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半魔転生―異世界は思いの外厳しく―  作者: 狐山 犬太
第六章 ―魔石鉱山―編
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第八十話 「頼れる?同行者」

 ギルド(マスター)であるルギオンに付いて行き、談話室らしい部屋へと通される。

 机を挟んで向かい合わせのソファへと掛けると、少ししてギルドのスタッフが紅茶を持って現れた。


「げっ……紅茶苦手なのよね……」

「出されて文句は良くないぞ」

「そうなのです」


 リメリアは紅茶が苦手らしい。

 ゼールに憧れてコーヒーを飲んできた影響だろうか?

 かく言う俺も、あまり紅茶は得意では無い。

 口をつけるのも程々に、ルギオンが本題へと入る。


「まず、君達に今回任せたい仕事は魔石鉱山の調査だ」

「魔石鉱山、ですか?」

「うむ。様々な用途、原動力や魔術の推進剤としての役割も果たす魔石が豊富に取れる鉱山だ。

 場所は関所を渡った先の魔土になる。とは言っても、関所からは一週間と離れていない場所に有るからそう長旅になる訳では無い。ちなみに、魔土へ行ったことは?」

「無いです」

「私は住んでましたけど、里から出たことは無かったのであんまり分かんないです……」

「二回だけ有るわ。まぁ、私も手前までよ」


 当然だが、俺はまだ魔土へと行ったことは無い。

 イメージとしてはいわゆる魔界なんかを想像しているのだが、実際のところはどうなのだろうか?

 荒廃し、強い魔獣達が闊歩し、人は住みにくい、そんな過酷な環境をついイメージしてしまうが……


「なるほど、そうかそうか……ではリメリア君、魔土へと行った所感を教えてくれないか?」

「そうね、凡人土(はんじんど)と大差無いってのが素直な感想かしら。あくまでも私が行った範囲まではね」

「その通りだ。魔土と言っても、あくまでヴァダル大陸を分割した結果の呼び名だ。

 環境事態に大きな変化は無い。凡人土と比べて多少魔素濃度が濃いがな。

 だが、それも凡人土から遠ざかれば遠ざかる程、つまりは西へ行くほど環境はより過酷なものとなる。

 理由は知らん。環境整備する者がおらんとか、魔族同士の抗争により土地が荒れたとか、魔獣のせいだとか色々言われているがな」


 後半の説明は投げやり気味だが、それは今回行く範囲からは外れている為でもあるのだろう。

 要するに、そこまで差は無いということだ。


「今回はそんな魔土へ行ってもらう訳だが、場所は先程も言った通り魔石鉱山。

 目的は鉱山で働く鍛工族(ドワーフ)達の安否確認だ」

「安否確認って……どういうことですか?」

「約一ヶ月ほど前、ちょうど平泰祭の始まった頃だったか。鉱山で働く者達との連絡が途絶えた。

 厳密に言うと、各地へ送られていた魔石の供給が突然止まってしまった。既に二度、冒険者を調査に送り出しているがいずれも帰還していない」

「随分ときな臭いわね……送った連中はせいぜいBランクでしょう? もっと高位の奴らを送れば良いじゃない」

「先の龍災もあり、Aランク冒険者の多くは王都に残っての警戒及び北方地域への警備へと出張っている。

 肝心のSランク達は勝手な奴らばかりでな、ギルドからの指示は聞きやしやがらん。そもそも居所が掴めん者ばかりだ」


 では何故Sランクなんて括りを、なんてのは野暮だろうか。

 いや、そんな事は今はどうでもいい。

 問題はこの依頼、想像以上に危険かもしれない。

 鉱山で働く者達に続き、調査に向かった者達とも連絡が取れないだと?

 魔獣の類、あるいは人為的な策謀が?

 何にせよもっと慎重に考えるべきだ。


「話は分かりました。ですが、一度保留にさせて下さい。あまりに危険過ぎる。二人をそんな危ない目に合わせることは出来ない」

「ほう、それが君の意見か……二人はどうだ?」

「冒険者にとって危険はつきもの。何を今更?」

「私も大丈夫です。お兄ちゃん達が一緒なんですから!」

「だ、そうだ。仲間想いは結構だが、過保護も行き過ぎるとただのお節介だぞ。それにだ――」


 おいおい本気かよ……!

 俺の心配をよそに強気な二人をみて笑うルギオン。

 そして彼が全て口にするより前に、ドアがノックされこちらの返事を待たずに人が入ってくる。


「ごめんなさいねぇ、遅くなっちゃったわ。あら、この子達が? ンフフ、とぉ〜〜っても可愛いじゃないのぉ♡」


 入ってきたのは、美しい金髪を靡かせた妖艶な言葉遣いの『偉丈夫』。

 そう、オネエのオッサンだ。


「来たか。座れ、オーレン。

 君達に任せるとは言ったが、同行者が一人付く。

 それが彼――」

「カ・ノ・ジョ!」

「……彼女だ。オーレンバック・ステル、ギルドの最高戦力の一人であるSランク冒険者だ」

「はじめまして、坊や達。オーレンバック・ステルよん。オー姉って呼んでちょうだい♡」


 なにがオー姉だ、ガチのオネエじゃないか。

 異世界に来てこういった人種は初めてだ。

 Sランクとか、強いとかうんぬんはさて置き、とにかくインパクトが強い……!

 無駄にサラサラな金髪がうるさいし、ガタイは文字通りの偉丈夫なのが余計に違和感を際立たせている。


「ん〜〜、三人共すっごく魅力的ね! いいわいいわぁ! アタシワクワクしちゃう!」

「オーレン」

「んもぅ! わかってるわよ! 今回の鉱山調査にはアタシも同行するわ。貴方達だけで『済む』か分からないからっていうのと、貴方達の実力を見定めるためよ」

「私達じゃ力不足だって言いたい訳?」

「リメリアちゃんね。良いわ、そういう反骨心はグッドよん! 真面目な話、連絡が途絶えた者達の安否は既に絶望的よ。

 要するに、人死にが出ている可能性がある。これ以上無駄な犠牲を出さない為にも、アタシは保険ってわけ。わかった?」

「人、が……」

「そうよ。ライルちゃんにルコンちゃん、それでも行く? 辞めるなら今のうちよ」


 先程までの言動が嘘の様に、真っ直ぐに真摯な眼差しを向けてくるオーレンバック。

 俺は――


「私は行きます! もう誰も死なせたりなんかしません!」

「当然私も行くわよ。ライル、アンタはどうするの?」

「ハァ……行く、行くさ。俺だって、二人が傷つくのを放っておける訳ないだろ」

「ンフ、決まりね! それじゃあ明日の午後、関所前に集合よ。各自準備を整えていらっしゃいな!」


 腹をくくれ、ライル。

 さあ、帰って支度だ。

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