空腹が過ぎると馬鹿になる
「百合ちゃん、大丈夫?」
「成し遂げたぜ・・・っ!」
成し遂げた、私は成し遂げたぞっ!座り込んでいる私の下では、子供が2人膝を枕にして寝ている。
苦しい戦いだった。すでに活動限界の私に対して、子供2人はご飯を食べ終えて元気溌剌。鬼ごっこ開始1分で足の鈍った私であったが、そこは年上の意地もあり負けられない。結果、かなちゃんが帰ってくるまで逃げることに成功した。
かなちゃんが帰ってきてくれれば私が走る必要はなく。かなちゃんに2人と遊んでもらい、休んでいたのだが、何故か2人ともこっちにきて私の膝を枕にし始めた。なんでだ。
「百合ちゃん、ありがとう。和人も結衣も元気が過ぎて大変だったでしょ?」
「いーよ別に。私も楽しかったし、子供は元気なくらいがいいんだって。お姉ちゃんって呼ばれてたけど、2人と兄弟なの?」
「うん。2人とも、私が高校に行っちゃったから寂しかったみたいで、遊んでほしかったみたい。二人とも寝ちゃったし、ご飯食べよっか。お母さんたちが焼いてくれてたから、一緒に行こ?」
「いいけど、この2人どうする?寝ちゃってるけど。」
「近くの椅子に寝かせておけば大丈夫、すぐに起きるから。」
かなちゃんがそう言うので、近くにあった椅子に2人を寝かせて愛さんたちのところへ向かう。近づくにつれ、いい匂いがしてきた。
「あら2人とも、戻ってきたのね。百合ちゃん、2人と遊んでくれて助かるわ。お皿と箸は変菜絵が持ってきてくれたから、好きなように食べて頂戴。」
「ありがとうございます。いただきます。かなちゃん、私がとるよ。何食べる?」
「いいの?ありがとう。さっき走っておなかも減ってるし、カルビと手羽先と、あとお野菜を取ってほしいな。」
「りょーかい。焼きそばは?」
「後で食べるから大丈夫。百合ちゃんも食べてね?」
「うん。いっぱい食べるから心配しなくても大丈夫だよ。」
かなちゃん、安心してほしい。今の私には太鼓判がある。多分違うあろうが、社交辞令だったとしてもすでにおなかと背中がくっつきそうな私には関係ない。たくさん食べますとも、ええ。
さてさて、何から食べようか。とりあえずカルビ、あとタン、鳥串に焼きそば、あと申し訳程度にお野菜、最後に私の買ってきたししゃもをいただく。これがうまいのだ。ほんとに。
「フフ、女の子がそんなに食べられるのかい?」
いざ食べようと思ったところ、横やりを入れてきた人がいた。先ほど重三さんに兄と呼ばれていた人だ。
さて、今のセリフはどういう意図だろうか。単に心配したようにも聞こえるし、煽りのようにも聞こえる。が、そこで目を見て気づいた。その目は紛れもなく戦う人間の目。彼は私のお肉たちを狙っている。
まずい、このままでは言葉巧みに私の食材たちが狩られてしまう。可愛い可愛いお肉たちが、お兄さんによってあられもないことにされてしまう。眼鏡してて話上手そうだし。ええい、背に腹は代えられない!
「重三さんのお兄さん!あなたに勝負を申し込みます!」
「百合ちゃん??どうしたの??」
「ほう!この僕と殺ろうというのかい!いいだろう。その勝負、受けようじゃないか。」
「勝負の内容はどれだけ焼きそばを食べられるかで構いませんか?」
「問題ないよ。君に勝負の世界の厳しさを教えてあげよう。」
「おじさん??」
負けられない。私の可愛いお肉たちを守るため、私はお兄さんに勝って見せる。
「いざ!」
「尋常に!」
「「勝負!」」
「どういう事・・・?」