稼働は月に一度くらい
「智也君ちょっといい?」
「どうかした?」
華怜ちゃんに話しておくと約束した次の日の朝、学校に来たばかりで靴を履き替えている智也君に声をかける。連絡先を持ってたらあらかじめ話しておいたんだけど、残念ながら持っていないのだ。クラスのグループとかもないから探せなかったし。文化祭とかで全体連絡が必要な時もあるだろうし、だれか作らないものか。いや頼むか。
朝で人が少ないとはいえ、本当はこうやって二人になるのは避けたかった。しかし連絡先はないし華怜ちゃんには頑張ってほしいしで仕方なかったのだ。
「智也君、少し前にデパートに行ったでしょ?」
「え、なんで知ってるの。」
「それはすぐわかるから。で、その時絡まれてた女の子は助けなかった?」
「うん、困ってたみたいだから声をかけたんだけど・・・知り合い?」
「女の子のほうはね。それでその子が、お礼できなかったからお礼したいんだって。放課後にでも会えない?」
「今日は部活もないから大丈夫。」
よし、ミッションコンプリートだ。あとは華怜ちゃんが頑張るだろう。話は聞いてあげれるけど、恋愛相談には乗れないから頑張ってほしい。恋愛とかしたことないからね、私。寧ろ疎まれてたと思う。よく悪戯されてたから。
「それじゃあその子には連絡しておくから、放課後に教室にいてくれる?」
「了解。俺は部室に行くよ。またあとでね。」
智也君が去っていったので、私も教室に戻ろう。で、忘れないうちにクラスのグループも作っておいたほうがいい。とはいえ私はそういうの主導するのは苦手なので、得意な人に頼むべし。
ということで、教室に戻ってそういうのが得意な友人を探す。といっても、私の前の席なんだけどもちょうど席に着いたところみたいで、周りには誰もいない。ラッキーだね。普段は2、3人いるから、入っていきにくいんだ。
「愛梨、ちょっといい?」
「ん?どったのゆりちー。」
愛梨ちゃんを一文字で表すなら、間違いなく『陽』だろう。みんなと仲が良くて、だれにでも分け隔てなく話しかけて、勉強も運動もそこそこできる。そしてかわいい。間違いなくこのクラスの中心だ。私に最初話しかけてきたときなんて、「ゆりちーって呼んでいい?」だったからね。
で、そのまま気づいたら連絡先交換して、お互いの好きなアーティストの話をしていた。時間飛んだのかと思ったからね。そういうわけなので、グループを作るのにぴったりなのだ。
「うちのクラスってグループないでしょ?文化祭の時になって慌てて作るのもなんだか悲しいし、愛梨が主導して作ってくれない?」
「あー!なんか足りないと思たらそれだ!わかった!今日中に作るよ!」
「うん、ありがとう。」
「いーよ!代わりにゆりちー、お願いあるんだけど聞いてくれない?」
そういって、愛梨ちゃんは上目遣いでお願いしてくる。とはいっても、内容を聞かなければ判断ができない。
「私のお願い聞いてくれたから、よっぽど酷くなかったらいいよ?」
「やったー!わたしね、ゆりちーの話してたアーティストの曲聞いてみたの!そうしたらすごい心に残っちゃって!それで、そのアーティストが楽曲提供してる映画があるんだけど知ってる?」
「一応は。来月新しく上映される恋愛映画でしょ?」
それは私も知ってる。小説が元ネタの映画らしいんだけど、映画館で曲が効きたいので行こうと思っていた。小説の評判も悪くないし。
「それ!見に行きたいんだけど、一緒に行かない?」
「それなら大丈夫。それじゃあ、’約束ね。」
「ありがと!」
最近は外出の予定が多いね。土日になるだろうし、清掃員の仕事がなければいいんだけど。




