第十一話 ニュース
自室に戻った美鈴は、深いため息を吐いた。
疲労感が遅い、ドアを背にそのまま座り込む。
瞬間、ポケットの中に入れていたスマホが震えた。
取り出し画面を見るとメッセージが届いていた。差出人名は、鈴。
今一番見たくない名前だったが、このまま無視するのも癪に障る。
ひとまず、内容だけでも確認しようと中を開いた。
『今日は急に色々誘ってごめんね! でも、すごく楽しかった。美鈴とは、休みの日に遊んだことがなかったから、今日は本当に楽しかったよ、ありがとう。また、絵のこと以外でも話せたり、遊べたら嬉しいな。それじゃ、また学校でね!』
こんな連絡が届いており、歯を食いしばった。
「自分勝手なことばかり言ってさ……。私は、孤独をまた実感して、全然楽しくなかったよ」
三人は、いつものように仲良く話していた。
楽しそうし、笑い声が飛び交っていた。
人との会話が元々苦手なのだから、いきなり四人で遊ぶなど無謀なこと。
結局、三人が話しているのを外から眺めて終わる結果となってしまった。
スマホの連絡画面を見て怒りが沸き、スマホをベッドに投げた。
何も見たくなくて、膝に顔を埋める。
「もう、嫌だ。なんで、こうもうまくいかないの。絵も、友人関係も……なにも、かも」
自分のやりたいように出来ない。
理想通りに動けない。
そんな自分に嫌気がさし、ふらふらと立ち上がる。
ベッドへと横になり、瞼を閉じた。
すぐに強い睡魔に襲われ、母親からの声にすら返事できず、眠りについてしまった。
※
次の日まで爆睡してしまった美鈴は、朝にシャワーを浴びて、気持ちをすっきりさせていた。
出かける用事はないため、中学校で使っていたジャージを着て自室に戻る。
ちょうどリビングの前に差し掛かった時、母親が美鈴を見つけた。
「美鈴」
「あっ、お母さん……」
昨日は、母親に嫌な態度を取った挙句、無視してしまったため気まずい。
だが、そんな美鈴の心境を気にせず、何事も無かったかのように話を続けた。
「今日は私、パートだからこれから行ってくるわね。朝ご飯はしっかり食べるのよ。昨日の夜ご飯のあまりも冷蔵庫にあるから、それを食べてもいいからね」
「う、うん。わかった」
母親は、そのまま急ぎ足で家を後にした。
一人になった美鈴は、ぐぅ〜となるお腹を摩り、真っすぐ冷蔵庫へと向かった。
冷蔵庫を開けると母親が言っていた通り、夜ご飯である焼きそばが、ラップにかけて置かれていた。
焼きそばを出すと、冷蔵庫の上に置かれている電子レンジに入れて温め始める。
待っている間に、リモコンでテレビをつけた。
画面には、ニュースが流れる。
興味がなく、すぐにチャンネルを変えようとするが、見覚えがある光景が映り手を止めた。
「…………ここって、森林公園?」
ニュースの画面に流れているのは、先日行った公園だった。
『……――先日、○○市にある森林公園で、一人の女性が倒れているところを発見されました。見たところ怪我はなく、事件に巻き込まれた可能性は薄いと考えられています。ですが、見つかった女性は言葉を話せず、表情も変わらない。まるで、感情を失ったかのように、微動だにしない。見つけた男性もそれには不思議に思い、名前すらわからず警察に通報した結果――』
森林公園での事件に、思わず唖然としてしまった。
事件の可能性は低いと言われているが、それでも不安だ。
これは明日、学校で注意されそうだ。
そう思いながらニュースを見ていると、なぜかわからないが頭に明人の顔が浮かんだ。
「森林公園って、あの噂の小屋に行くために通る場所だ。噂は、中途半端に流れていたみたいだし、まさか……」
そんなことを考えていると、少し遠くから音が聞こえて来た。
すぐに自室からだとわかり、向かう。
ドアを開けると、音の正体はスマホの着信音だった。
画面を確認せず通話に出ると、つんざくような高い声で名前を呼ばれ、思わず耳から離した。
「…………え、鈴?」
『ねぇ、美鈴! ニュース見た!? 森林公園が映っていたやつ!』
鈴が言っているのが、さっきのニュースだというのはすぐに分かった。
美鈴は、「あぁ」と、電子レンジのチンという音を聞きながら抜けた声で返す。
「ちょうどさっき見てたよ。女性のニュースでしょ」
『そうそう! あれって、あの噂が関係しているんじゃない?』
ワクワクしているような声色に、美鈴は苦笑いを浮かべた。
どんな返答をしようかなぁと考えながらリビングに戻る。
電子レンジから焼きそばを取り出し、テーブルに置いた。
その間も、鈴は興奮しながら噂の話を続ける。
『もしかして、誰かの願いを叶えて、あのニュースの出た女性は亡くなっちゃったのかな?』
「でも、筐鍵さんは、願いを叶えることは出来ないと言っていたじゃん。流石に偶然じゃない? それに、願いが叶って命を落とすのも結びつかないよ」
そう言うものの、美鈴も噂と今回のニュースが無関係とは思えなかった。
焼きそばを口に頬張りながら、噂と今回のニュースを頭の中で照らし合わせたが、やっぱり場所以外に共通点が無い。
モグモグと焼きそばを食べていると、咀嚼音が聞こえたらしく鈴は、さっきまでのテンションではなく、優しく問いかけた。
『ねぇ、美鈴。なに食べてるの?』
「っ、え? 急に?」
『なんか、食べているような音が聞こえてさ! なに食べているのかなぁって思って。ちなみに私は、コンビニで買ったソフトクリームを食べようと思ってるよ!』
いきなり話題が変わり、驚きつつも美鈴は肩の力を抜いた。
「焼きそばだよ。さっき起きたばかりだからお腹減っちゃって」
『え!? もうお昼だよ! 昨日私が連れまわしたから、疲れちゃったのかな。ごめんね』
「大丈夫だよ。今日はゆっくりするつもり」
『その方がいいと思う。それじゃ、私この後出かける用事があるから、もう切るね。いきなり電話してごめんね、また学校でねー!!』
「うん、またね」
そのまま、通話が切れる。
焼きそばを食べながらスマホの画面でさっきのニュースを検索した。
ニュースの詳細が書かれているサイトを見つけたため読んでみるが、今のところ原因はわかっておらず不明な点が多い。
明かされているのは、亡くなってしまった女性の名前や年齢だけ。
「…………亡くなってしまっ――あ、あれ?」
詳細を読み続けていると、最後の文に一つ、気になる点を見つけてしまい、箸をお皿に置いた。
「死んで、ないの?」
心臓や脈は正常に動いていると、サイトに書かれていた。
他にも、体に異常はない。
まるで、感情だけがなくなってしまったかのようにと書かれていた。
もっと詳しく書かれている記事を探したが、見つからない。
落胆しつつ、置いた箸を持ち、残りの焼きそばを食べ終えた。
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