、佐々木美鈴。

 周りと馴染むのが苦手で、一人で絵を描くことが多い生徒だ。


 ガリガリと鉛筆でスケッチブックに描いているのは、乙女ゲームにでも出てきそうなイケメン男性だ。


 ファンタジー世界の住人のように華やかな衣装を身につけ、腰には剣を装備している。

 左手を剣に添え、凛々しい表情を浮かべる構図だった。


 そんな男性の背景は、青空に西洋のお城。

 青空が広がる背景に、男性を際立たせるようにお城が描かれていた。


 もう完成しているように見える絵に、美鈴はまだ鉛筆を走らせる。

 周りの声など聞こえていないのか、一心不乱に描き続けていた。


 「もっと、もっと上手く……」


 必死に描き続けていると、隣から声をかけられ顔を上げた。

 そこにいたのは、友達である武田鈴だった。


 鈴は、美鈴が描いている絵を覗き込み、目を輝かせ、満面の笑みを浮かべた。


「わぁ! すごい、めっちゃかっこいいじゃん! 今日も絵を描いていたんだね!」


「うん」


 明るく声をかけてきた鈴は、美鈴の唯一の友達。


 少しだけ明るい茶色の髪をおさげにし、胸元のリボンは緩く結んでいる。

 スカートはギリギリひざ丈あたり、ぱっちり二重の瞳は、彼女のかわいらしさを滲み出していた。


「最近、ファンタジー衣装や背景を描き込むのに凝ってるんだよね」


「すっごい!! 私なんて、まだまだこんなに描き込めないよ~。というより、絶対に途中で飽きてしまう……」


 眉を下げながら言う鈴をチラッと見て、美鈴はまた視線を下げた。


 二人は、絵を描く者同士で、暇さえあれば絵の話をする仲だ。

 その関係性が始まったのは、高校一年生の時、誰にも声をかけられなかった美鈴に、鈴が声をかけたのが最初だった。


 手には美術部のパンフレットが握られていて、それが目に入って声をかけたと言っていた。


 中学から絵を描き始めていると話し、絵を描く友達が欲しかったんだと笑う鈴を見て美鈴も、戸惑いながらも鈴の素直な言葉に笑ってしまった。


 そこから美術部でも一緒に過ごし、同じクラスなため、昼食も共に過ごす用になった。


 絵をお互いに描き合い、見せ合い褒め合うことで、モチベーションを維持し続けていた。

 それだけでなく、お互い苦手な箇所が違うため、教え合うような関係性でもあった。


 美鈴は、手を描くのが苦手で、いつも服や角度で誤魔化す癖がある。

 鈴は、影が苦手で、立体感が出せないのを悩みとして抱えていた。


 だから、お互いがお互いに教える。

 上を目指し描き続けている美鈴からしたら、鈴との関係性は心地よかった。


 もちろん、絵の話だけではなく、プライベートの話や絵以外の趣味についても話していて楽しい。


 鈴が今、美鈴に声をかけたのには、絵を見せてもらうことはもちろん。それ以外にも理由があった。


「ところで、私今日、興味深い噂を聞いたんだけどさ!」


「興味深い噂?」


 興奮気味に言う鈴の言葉に、美鈴も気になり顔を上げた。


「子供達がよく遊んでいる森林公園って知ってる?」


「住宅街の端の方にある公園のこと?」


「そうそう。その森林公園ってさ、公衆トイレの奥まで行くと、林が奥まで続いているじゃん?」


「うん」


 美鈴がうなずき、鈴は怖い話でもするかのように間を開け、声を低くしゆっくりな口調へと切り替えた。


「その林を進むとね、古い小屋があるの。その小屋にたどり付けた人は、願いが一つ、叶うみたいだよ」


 ゆっくりと、怖そうに話す鈴だったが、内容は正直普通。

 噂話ならありそうな展開だったため、美鈴は期待していた分、がっかりした。


「願いが叶うなんて絶対嘘じゃん、展開がアリアリ過ぎる」


「確かに、私も聞いた時は同じように思ったけどさ。仮にこの噂が本当だったら、まじでやばくない!?」


 バンッと机を叩き、勢いのままに乗り出した。

 急に顔が近くなり、美鈴は困惑し、顔を背ける。


「ち、近いって……」


「あっ、ごめん」


 素直に椅子に座り直した鈴は、話を続けた。


「嘘だとは思うし、されど噂だと思うけどさぁ。この噂が本当だったら、やっぱり嬉しくない?」


「そうだけど……。なにか、叶えたい夢でもあるの?」

ここまで読んで下さりありがとうございます!

出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!


出来れば☆やブクマなどを頂けるとモチベにつながります。もし、少しでも面白いと思ってくださったらぜひ、御気軽にポチッとして頂けると嬉しいです!


よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ