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【連載再開】眠れる君に出会うまで  作者: 里凪


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「罠……ですか?」


 そう言いながら、私はロビンを見つめた。

 この穏やかに眠る美しい鳥に、“罠”という言葉はそぐわない。私が感じていることを汲み取るように、レンは落ち着いた声で答えた。


「ブルーバードが何かを仕掛けてくるのではないよ。全ては私たち側の問題だ」


 楽しい話題ではないが、好奇心はそそられる。なにより、この世界の事情を知るにつれ、より自分が此処の一員になっていける気がした。

 今の私はまだ、異邦人の気分だ。

 知りたい。知りたい。この世界のあらゆる事情を……。


 そんな私の思いに応えるように、レンが話し始めた。


「ブルーバードに認められると、大抵の人は喜びや誇らしさを感じる。それ自体は純粋で害のないものだ。何も問題はない。だが、本人の意識の変化によって、全く別のものに変わってしまう場合があるんだよ」

「……それが罠に陥ったっていうことですか?」

「そうだ。周囲から憧れや羨望の眼差しを受けるうちに、『ブルーバードに認められた自分は、他の人よりも優れている』と思うようになってしまうんだ。周りから特別視されて、自分でも『自分は他の人よりも特別な存在だ』と思い始める。これまで身分によって差別せず、誰かを見下すこともしなかった人が、ブルーバードに認められたことで傲慢になってしまう。そうした残念なケースが起きている。地位や財産に対しては冷静に対応出来たのに、神聖な鳥とされるブルーバードには弱かったのだ」

「でも、そういったケースは稀ですよね? ブルーバードに認められた人ですよ? そんな簡単に傲慢になるなんて思えません」

「確かに本来ならば珍しい。だが、このケースを後押しする存在がいるのだよ。それは『ブルーバードを熱烈に欲しがる者たち』だ。彼らはブルーバードを欲しがるが、自分にはブルーバードに認められるだけのものがないともわかっている。そんな彼らは、いったいどうすると思う?」

「う〜ん……そうですね……。ブルーバードに認められた人に擦り寄って、何らかの利益を得ようとする……とか。お近づきになることで、自分も同じような人間だと周りにアピールしようとするとか……?」


 一瞬アピールという単語が通じるか心配になったが、レンの様子から何も問題ないことがわかった。

 彼はゆっくりと頷いて言った。


「『擦り寄った』という部分は正解だ。彼らはブルーバードに認められた人物に近づき、徹底的にもてはやす。だが、それは利益を得る為ではない。相手の心に『ブルーバードに認められた貴方は格が違う』『貴方は他の人よりも優れている』と巧みに刷り込む為だ。彼らの賛辞は本心からではなく、相手の中に傲慢さを生み出す為の意図的な言葉なんだよ」

「でも、そんなことをして何の得があるんですか? それで自分がブルーバードを得られるわけでもないのに……」

「傲慢さは、その人自身の在り方を根本から覆してしまう。思いやりや善良な心を持っていたからこそブルーバードに認められたというのに、傲慢さによってその『認められたもの』を失ってしまうことになるんだ。そうなってしまったら、どうなるか? ブルーバードは、もうその人のところには留まれない」

「あっ!」

「ブルーバードを欲しても得られない者たち。彼らは何を考えたか……『自分が得られないのなら、他の者たちにも持たせない』と考えたのだよ。そして、そう仕向けるのは簡単だ。ブルーバードに認められた人物の心に、優越感や傲慢さを植え付けてやればいい。そうすれば、それらを嫌うブルーバードは自ら離れて行かざるを得ない」

「い……陰湿っ……。まぁ……ひけらかすためにブルーバードを欲しがる人なら、そんなものですかね……」

「ブルーバードに去られてようやく、当人は自分の心が変わってしまったことに気がつく。それまでは誰かが忠告しても、聞いてくれないことがほとんどだからね。本人に改める可能性があるうちは、ブルーバードだって去りはしない。しかし、完全に傲慢になってしまい、それを改める気も一切ないと悟った時、ブルーバードは去っていく。……その後、どうするのかは本人次第だ。自分と向き合い傲慢さを捨て去るか、それともブルーバードが去ったことを誰かのせいにして堕ちていくか……。純粋な敬意から賛辞を送ってくれた人を責めるのはお門違いだし、悪意を持って賛辞を向けてきた人を責めることも意味がない。どれだけ持ち上げられても『勘違いしない』と自分を律する責任は本人にあるのだからね。賛辞の言葉や憧れの眼差しが、純粋な敬意からか、それとも何か狙いがあってのものか、それを見抜くのも本人にかかっている」


 俯いて考え込んでいると、レンが近づいてきて私の腕に優しく触れた。顔を上げると、彼の穏やかな瞳と目が合う。

 レンは口調を和らげて言った。


「厳しいと思えたかもしれないが、罠に陥らないようにするのは実は簡単なんだよ。ある3つの点を意識すれば良い。私もジェームズも日頃から心がけていて、他の人たちにも助けとなるように伝え続けていることだ。ブルーバードの件に限らず、地位や財産等、あらゆることに応用出来るから非常に便利なものなんだよ。『傲慢の罠』を避けられるかどうかは、この3つの点をどれほど本気で意識出来るかにかかっている」

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