運の悪さは収束するもの
お皿に山のように盛られた焼きそばをいただく。お肉も野菜もたくさん入っており、食べ応えのある焼きそばだ。それに加え、味もうまい。しっかり混ざった麵とソースに、青のりのアクセントが効いている。うまい。
私もお兄さんもすでに3皿は食べている。食べる速さはほぼ同じだ。しかし、ここで異変が起きる。
「ううっ。な、なんだ!どういうことだ!こんなに早くお腹いっぱいになるなんて・・・。」
それから、お兄さんの食べるスピードは目に見えて遅くなっていく。私はすでに5皿目を終えようというところだが、お兄さんはやっと4皿目を食べ終えるような状況だ。だがお兄さん。これは当然の結果ですよ?
「ごめんなさいお兄さん。私、勝算の無い勝負はしない主義なんです。勝てると思ったからこそ、この勝負を申し込ませていただきました。」
「勝算?いったいどこにそんなものが・・・っ!まさか!」
「気づいたようですね、お兄さん。そう、それがお兄さんの敗因。お兄さんは、すでにご飯を食べていた!」
「なっ!」
そうなのだ。私が重蔵さんと話し始めたときから、お兄さんはずっとご飯を食べていた。そんな状態で空腹の私と戦っても、勝てるわけがない。
「くっ、そうだ。僕は君が重三と話してからずっと、ご飯を食べ続けていた。・・・お肉を食べたいがあまり、そんな状態でも勝てると君を甘く見たことが私の敗因か・・・」
その時、どこからともなくけたたましくアラームが鳴った。お兄さんががっくりとうなだれる。特に終わりの合図を決めていたわけではないが、お兄さんに戦闘継続の意思は見られない。私の勝利だ。
「見事だ。百合嬢。だが、僕は負けず嫌いでね。また勝負を挑ませてもらおう。次は負けないさ。」
「はい。私のほうこそ、負けませんよ。」
そういい、お兄さんは去っていった。これでこの場に残っているのは、私とかなちゃんだけだ。
「百合ちゃん、おなか大丈夫?一応、胃薬は持ってきたけど、まだ食べられる?」
「わ、ありがとうかなちゃん。あー、その、一緒にご飯食べれてないのに申し訳ないんだけど、食べてる最中に用事あるの思い出してさ。ごめん、すぐ帰んないとダメなんだ。」
「あ、そうなんだ・・・。うん、わかった。残念だけど、用事があるなら仕方ないかな?」
そう言うかなちゃんは寂しそうだ。だが仕方ない。さすがにこれは無視できない。とはいえ。
「ほんとごめん。今度埋め合わせするからさ。そうだ、ゴールデンウィーク開けたら一緒に買い物行こうよ。クレープでもおごるから。」
「ほんと!?わかった!ぜったいだからね!」
おおう、めっちゃ食い気味に返事してくるじゃん。まぁ、元気が出たのならよかった。早くいかないと。
「そういう事だから、また学校でね!それじゃ!」
そういいながら、かなちゃん家を走り去る。急がなければ。さっき大食い大会でなったアラームは侵略者出現時の緊急呼び出し。それもおそらく、つい先日戦ったのと同じ大型。
「結局お肉食べれてない・・・。」
というか大型自体めったに出ないのに、なぜこうも立て続けに出るのか。確率的におかしくないか、私は侵略者の出る確率なんて知らないが。お偉いさんなら知ってるかな?
まぁこんなこと考えても仕方ない。私の場合、魔法少女をやらなければ生活が怪しいのだ。魔法少女として侵略者と戦えばお金がもらえる。お金のために私は魔法少女をやっている。というか走っていて思ったのだが、これ御呼ばれした対策支部まで遠すぎやしないか。仕方ない、最終手段だ。飛んでいこう。
「変身!」
変身アイテムである杖を取り出し、魔法少女に変身する。私の体を7色の光が包み込み、魔法少女の衣装を纏う。人によって違うけれど、私の場合はプリンセスラインのウェディングドレスに似ている。というかほぼそのままだ。そのまま空へ。ちなみになぜ最終手段なのかというと。
「なんでドレスの下なんもないの・・・??」
下からだと中身が全部見えるから。これに尽きる。