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半魔転生―異世界は思いの外厳しく―  作者: 狐山 犬太
第五章 ―アトラ王都魔術学校―編
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第五十九話 「友達いなくない?」

 なんだかんだと二回の決闘をこなし、俺達の学校生活は二ヶ月目に突入。

 入学したのが十月の頭だったので、今は十一月。

 日本の頃であれば中々無い編入次期に、俺自身も複雑な心境だ。

 もう年末が近い……

 しかし、この世界にはクリスマスも無いし年越しを盛大に祝おうという風習も無い。

 なので、街や学校内が浮ついた空気に包まれたり恋人達がイチャイチャウフフするなんて甘い空気も無い。


「平和だなぁ……」


 ルコンは授業中、俺は空きコマなためこうして一人でゆっくりとベンチで日向ぼっこ。

 充実している、かどうかは分からない。

 こうして特に目的も無く、平和な日々を過ごせている今は、この世界にきてナーロ村での日々以来だ。

『ファンタジー世界を楽しむ』が俺の目標というか、この世界での行動指針だった。

 それが成行きとはいえ、龍を討つための復讐劇へと変わり、両親から贈られた学校生活という新たなステージを目指す旅へと至った。

 そして今、やっとの思いで訪れた王都魔術学校での日々。

 俺は、楽しめているか?

 もちろん、楽しい。楽しいが、何か足りない……

 それは――


「レオ、聞いてくれ。友達がいないんだ」

「俺様は貴様の友だぞ」

「いやほら、レオはなんか違うじゃん」

「何がだ……」


 実に不服そうに、レオドロンが答える。

 そうだ、そうなのだ。

 俺には学校生活をエンジョイするために必須とも言える、友達がいない!

 やっぱり学生といえば、一緒にバカやったり買い食いしたりイベント事に全力で取り組んだり、色々あるじゃん。

 レオはなんていうか、好敵手(ライバル)みたいな?

 だってほら、こいつと遊んだこと無いし。


「友など、そこいらの者に話しかければ良かろうに」

「出来たらやってらい! 半分はおまえのせいだからなっ!!」


 思わず机を叩く。

 入学試験での噂と、極め付けはレオとの決闘。

 入学早々にして学内でも一目置かれている魔王の息子との決闘に危なげなく勝利し、こうしてタメ口で接している俺を、周囲の生徒達は畏怖と畏敬を持って遠ざけてしまっている。

 もちろん、中には例外もいるのだがそれはそれ。

 未だ親しい友達と呼べるような存在には巡り会えていない。


「レイノーサがいるだろう。あやつではダメなのか?」

「いや、レイサさんはほら……王女じゃん? いくら向こうが許してくれても、流石に壁はあるよねーって言うか……」

「俺様も魔王の息子である王子なのだが?」

「いやほら、レオはなんか違うじゃん?」


 あれ? デジャヴ? まあいいや。

 ともあれ、どうにかして現状を打破しないと充実した学校生活どころか、『ファンタジー世界を楽しむ』という目標が達成出来ない。

 何か、何か無いか?


「このテントはどこだっけ?」

「魔術棟の方だよ。そっちは第二試験場前へ頼むよ」

「はーい」


 目の前を大勢の生徒が、テントやら何かの資材やらを運んで行く。

 人族に魔族、種族の垣根を越えて協力しあっているようだ。

 紫の線が見えないため、半魔はいないようだが。


「なんだあれ? 何かイベントでもあるのか?」

「なんだと……? 貴様、半魔の身であって知らんのか? あれは毎年十二月の中旬から一週間行われる祭りの準備だ」

「祭り? 一週間近くもあるなんて、大仰なんだな」

「呆れたな……『人魔平泰祭(じんまへいたいさい)』。人魔大戦の終結と、人魔の末永い和平を願って行われる祭りだ」


 あ、待てよ。確か、ロディアスにいた頃に何度か耳にしたことがあったな。


人魔平泰祭(じんまへいたいさい)』、一年の締めくくりにと行われる世界的行事。

 アトラ王国王都であるアトランティアと、その内部に存在する王都魔術学校で行われる。

 アト学の建設後、毎年行われているこの祭りには凡人土と魔土を問わず多くの人が訪れる。

 もちろん、遠く離れたロデナス王国からもだ。

 確か、去年はダルド王とパーザが行ったらしいな。

 ダルド王は半魔共存の理念を世界に広める為、この三年間とにかく国交に力を入れていた。

 アトラの使者や通信魔術での対応、直接出向いての対談と大忙しだったらしい。


「あーー、思い出した思い出した。そんな事もあるらしいな。それで、何で学校内で? 王都の方でやれば良いのに」

「王都でも少なからず出店やパレードは行われるが、メインは学内だ。そもそも、この王都魔術学校は終戦から五年をかけて作られたもの。

 いわば、人魔間での平和の象徴。これほどうってつけの場所もあるまい」

「なるほどねぇ……」


 祭り、か。

 祭りは嫌いではない。むしろ好きだ。

 小さい頃は母や友達と一緒に、近所の縁日に行ったものだ。

 決められたお小遣いで、キラキラと輝く屋台の食べ物や謎の玩具を買ってははしゃぎ、友達と走り回って花火の音と光に心を奪われた。

 そうだ、高校生の頃は学園祭でクラスの皆と屋台を出したな。

 簡単に出来る唐揚げとおにぎりを売って、休憩時間で他所のクラスの出店を回って、終わった後は皆で打ち上げをして……


「はっ! そうだよ!!」

「ぬおっ!? 急になんだ?」

「俺達も屋台を出そう!」

「なん、だと?」


 これだ! これしかない!

 祭りで屋台を出し、人を集めて俺やレオドロンの認知を改めて貰う。

 そしてあわよくば友人を作り、その後の学校生活も充実した日々に……

 天才だ、我ながら天才としか言いようがない。


「そうと決まればルコンにも話して手伝ってもらおう!」

「待て。待て待て! 屋台を出すなど……まずは何をするかも決めてないだろう」

「おにぎりと唐揚げだよ。んなもん決まってんだろ」

「おに、ぎり? から、あげ……?」


 あぁそうか、この世界の住人はどちらにも馴染みが無かったな。

 米は存在するが、そもそもこの世界ではマイナー食だ。

 せいぜいが器に盛った白米として食べるか、炒飯の様に炒めたり何かと混ぜるか。

 携帯食としてのおにぎりは普及していない。

 そもそも、パンが一般的に普及している以上、冒険者や旅人の携帯食として保存の効きにくい米は持ち歩かれ無いのも無理は無い。

 そして唐揚げ。

 油はあるが用途は専ら(もっぱ)燃料か炒め物くらいだ。

 揚げ物もあるにはあるが、お世辞にも美味しいとは言い難い。下味の問題か? 


 だからこそ、この二つでいく。

 どちらもニッチであるが、奇をてらっていくことで他所との差別化を図る。

 あくまでも祭りの出し物である以上、食べるのは祭りの最中。

 ならば保存期間にも注意する必要は無いし、何より味も良い(はずだ)。

 問題は食材の搬入路と設営場所、従業員の確保……


「ふっ……アッハハハハ! 忙しくなるぞ、レオっ!」

「俺様もやるとは言っておらんだろ!」






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