BBQでは肉だけでなく魚も焼け
「あっ先輩!こっちです!」
「こんにちわ環奈ちゃん。リボン、環奈ちゃんによく似合ってるわ。」
「えへへ、お気に入りなんです。ありがとうございます!」
今日も元気な環奈ちゃんは、白いワンピースにリボンでツインテールを結んでいてとてもかわいらしい。
「さ、行きましょうか。」
そう言い、環奈ちゃんと手を結ぶ。環奈ちゃんはまだ小学生だ。6年生ということで最低限しっかりしているとは思うが、迷子防止で一応手はつないでいく。
「環奈ちゃんは何が欲しいの?」
よくよく考えたら、買い物に行きたいとしか聞いていないので、何が欲しいのかわからない。とりあえず環奈ちゃんの行きたいところに行こうと考え、環奈ちゃんに聞く。
「その、ごめんなさい先輩。本当は欲しいものとかないんです。」
「え、そうなの?」
買い物に行きたいというのに、欲しいものがないとはこれ如何に。何か大切な相談でもしたいのだろうか。
「先輩ともっと仲良くなりたいと思って…。ごめんなさい。迷惑でしたか?」
「ぐはっ」
なんということだ。環奈ちゃんは天使だったらしい。仲良くなりたいとはなんと純粋な思いだろうか。環奈ちゃんは涙目で上目遣いをしている。魔法少女活動で汚れた私の心には沁みる。
「せっ、先輩!?どうかしたんですか!?」
「大丈夫だよ環奈ちゃん…。とりあえず、お洋服でも見に行こうか。」
「はい!」
なんとしてもこの子と仲良くなる。私は月に誓った。別に秘密の恋ではないが。
「それじゃあ環奈ちゃん、またね。」
「はい!今日はありがとうございました!」
そう挨拶をして、環奈ちゃんと別れる。いやぁそれにしても楽しかった。おそろいのアクセサリーも買っちゃったし、一緒にプリクラも撮った。目が大きすぎて面白い。環奈ちゃんも笑っていた。
と、そんな楽しい気持ちのまま帰れると思ったのだが。現実はそう上手くいかないらしい。寄ろうとしたコンビニの前では、明らかに嫌がっている同年代に見える女の子と、チャラついた男が。あ、男が女の子の腕をつかんだ。さすがに見過ごせない。
「ひっ、い、いやっ!離してください!」
「はいはい大丈夫だってなんもしないから。きっと楽しいよ~?」
そう言っている男だが、すでに終わりは近づいている。具体的には後ろから。すでに男は影の中。男も、後ろに気づいたらしい。急に影ができたらさすがに気づく。
「あん?なんだ…よ?」
「ウチの店の前で、何をしているのですか?」
「な、なんだよ。あんたには関係な…」
「ハイ?」
「い、いやなんでもないっす。失礼しました…。」
そういい。男は去っていった。さすが店長。見た目が超怖い。店長が私に親指を立てて店に戻っていくので、私は女の子に声をかける。
「危ないと思ったので助けに入ったんですけど…怪我とかはないですか?」
「はっ、はい!ありがとうございます。おかげで助かりました。」
「それならよかったです。…あの、どうかしましたか?」
気づいてしまったのだが、この人めっちゃ私のこと見てる。具体的には顔。なになに、怖いんだけど。
「その、間違ってたら申し訳ないんですけど、○○高校1年の飛鳥 百合ちゃんだよね?」
「え゛っ」
え、何怖い。なんで私のこと知ってるの。ストーカー?どうしよう、逃げたほうがいい?いや高校と名前ばれてるなら意味ない?
「わ、私!私だよ!佐藤 変菜絵!隣の席の!」
「え、かなちゃん?ほんとに?」
ちょっと待ってほしい。私の知るかなちゃんは髪が長くて目も隠れてる貞子みたいな子だったはずだが。変わりすぎでは。私の目の前にいる今のかなちゃんは、外ハネボブと落ち着いた雰囲気もあり大人の女性のようだった。
「ど、どう、信じてくれた?」
「いや、信じるけどさ…。すごい変わったね。きれいになった。なんかあったの?」
「信じてくれたんだ。よかった。うん…ちょっと、好きな人ができたから、頑張ろうと思って。」
「あ、そうなんだ。かなちゃんめっちゃ可愛いから、きっと大丈夫だよ。頑張って。」
「うん。百合ちゃんが応援してくれると頑張ろうって思えるよ。」
そうかそうか。かなちゃんがこんな美人さんになったのは恋をしたからか。それはぜひ頑張ってほしい。かなちゃん可愛いし、性格も優しいから問題ないと思うけど。それにしても恋ねぇ。私はできるんだろうか。魔法少女ってそもそも命の危険がある仕事だからね。『凪姫』のおかげで死亡率はかなり低くなったけど、それでも0じゃない。
「あの、百合ちゃんこの後って暇?」
「暇だけど、どうかした?」
「私、実家がこの辺りなの。よかったら家で晩御飯食べていかない?今日はお庭でBBQするの。」
「え、いいの?いくいく。楽しみ。あ、私も何か持って行ったほういいかな?」
「大丈夫だよ。急に誘ったのは私だもん。こっち。一緒に行こ?」
「うん。ありがと。」
BBQかぁ。いつぶりだろう。楽しみ!