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半魔転生―異世界は思いの外厳しく―  作者: 狐山 犬太
第五章 ―アトラ王都魔術学校―編
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第六十八話 「魔王の気配」

 三日目は程よい忙しさで、常に客は来るが行列とはいかない程度の集客だった。

 訪れる者も生徒の顔が増え、中には二日目に来てくれた者までいた。

 これは良い兆候だ。

 着実に、俺達のイメージアップは進んでいる。


 昼時のピークを過ぎて、俺とレオドロンとポーフスの三人で店は回すことにして、ルコンとネリセは祭りを回らせてあげることにした。

 せっかくの祭りなのだ、ルコンには兄としても楽しんで欲しい。

 二人には俺のポケットマネーから三金貨(三千円相当)ずつあげた。

 ネリセはとても受け取れないと拒んでいたが、無理やり握り込ませ、待ち切れないとその場で足踏みするルコンにとっとと連れて行かせた。


「行ってきます! お土産、買ってきますから〜!」

「す、すみません! いってきますぅー!」

「いってらっしゃい。気をつけて」

「フン、うるさいのがいなくなって静かになったな」


 レオの小言は聞き流してっと。


「ごめんね、ポーフス君まで留守番させちゃって」

「ううん。僕、あんまり友達いないから。祭りも、毎年家族と一緒に回ってたんだ」

「そっか……ポーフス君って鳥人族(ハーピー)の半魔なんだよね? お母さんが鳥人族だっけ?」

「うん。母さんは飛べるけど、僕はほら、こんな中途半端な羽毛しか生えてないから」


 自虐気味に笑ってみせるポーフス。

 半魔特有の、それも負に偏ってしまった事例。

 魔族の特徴は薄く、利点を得られず。

 場合によっては魔力量や魔力コントロール等にもハンデを背負う事も有る。

 そう考えると俺は本当に幸運だ。

 闘魔族(とうまぞく)としての特徴の角、万全に引き継いだとは言えないまでも十分な魔力量と身体能力。

 出自や生い立ち、これ迄の過程には差が有れど、半魔に生まれる事自体に何かしらのハンデが伴ってしまうのがこの世界だ。

 それでも俺は、生まれだけで言えば幸運な方なのだろう。


「何を笑っている」

「へ?」


 急にレオドロンがポーフスに食ってかかる。

 何だ急に、何か気に触ったのか?

 念の為、いつでも間に入れる様に身構える。


「貴様が両親から受け継いだ体に何かしらの不利が有れど、それを乗り越えて生きるのが『生』というものだ。

 有利は活かし、不利は超える。

 貴様はたった先日、その不利を超えたのだろう?

 ならばこれからは胸を張れ」

「レオ、ドロンさん……」


 あれ、なんか良いこと言った?

 てかこいつ、ちょっと前までは俺達半魔の事を『薄汚い半血』って蔑んでたじゃんか!

 人は変わるってか? 変わりすぎだろ!


「そう、ですね……そうです、よね! 僕は、胸を張って生きます! レオドロンさんの言った通りです!

 半魔だからって下に見られる時代は終わったんだ……! これからは、堂々と――」

「皆さん、お疲れ様です」

「うおぉ!? レイサさん!?」

「ウフフ、やっと落ち着いて時間が取れましたので、こっそり来ちゃいました」

「お嬢様はお疲れでございますが、どうしてもと仰られまして。ご迷惑で無ければ、皆様の輪に入れて差し上げて下さいませ」


 突如、レイノーサの襲来。

 丁寧に腰を曲げるセバスチャン。

 迷惑などあろうものか、そもそもこうして出店出来たのも全てレイノーサのお陰である。


「迷惑だなんて、そんな! むしろ嬉しいですよ、こっちには来れないんじゃないかと思ってましたから」

「全く、とんだお転婆姫だ……」

「良かった。私、本当に楽しみにしてたんですよ?

 ポーフスさんも手伝ってくれていたのですね。ありがとうございます」

「いえいえ! お礼を言うのは僕の方で!」


 ちょっと真面目な雰囲気になってしんみりしつつあったテントに花が咲いた。

 せっかくの祭りなのだ、これくらい明るいのが丁度良い。

 ルコン達が居ないことに気づいたレイノーサに、今は外出中だと教える。


「それはそうと、いつまでここにいれるんです?」

「今日は夕方まで滞在出来ますよ。さぁ、私も早速おにぎりを握っちゃいますよ! それとも、唐揚げから揚げましょうか!」


 王女お手製おにぎりと唐揚げ……爆売れの予感だが、流石に商品名として押し出すには危険な気がする。

 ていうか出来る訳が無い。

 作ってもらうのはともかくとして、皆のと一緒に分からないよう混ぜるしかないだろう。


「あ、そういえば」


 おにぎりをせっせと握りながら、思い出したかのようにレイノーサが呟く。


「レオドロンさんの御父上、レオガルド王が今日こちらにお見えになるとお聞きしましたよ」

「なんだとぉ!? なぜそれを早く言わん!?」


 取り乱した拍子に、危うく机をひっくり返しそうになる。

 そこまで驚くか? 

 要は、寮生活の息子の学校に離れた親が会いに来るものだろう。

 だがそれにしては、レオドロンの驚き方は異常に見える。


「ねぇポーフス君。レオガルド王って知ってる?」

「僕も直接見たことは無いけど……凡人土と友好関係を築いている魔国の一つ、『獣和国(レオラント)』を治める魔王だよ」


 魔土を真の意味で統治する国は無いものの、それぞれの領土・領域を国として統治する者達がいる。

 それが、魔王。

 魔王であるための条件等は明確に定まっておらず、自称する者、他者からの支持を受けて上に立つ者と様々である。

 ただ一つ言えることは、魔王とは一様に力有る者を指す言葉である。

 冒険者ランクで表すならば総じてSランク以上と、その称号に恥じぬ実力者達だ。

 そして、広大かつ魔王が乱立する魔土は、常にこうした者達による小競り合いが頻発している、らしい。


 そんな魔王の一人であり、『獣和国(レオラント)』を治めるのがレオドロンの父、レオガルド王とのことだ。

 レオ、レオ、レオ……レオばっかりだな……自己主張強くない?

 まあ、俺様俺様してるレオドロンを見れば親がどうなのかも薄っすらと想像出来てしまう。


「――はッ!? この匂い……来た!!」


 レオドロンが身構える、というか身なりを正す。

 それに呼応する様に、正門付近がパルヴァスの時とはまた違ったざわめきを見せる。

 しかし、あのレオドロンがここまで襟を正す程の父親とは……

 魔王との初対面、いったいどの様な人物なのか――?




 

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