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比較的最近更新した短編のまとめ場所

戦闘狂ゲーマーは乙女ゲームの過酷シナリオを大歓迎しています

作者: リィズ・ブランディシュカ
掲載日:2023/11/21



 盗血王国ブラド・レイン 辺境の平原 「ミルレッド・レース」


「うっ、頭が痛い! 知らない記憶が流れ込んでくる!」


 私ーーミルレッド・レースは、住んでいる国の辺境で異変に陥った。


 人類の敵である狂暴な生物ーー魔物と魔族をぶっ倒しているときに前世の記憶を思い出したのだ。


 どうやら私は転生者だったらしい。


 前世でなかなかいないハードな乙女ゲームプレイヤーだった私は、色々あって死亡した。


 割と運動神経もよくて怪力気味だったから、命の危機に陥っても何とか出来ると思ったんだけど、まさか空からビルが丸ごと崩れてくるとは思わなかったわ。


 あれはどうしようもできない。


 そういうわけで死亡した私は、なんやかんやあって天界みたいな場所で、神様と会い、適当に会話しているうちに、この世界に転生したらしい。


(ちなみに転生処理は雑で、どこに転生させるかは詳しく教えてもらえなかった。退屈していた神様が、お遊びでやったような感じだったから)


 それで、それで転生した先が、残酷な乙女ゲームの世界ってどういうことよって思ったわ。神様の常識を疑うわね。


 一般人だったら、頭抱えて白目むいてたでしょうね。


 だってその乙女ゲームーー


「世界の終わりに真実の恋を」、通称セカ恋は、とにかく死人が出まくるシナリオだもの。


 数ある乙女ゲームの中では、残酷すぎる乙女ゲームとして、有名だった。


 そんな世界に放り込まれたら、普通は引くし、嘆くし、悲しむ。そして、不幸だと結論付けるだろう。


 なにもそんなところに放り込まなくたって、いいじゃない。

 と、天を呪うのが一般的な反応だ。


 しかし、雑に放り込まれたことに対しては思う事があるものの、私にとってはそれほどひどい環境ではなかった。


 神様の判断を疑うし、他の人間だったら大惨事だから、憤りはするけど。


 むしろこの状況は、大歓迎。


 なぜなら私は、戦いが好きだから。


 この世界に、戦闘狂である私が転生できたのは、幸いだったかもしれない。


 強い敵をさくっと倒す快感はすばらしいし、苦労の末難敵を打ち倒すのも達成感があって良い。


 生粋のバトル狂いだったこの私は、戦うすべがもう身についているようだったし。


 生き残る方法で悩むことはなかったから、幸い。


 だからこの転生、前向きに考えることにするわ。





 盗血王国ブラド・レイン 訓練場


 恋愛をしながら過酷な戦場で命のやり取りって、スリル満点、刺激過積載でとっても素敵じゃない。


 運に任せて崖から飛び降りたり、敵地で味方と離れ離れになって生きるか死ぬかのサバイバルをしたり、仲間にまぎれこんだスパイと命がけの駆け引きをしたり。


 なんて素敵な日常なのかしら。


 私は国を守る兵士として戦っているけど、そんな日常に満足しているわ。


 未だって、訓練場で他の兵士達と摸擬線をやってとても楽しい思いをしているし。


 女性は少ないから、目立つけれど、からかってきたり不埒なことをする馬鹿な連中は叩きのめせばいいしね。


 そんな私に声をかけてくるのは、主に三人の男性。


「お前はいつも楽しそうだな」


「なんでそんな風に笑っていられるんですか?」


「お姉ちゃんは、戦場にいる時いつも楽しそうです」


 これらのセリフは攻略対象達からいただいたものだ。


 彼らは乙女ゲームの中で何人もいるキャラクターの一部だけど、強いから気に入っている。


 性格もいいし、信頼もできる。

 様々な戦場を共にした、気の置けない関係だ。


 だけど、危険を楽しむ私の性格だけは理解できないでいるようだった。


 こんな過酷な乙女ゲームの登場人物なのに、そこらへんはまともなのよね。


 彼らはたまに時間があると、戦いを楽しむ私に向かって疑問を口にする。


 もちろん私はこう言うのみだ。


「私は、根っこからの戦闘狂なので、強者と戦えるのがうれしいんですよ。難所も難易度が高ければ高いほど燃えます」


 そうすると彼らは、各々が微妙な表情になるのが定番。


「そっ、そうか」

「さっ、さすがの胆力ですね」

「お姉ちゃん、ちょっと怖いよ」


 若干引いてるような雰囲気もあるが、それ以外は特に思うところはないようで。


 戦場で困ったときは真っ先に駆けつけてくれるし、逆にこちらが助けたときもきちんと感謝してくれる。





 盗血王国ブラド・レイン 勲章授与会場


 そんな感じだから、恋愛中には発展しないかと思われたが、そうでもないらしい。


 功績を上げて勲章を授与された後、彼らと話した時のことは印象深い。


「俺とお前は違う価値観だけど、それでお前が持っている良さがそこなわれることはねぇよ。仲間思いのお前は本当にいいやつだしな」

「そうです。意見が異なるものを切り捨てた挙句が、今回のこの人族と魔族との争いですからね。同じ轍は踏みたくないものです」

「どんな性格でも、お姉ちゃんが良い人だってことは変わらないよ! だから大好き!」


 彼らは私に好意を抱いてくれていたらしい。


 それぞれからプロポーズの言葉と贈り物を渡されてしまった。


 正直かなり以外な展開だった。


 私は前世でも血の気が多くて、喧嘩っ早い性格で、こんな事は起らなかったから。


 異性と付き合うどころか、人付き合いが壊滅していたから、ゲームにのめりこむしかなかったのに。


 おそらく、女性なのに喧嘩ばっかりで、血の気が多くて、トラブルメイカーだったから付き合ってられなかったんだろう。


 それは、あの人と人との距離が離れがちな現代社会では、仕方のないことだとは思う。


 せめて生まれる時代が戦国時代とかだったらまた違うかもとか思ったが。


 ないものねだりをしてもしょうがないと、あきらめていた。


「みんな、ありがとう。返事はきちんと考えてからさせてもらうわ」


 けれどこの世界では、ありのままの自分でいられる。彼らとの交流は私の枯れた心の一部を、やさしく満たしてくれた。


 だから、彼らの言葉に精一杯誠意で答えようと思ったのだが、今まで恋愛なんて眺めるだけでしてこなかったため、どうにも勝手が分からない。





 だから告白の返事待ちの彼らに、恋愛のいろはを尋ねるというよくわからない状況になってしまった。


「つきあうって何をすればいいの?」

「別に無理して考える必要ねぇんじゃねぇ? 俺は、一緒にいれたらそれでいいし」


「恋をしている人って、普通なにしてるのでしょう?」

「それは、まあ。相手のことを考えたり、相手が喜ぶことを考えたり、ですね」


「うーん。恋愛って、具体的にどう育んでいくのかしら」

「よくわかんないけど、いっぱい遊んだり、いっぱいお話したりすればいいんじゃないかな」


 と、こんな具合に。






 けれど、彼らはそんな私にも優しくしてくれた。


 相変わらず私は戦闘狂で、戦うことに楽しみを感じる性格のままだけど、彼らと一緒にいるのは心地よくて、楽しい。


 今は彼らの気持ちに向き合うこともうまくできないでいるけれど、いつかきちんと答えが出せればいいなと思った。




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