番外編 花畑 ~アインス視点~
目を覚まし、いつも考えるのはレイティア様が私に学院を卒業したら婚約破棄してくれと言ったことだった。
なぜ、卒業してからなのだといつも聞こうと思ったが、そう言った彼女が少し寂しそうに見えていつも聞けなかった。
そんなとき、行こうと誘ったのが花畑だった。彼女は嬉しそうに行「行きます」と返事をした。
彼女は花畑につくとしゃがんで花を見た。
「それではドレスが汚れます!」
私は彼女を止めようとしたが、彼女は笑顔で大丈夫ですと言った。
彼女は普通の令嬢たちと違っていた。普通の令嬢ならば、こんな事しないだろう。彼女をあの令嬢たちと一緒の括りにしてはいけないと思った瞬間であった。
楽しそうに花を見ている彼女に私も嬉しくなった。
「花が好きなんですか?」
「ええ。見ていると心が落ち着くので」
「この場所にしてよかったです」
最初、ここに通い始めたのは興味からだった。彼女の事を知りたくて通い始めた。
「初めて会った日、婚約破棄などなぜ言ったのですか?」
彼女はぴくっと体を動かした。
「特に深い意味はありません。私がアインス様の横にいる自信がないからです」
そういう事で彼女が言ったようには見えなかった。だが、それを追求はしなかった。今はまだ聞いても答えてくれない気がしたからだ。
「自信とは何ですか?私が王族だからですか?」
「私がここにいるべきの人間ではないからです」
貴族だから私の隣に居れるのは不思議な事ではない。なのに、なぜそんなことを言うのだろう。
「どういう事ですか?」
「夢を見たんです」
「夢?」
「ええ、とても悲しい夢でした。私が婚約破棄をされ、国外追放をされる夢です」
「その婚約者は私ですか?」
「どうでしょうか。覚えておりません」
それはきっと私なのだろう。レイティア様の顔がそう語っていた。
「私はそのような事をしません」
「ええ。そうですね」
子供をなだめるかのように彼女は言った。
「レイティア」
「はい……え」
その時が初めて僕が様をなしにレイティア様の名を呼んだ時だった。
「やっと表情変えてくれた」
「すみません」
「私は君を婚約破棄するつもりはないよ。レイティアがそれを恐れているなら約束する。王族として君を婚約破棄するつもりはない」
王族としての約束は絶対に守らなくてはいけない。
「なぜそこまでしてくれるのですか?」
「君に興味があるんだ」
レイティアの反応はどの令嬢とも違った。その一つ一つの言葉と行動に目を話せなかった。
「そうですか」
彼女は嬉しそうにそう言った。その時の彼女はどの花よりも美しかった。
その後は花冠を二人で作り、レイティアは私に、私はレイティアにその花冠を被せた。
「ありがとう」
僕がそう言うと「ありがとうございます」とレイティアが言った。
それからはもっと彼女の屋敷に通った。側近には通いすぎではないかと言われ、公務に支障が出ますよと言われたが、それはそれでちゃんとこなすと何も言わなくなった。
「それほど愛されている婚約者様を俺も見てみたいですね」と側近は言ったが。
「見せる予定はないからね」
「本気じゃないですよ」
怖い顔で言うアインスに側近は顔をこわばらせて言った。
「分かっている」
彼女の元に通う度にどんどん彼女に惹かれて言った。私が彼女を褒めれば彼女は少し顔を赤らめる。恥ずかしいときいつも髪をいじる癖があるのを彼女は知っているだろうか。
彼女への気持ちが大きくなっていくと、彼女に近づく者達を取り除きたくなった。それを側近のヴィレッツに言うと嫉妬ではないですかと言われた。
確かに嫉妬に近づいている気がする。
「どうすればこの気持ちを抑えることができるんだ。皆、悪い者達ではないのに」
「その気持ちをそのまま伝えればよろしいのでは」
「そんな恥ずかしいこと言えるわけないだろ」
悩むアインスにこの方に溺愛されるレイティア様を見て見たくなったヴィレッツであった。
花畑の事を彼女は覚えていてくれるだろうか。彼女にとっても私は大きな存在であってほしい。
彼女が好きだ。その気持ちをいつになったら言えるだろう。その時、彼女はこの気持ちを受け止めれくれるだろうか。
「レイティアに告白する」
そうヴィレッツもいる部屋で言うと、ヴィレッツがこちらをゆっくり見た。
「振られたら慰めますね」
「お前に慰められるのが一番嫌だよ」
と冗談交じりにヴィレッツに言った。