振り返るとおかしさに気づく
「酒井支部長、『飛翔』です。入りますよ。」
空港に到着してから歩いて数十分、私の所属している対策支部に着いた。先日まで出向していた場所よりは都会なので、支部自体の規模も相当に大きい。支部では魔法を使った訓練を行うから、そもそも大きく作られているというのもあるが。
私は戦闘向きの魔法少女じゃないので、ここで訓練することはあんまりない。ここで訓練する人は、雷を落とせたり炎を出せたり、そういう戦闘向けの魔法を持ってる人がほとんどだ。レーザーを撃てる人もいる。
支部長室に入ると、酒井支部長は窓際にいた。いつも通りに紫色の着物を着て、煙管をぷかぷか吹かせている。私はこの人の吸う煙管の匂いが好きだ。和室のようなにおいがして、なんだか落ち着く。
「おお、来たか『飛翔』。それ、そこに座っとれ。今お茶を出してやるでな。」
「ありがとうございます。」
ソファーに座って、酒井支部長の話を待つ。そうして始まった話は、やはり『凪姫』に関する話だった。
「そなたも疲れておるだろうから本題だけ話すが、そなた『清掃員』になる気はないか?」
「『清掃員』、ですか?その、それはいったいどういう・・・。」
『清掃員』とは初めて聞いた。いや、言葉の意味は分かる。しかし、それを魔法少女の私がやる意味が分からない。そもそも魔法少女をやっていて何かをきれいにするなんて作業はしない。
「あっ。」
待って、ある。彼女が戦った後、私は侵略者の内容物を片付けたが、あれは清掃といえるのではないか。つまり。
「おお気づいたか。そうだの。そなたには『凪姫』が倒した侵略者の片づけを頼みたいのだ。」
「はぁ・・・。」
正直、勘弁してほしいというのが本音だ。血の匂いはきついし、侵略者と戦う以上に時間もかかる。そもそもなぜ私なのだ。他の支部では人海戦術で片づけをできていたし、私はやらなくて委もいいのでは?
「なんで私なんですか?前に聞いたことあるんですけど、他の支部では血を魔法で光らせて人海戦術片付けてるって・・・。」
「ううむ、少し前までならそれでもよかったんだがのう。そなたは先日、二日連続で大型と遭遇したな?おかしいと思わんかったか?同じ地区で二日連続で大型が出たのは初めてなのだ。」
「それは思いました。」
確かにおかしいと思った。大型自体出ることはまれで小型中型がほとんどなのに、二日連続で出るなんて尋常じゃない。
「ゴールデンウィークに入ったあたりから、侵略者の出現率が増加してのう。いたるところでポコポコ生えて来とる。それに連動して『凪姫』の出現率も増加。正直片付けが追い付い取らんのだ。放置してどんな被害が出るかもわからんしのう。そこでそなただ。」
「私ですか?」
「うむ。人海戦術で片付けるよりも、そなた一人が魔法で片付けるほうが早いのだ。先日地上で片付けたときは、1時間もかかってないだろう?その分人員が空けば、できることも増えるしの。」
なるほど、そういう事か。イレギュラーが起こった時ように、動ける人員を確保しておきたいのだ。そして人員を空けるために減らせそうなところが、ちょうど私が有用性を示した侵略者の片づけだったのだろう。しかし、
「理由は理解したんですけど、普段の魔法少女活動ってどうなるんですか?ほかの人を支援したり、偵察したりとか。」
「そちらは頻度を減らすことにしたわ。小型中型で呼び出しがかかることはないと思ってくれて構わん。『清掃員』としての活動は、まだ詳しく決まっとらんが、他の支部に出向してもらうことも増える。その分ボーナスも増えるが、やってくれるかや?」
「問題ないです。お受けしますよ。」
「助かるのう。」
血の匂いはきついが、お金がもらえて戦わなくて済むようになるなら構わないだろう。最近は物価も上があがってきて大変だから、なるべく稼いでおきたいのだ。




