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時系列的にはリヴァイス82以降。
観光者シジマのお話しです。
お楽しみいただければ幸いです。
気がつくと、なんだかよく分からない場所に居た。
明るいとか暗いとか、広いとか狭いとか、周りの状況が全く分からない。
自分が立っているのか浮いているのかすらも、よく分からない。
ってか、そもそも俺自身がよく分からん状態なんだけど。
俺は誰?
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『聞こえてます?』
はい、聞こえますよ、こんにちは。
それで、どちら様ですか?
『あなたを創造した存在です』
もしかして、神様?
『いいえ、神ではありませんよ』
『私、"神の定義"を語れるほどお利口さんではないですし』
えーと、声の感じから察するに女性、つまり俺の母親ってことですかね。
それにしてもかなり若いママさん……
『まだ未婚ですから、母親呼ばわりは勘弁してくださいね』
『確かにあなたを創造したのは私ですけど、出来れば対等な関係でありたいです』
創造されたての俺と、対等でよろしいのですか。
『お友達からってことで、どうでしょう?』
……よろしくお願いします。
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呼び名を決めて欲しいとのことで、俺を創造してくれた女性を"カミコ"さんと呼ぶことにした。
俺自身の名前も自分で決めるよう言われたけど、結局カミコさんにお願いすることに。
『夜次貴 志侍待 (ヤツタカ シジマ)さんって、どうでしょう』
なんだか、変なフラグが立っちゃいそうな名字ですね。
『お嫌ですか』
謹んで拝命いたします。
自分の名前を決めるのが拝命で合ってるかどうかはさておき。
それはそうと、そろそろ俺を創造した理由を教えてください。
『観光です』
はい?
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カミコさんの世界では、新しく創世した世界の成長を観察するのが流行中。
干渉は最小限に、なるたけ世界を長持ちさせて、面白イベントが起きるのを楽しみに待つ。
凄く神様っぽいと思うけど、カミコさんは神様扱いされるのは不本意なご様子。
基本的には、創生した世界を観察する権利を有するのは製作者本人のみ。
自分が創世した世界の出来栄えを、仲間内で自慢したりするそうです。
カミコさんは、知り合いが創世した面白そうな世界をどうしても覗き観たくて、
そこに送り込むために創造されたのが、俺。
『本当は、よそ様の創世した世界に干渉するのは厳禁なのです』
えーとつまり、無断で覗きに行く俺はその世界にとって異物の侵入者なので、
バレたらヤバい、と。
『バレなければ犯罪ではないのですよ』
『なので、バレないよういろいろ工夫しましょうね、送り込む前に』
我ながら立ち位置不安定な存在なのは重々承知しておりますが、
不法侵入で裁かれて酷い目に遭うのはご勘弁です。
『シジマさんがあちらの世界で長生きしてたくさん観光出来るよう、私も最大限協力しちゃいますから』
不法侵入しないっていう方向には……
『せっかくシジマさんが存在出来たことですし、少しでも楽しんで観光して欲しいのです』
……俺には選択肢が無さそうですし、
バレない工夫とやらをふたりで考えましょうか。