2.めんこ
数字は全角12345678910
S.F.N高校
将棋部:名ばかりのおダラケ部
ソフィア、鈴木、佐藤、部長(男)、副部長(女)の計四人
部長、副部長はほとんど来ない
そもそも将棋部は2年前に部長、副部長が作ったもので、2人きりになるのが目的だったが、鈴木が入部したことで、部活の意味が無くなった。
佐藤は途中入部(キャラ参照)
真ん中に畳二枚とちゃぶ台が置かれて、奥の方にテーブルが乱雑に並べられている。そのため手前の扉しか使えない。入ってすぐ右に本棚があり、正面に畳が離されて敷かれて、将棋盤が置かれているが、埃を被っている。
畳に乗る時は靴を脱ごうね。
主人公:鈴木 悠(17)
容姿端麗文武両道ではないThe庶民(`・ω・´)
但し、実家が厳格な剣道の道場で、強要されて育った。
剣道両親めっちゃ嫌い。
身長164cm
62kg
中肉中背
黒髪ツーブロ
真っ当に生きるを目標に生きる。
凄く面白くもないし、つまらなくもない
自分を重ねよう。
秘かな楽しみは将棋部で家では読めない漫画や小説を読んだり、ゲームをしたりする。
姫:ソフィア(・アン・キャヴェンディッシュ)(16)
両親は海外。
めっちゃ金持ち。
頭は良い方で日本大好きなため日本語流暢
家族で旅行に来た際、お腹を壊して飛行機に間に合わず、そのまま日本で暮らすことを決意。両親も賛成。
両親は割と適当な性格で放任
金髪ウェーブ
髪型特に無し気分によって変える
身長149cm
エメラルドグリーンの瞳
痩せ型、食っても食っても太らない悩み
40kg
乳なし
わがままで甘えんぼでさみしがり
将棋がやりたくて将棋部に来るが部活をしてないので驚く。
主人公に日本文化を教えるよう強要
桜良 咲
身長157cm
黒髪ミディアム
三つ編みの日やお団子の日、気分次第
49kg
痩せたい!!!
でかちち
鈴木とは中学から知り合い。
全く仲良くないがお疲れ様などの挨拶は交わす。
ソフィアには興味津々。
可愛いし綺麗だし。モデルにして絵を描く。
2次元の絵が描きたいが美術部は違ったので、描けそうな将棋部に入部した
そんなことがあった日の夜。
それまでスキップ気味だった俺も、家に入る頃には分かりやすく不機嫌な顔で、直ぐに2階にある自室へ駆け込んだ。
ベッドに顔から倒れ、改めて今日起こった出来事を整理してみる。
……やっぱり、何度考えても不思議な日だ。
俺は一般人で、家庭は厳しく、面白味も何にもない人生を今まで送ってきた。
そんな俺が、こんなにも主人公みたいな出来を経験出来るとは……。
高校生にしてようやく漫画を読み、そういう世界を知った俺にとって、これ以上の幸福は無い。
最近じゃ許嫁がどうこうの話を親からされているからな……現実を忘れるためにも、そういう非現実的な日常に没頭していきたい。
俺は鼻息も荒くして、ワクワクを抑えられない。
明日はきっとまた、いつも以上に廊下に立たされるだろう。
でも、俺の気分は憂鬱ではなかった。
結局、その日は寝るまで、ソフィアと部活の事を考えていた。
翌日の2017/4/12/水曜日。
昨日と同じくの晴天で、照りつける日差しが、肌寒い風邪を押しのけてきていて、凄く暖かい日となった。
俺はいつも通り一番乗りで教室を開けて中に入って自分の席へ着く。
するとしばらくして、昨日と同じような、ワイワイキャッキャした声が響いてきた。
俺は教室の扉が開いてクラスメイトが入ってくるのを無視したまま、窓の外を肘をついて見つめる。
心のどこかで、ソフィアを探している自分がいたのだ。
目をキョロキョロ動かして、合わせないようにしつつ、ひとりひとり顔を確認していく。
すると、例の冷徹人間、桜良が見えたが、目が合いそうになった所で直ぐに逸らした。
視界の端で不機嫌そうな顔が見えたが、気のせいだろう。
今日は髪でお団子を作っていて、昨日とは雰囲気が違って見えたが、人間中身は変わらないのかすごく怖かった。
ソフィア……ソフィア。
っと声が出ない要注意しながら探していると、窓枠の下から金色の髪がひょこっと見えた気がした。
幻覚が見える程ソフィアと唱えてしまったのかと自分を疑ったが、そんなはずは無いと、人目を気にせず窓をガラガラっと開けて周りを確認する。
すると、そういう訳か必死こいて探していたソフィアが、必死そうな顔をして周りをキョロキョロと挙動不審に見渡して、何かに怯えているようだった。
髪は有り得ないくらいボサボサで、何かに揉まれた様な感じだ。
ソフィアはお嬢様みたいに気品が溢れていて、制服とはいえ目立つ髪をしている。
不審者に何かされたのかもしれない。
俺は心配になり「ソフィア、何かあったの?」とその背中に声をかけた。
すると、ソフィアは肩をビクッと震わせて、恐る恐る振り返り、俺と目を合わせた。
うるうると何か言いたげな目になっていたが、次の瞬間。
ソフィアは俺の顔に向かって飛びついてきたのだ。
俺はバランスを崩して転けそうになるのを何とか堪えようとするが、そうすると頚椎に何かしらの影響が出そうな角度で曲がってしまう。
ソフィアは俺の首を完全にロックして固めてきているので、引き剥がそうにも引き剥がせない。
なので、俺は諦めて窓の外に体を出してそのまま落下する。
ソフィアの後頭部が地面にぶつからないよう腕を回したのだが、そのせいで自分の体重が支えきれずに、ソフィアと俺の額が勢い良くぶつかってしまった。
「イテテ」と言いながらゆっくり目を開けると、ソフィアの額は真っ赤になって、目を回していた。
俺の右腕はソフィアの頭の下に、左腕は頭の横の地面に着いた状態でソフィアの上に覆いかぶさっている状態になってしまい、俺は上手く動くことが出来ない。
そんな時。
教室の窓がガラガラっと一斉に開き、クラスメイトやその他の人々が顔を覗かせて来た。
そしてある女子生徒が息を吸い、叫ぼうとした。
その次の瞬間に、俺はいち早く察してソフィアを担ぎ上げ、保健室まで一直線に走り出していた。
俺が息を切らしながらハァハァと保健室に到着すると、Tシャツに短パンその上に白衣を纏った摩訶不思議な先生がベッドへと案内してくれた。
俺はソフィアを横に寝かせると、隣にあった椅子に座り、我に返る。
これは、大変なことになったのでは……?
勿論ソフィアの事ではなく、俺の学校生活である。
「はぁ……俺が襲ってたとか、噂にならないといいんだけど……」
「って、何で人の心が読めてるんですか!?」
声の方向を向くと、先の先生がベッドの縁に縋ってニヤニヤ笑っていた。
よく見ると、Tシャツにクマさんの絵が描かれていて、それ以上にデカイ胸が浮かんでいて、すぐに目を逸らした。
「どうした? 襲わないのか、その子」
「襲うわけないでしょ!! ソフィアが気絶したのは俺が原因なので連れてきただけですよ!!」
とんでもない発言をする先生に対して、俺は語気荒目でツッコんだ。
しかしそんな言葉聞こえていないかのように、先生は続けた。
「まぁまぁ、落ち着けって。直ぐにどこか行くからさ」
意味深にそう言って先生は本当に保健室からサッと居なくなってしまった。
俺はソフィアを見る。
勿論襲わないが、朝から一体何があったのだろう。
俺は起きないかなと、ソフィアの肩を揺らそうと手を伸ばしたが途中でやめた。
何でか分からないが、今触るのは、不味い気がしたのだ。
結局、ソフィアが目を覚ましたのは1時間目の授業が終わって直ぐだった。
「に、日本の学生、怖いですわ……というか、朝からあんなに質問攻めにしなくったっていいと思いません!?」
バッと勢い良く起きてそうそう俺にキレ散らかすと、遂には「今度から貴方と一緒に通学いたしますわ!!!!!」と胸ぐらを掴んでそう宣言し、満足したのか教室にさっさと戻って行った。
わずか1分程であったが、結局何であの状況になったかとか、なんで俺が怒られてんのかとか、色々考察するしか答えを導き出すことは出来ない状況だった。
だが、今の混乱している俺の脳内では、【ソフィアは日本語が上手いエセお嬢様】という答えだけがぐるぐる回っていた。
が、そうしてボウッとしていると、2時間目の始業のチャイムが鳴った。
俺はそれでハッとし、急いで教室に戻った。
教室に戻った後、特に変な噂が流れているような様子もなく、というか、クラスメイトにとって俺はただの一般人という認識だろうから、だれがソフィアの上に乗っていたか覚えていないのかもしれない。
俺は人間と言うより一般人と言う文字として見られている節がある。
それを考えると、桜良とソフィアは貴重な存在なのかもしれない。
例の如く廊下に立つこと2度。
無事に放課後を迎えて、俺は早足で将棋部の教室へ入った。
「おつかれ」
「あぁ、お疲れ様」
中ではいつも通り桜良がちゃぶ台の上に紙を敷いて絵を描いている。
気のせいかいつもより紙の枚数が多い気がするが、特に見ることも無く、俺は漫画を取りだして読み進める。
これまでと変わらない風景。
描く音と捲る音だけが響き渡る教室。
そして、それを破るように、新星お嬢様が扉を勢い良く開けた。
何故か、奥の方の扉をだ。
倒れないように机は組んだ筈だが、扉を勢い良く開けたせいでバランスを崩したのか、またしてもソフィアは「ヴァアァ」と叫びながら埋もれていった。
「何やってんだ……」
「お、おっちょこちょいお嬢様……!? そ、唆るぜッ」
と、気持ち悪い声を無視して俺は急いでソフィアを助けに向かう。
そうしてソフィアを寝かせて机を片付けていると、そこでようやく地面に散らばる、絵の書かれた分厚い画用紙のような、長方形の物を見つけた。
俺はそれを手に取って眺める。
「めんこか……?」
昔ながらの絵のタッチで金太郎が描かれているめんこを見ていると、教室の扉を開けてソフィアが顔を出してきた。
「今日はそのめんことやらの遊び方について教えて貰いますわ」
さっきのが嘘のように、元気に言うソフィアに、不思議と怒りは湧いてこないが、一応聞いてみる。
「……机、片付けるの手伝ってくれません?」
「嫌ですわ」
ガラガラ、パシっと窓が完全に閉まった。
「はぁ……奥の扉、開けれないように机と椅子引っ掛けとくか……」
俺が工夫して机と椅子を片付けていると、桜良の絵をソフィアが見て「上手いですわね」とか「こ、これがじゃぱにーずかるちゃー……」とか言っていた。
楽しそうで何よりだが、少しは手伝って欲しいとかいう望みも湧いてこないくらいイチャイチャしていた。
俺は最後にめんこをまとめて束ね、ちゃぶ台の上に置いて、自分も座った。
丁度2人の漫画話もキリよくなったようで、視線は自然とめんこに集中した。
「では早速、このめんこというスポーツについて、教えて欲しいのだけれども……遊び方以外の知識って……」
「……無いな」
「うん、無い」
そりゃそうだ。
めんこで遊んだのだって、小学生の頃に牛乳の蓋でやったくらいなもんだ。
知識なんてあるはずがない。
「というか、ソフィア。このめんこどこで買ってきたんだ?」
「近所の駄菓子屋のおばあちゃんがくれましたの。あのかるちゃーは最高ですわね。おばあちゃん、とっても可愛いんですのよ」
「ソフィアちゃん、プライベートでは一体どんな服を?」
「え、今それ関係ありますの?」
「いや、答えなくても……」
言いかけて、桜良に睨まれ、俺はこじんまりとなって黙る。
「まぁ、そんな事は置いておいて、早速3人でめんこ、やってみますわよ!」
ソフィアはそう言って、1枚上からめんこを取って立ち上がり、扉前の畳では無い所へと移動した。
それに合わせて桜良も上からめんこを取って、トコトコ移動した。
俺もよいしょと立ち上がって、さっき見た金太郎のめんこを持って移動した。
すると、床には既にソフィアと桜良のめんこが置かれていた。
「悠様が先にやってもいいですわよ? 私、めんこのルールというものが良く分からないものでして」
「俺も良く分かってないんだけど、まぁ良いか」
ルールもクソも、ひっくり返せばいいんだろ。
と考えながら、俺は「行くぞ!」と言って金太郎のめんこを地面に思いっきり叩きつけた。
落ちた場所は、桃太郎のめんこの近くで、それはふわっと宙に浮いたのだが、ひっくり返ることなくその場で落下した。
「あぁ、ダメだったか」
「アンタ、よくも私を狙ってくれたね」
そう言って、桃太郎のめんこを持ち上げたのは桜良だった。
しかし俺には桜良には取られないだろうと言う地震があった。
何故なら、桜良は運動神経が悪そうだし、何よりどう考えても胸が邪魔になるからである。
「やってみろよ、桜良ぁ!!」
「おりゃぁああぁ」
俺の声と同時に桜良はめんこを振りかぶって思いっ切り地面に叩きつけた。
風を切る音がブンと聞こえ、めんこが地面に着いた時の音がバチンとムチを打ったような音で、明らかに俺とは質の違う打ち方だ。
しかも、桃太郎のめんこは金太郎のめんこの直ぐ左側に落ち、コントロールも見事なものだ。
「うおぉぉお、桜良様、素晴らしい技術ですわ!! これが見たかったんですのよ!!」
足まで振りかぶった桜の横で、ソフィアも大興奮だ。
そうして、風圧で打ち上げられたのは、金太郎のめんこ……だけでは無かった。
確かに金太郎のめんこは俺の足首くらいまで打ち上げられたのだが、あろうことかその横にあった、何故かドラゴンが描かれためんこも同時に風圧で上に浮いて傾き……ひっくり返ってしまった。
「あ……」
しかも、俺の金太郎のめんこはくるくる回ったはいいものの、結局上を向いていたのはオモテ面で、ひっくり返ってはいなかった。
ドン、という音が聞こえたので見ると、ソフィアが床に四つん這いで這いつくばっていた。
「わ、私のめんこが……」
「ご、ごめんなさい! ソフィアちゃん!!! 私、狙ったつもりは……」
桜良もそれに気がついたのか、直ぐにフォローに向かった。
「い、いえ。これも勝負の世界……じゃぱにーずかるちゃー、大和魂。これは間違いなく、私の負けですわ」
「い、いやでも、ほら、ソフィアちゃん! めんこって絶対に1枚なんて決まりは無いんだよ! あの台上のめんこは全部ソフィアちゃんのヤツでしょ? だから、まだ終わってないよ!!!」
「確かに、そんなルールもあったな」
「そ、そんなルールが……? 」
「そ、そうだよ! まだソフィアちゃんは、倒れてなんかいられないんだよ!!」
「そ、そうですわね! 私はまだ……」
「……こ、これが最後の1枚ですわ……」
これまでの成績、俺0勝0敗、桜良98勝0負、ソフィア0勝98負。
だが、まだソフィアの闘志は燃え尽きてはいない。
それどころか、むしろメラメラと燃え上がっている。
「じゃあ、俺からだな」
俺は消化試合のように、しかしこの98戦で学んだ知識を生かし、風圧が起こりやすいよう斜めに着地するようにして、桃太郎のめんこの右側に叩きつけた。
桃太郎のめんこはふわっと浮き上がり、何ということか縦向きで床に着地した。
俺の方に裏面が向いている。
ソフィアも嬉々としてその様子を伺っている。
桜良は、何故か裏を向いて欲しそうな顔をしている。
今日初めて見たその絵柄は、桃太郎が鬼に剥き出しに剥がされて殺されている絵だった。
フラフラと、桃太郎のめんこは揺れる。
パタン、そう着地したのは、結局オモテ面だった。
「惜しかったなぁ」
「そうですわね……」
ソフィアの顔は、一気に暗いものになった。
それもそうだ。
98回、この流れで自分の回が回ってこないで終わっているのだから。
桜良や俺が順番を変わろうと言っても、「大和魂じゃい!!」と言って聞こうとしなかった。
そして運命の桜良の番が回ってきた。
桜良はめんこを持ち上げ、頭の上まで持ってくる。
そして、力1杯に地面に打ち付けた。
1度力を抜いて投げた時にソフィアにポコポコ叩かれていたので、それも出来ないのだ。
だが、俺は知っている。
49回前くらいから、目を瞑って投げているのを。
そして今回。
またしても見事なコントロールで、俺の金太郎のめんことソフィアの西洋騎士のめんこが宙に浮いた。
俺とソフィアと、何故か桜良も手を組んで拝む。
すると、ことんと音がなり、恐る恐る目を開ける。
そうして、裏を向いているめんこは……無かった。
「や、やりましたわぁぁああぁあ」
「やったな、ソフィア!!」
「ソフィアちゃん……」
俺とソフィアは抱き合って喜び、桜良は涙を浮かべて口を抑えている。
「さぁ、念願のめんこだぞ。思いっ切り行ってこい!!」
「えぇ、行きますわよ!!」
ソフィアは目を輝かせてめんこを拾い上げ、構える。
その顔は真剣そのもので、後ろに鬼のようなオーラも見えてきそうな程だ。
俺はゴクリと生唾を飲み込む。
次の瞬間。
パァンという音と共に、俺の顔面に鈍い痛みが走った。
そう、ソフィアの投げためんこは、俺の顔に直撃したのだ。
すると、緊張の糸が解けたのか、桜良とソフィアは2人して「ぷっっ」と笑い始めた。
結果として言えば、あの後仕切り直して最終試合をしたら、見事桜良に同時めくりされて、俺とソフィアは床に倒れた。
しかもその後の他のめんこの遊び方、例えば、つみ、はたき、さばおり、ぬきでやってみても、1度たりとも勝てる気配すら無かった。
終わって、3人はちゃぶ台を囲んで座る。
「あ、明日こそは、勝てる物を持ってきますわ」
「明日も何かやるのか?」
「当たり前ですわ! このまま終われませんもの!!」
言ってソフィアは立ち上がり、桜良を指さした。
「桜良様!! 貴方にはもう、2度と負けませんわよ!!」
そこまでは良かったのだが、積まれためんこが目に入ったのか、涙を浮かべ「うえーん」と教室を出ていってしまった。
取り残された俺と桜良は目を合わせた。
「帰るか」
「うん、帰ろう」
「めんこは本棚に飾って置いても良いか?」
「……? 別に、ソフィアちゃんのだからいいけど……何で本棚?」
「う~ん、何となく。ニーアのトロフィーみたいでいいだろ?」
そんな俺の渾身のギャグも通じなかったのか、桜良は無視して紙をまとめ始めた。
「そういえば……ソフィアちゃんが襲われてたって聞いたんだけど、何か知らない?」
「……あぁ? うん、知らない」
「何? 今の間は。何か知って……」
「……よし帰るわ! 鍵頼んだ!! じゃぁ、お先!!!」
「ちょっと!」
俺は桜良に何も言わせないよう、間髪を入れずに教室を飛び出した。
ソフィア教信者の桜良に今朝のことがバレると殺され金無いからな。
正しい判断だったと思う。
帰り道、俺はまた1人で思いにふける。
今日は色々あったが、最高に楽しい1日だった。
ソフィアのおかげで、ちゃんと生きてる実感がもてている。
本当に感謝感謝である。