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六話 いつまでも変わらない

 「それは罰ではないよ」

 ふふっと笑ってアインスは言った。

 「ええ。罰ではありません。今はいいことだけ考えていたいんです」

 「いつまでも変わらないな。君は」

 その後、私はあそこで何があったか聞かれたが、私があそこにいたのは数時間だったので何もわからないと返答した。

 「レイティア様。大丈夫ですか!?」

 ヴィレッツが話しかけてきた。学院に入ってからはまだ話していなかった。久しぶりにヴィレッツの声を聞いた気がする。

 「ええ」

 「「レイティア様!」」

 テーリラとマリアの声が重なる。

 二人はレイティアに抱きつき、ぎゅっと抱きしめた。

 「ご無事で良かったです」

 震えながら言うマリアに私はマリアの頭を撫でた。

 「レイティア。良かった。レイティアがいなくなったって聞いて」

 「たった数時間ですよ」

 「レイティア様はもっと自分を労ってください!」

 泣きながら言うマリアに私がどれだけ愛されているのか身に染みて分かった。

 「ありがとう。マリア」

 「分かってるんですの?」

 マリアは私がまだ分かっていないと思っているらしい。

 「ちゃんと分かっていますよ」

 「そう……ですか」

 マリアは少し嬉しそうに笑った。

 このときに、私が町にお忍びでマリアと一緒に来たときの事を思い出した。

 「レイティア!レイティア。レイ……ぐす、レイティア」

 マリアが私と護衛とはぐれてしまい、私と合流したときに声を出してマリアが泣いていたときだ。

 「ごめんね。マリア」

 その後、マリアは私の腕の中で泣きながら眠りについた。

 マリアは私から離れるとテーリラにも迷惑ですよといい私から離した。

 「マリア。ありがとう。テーリアもありがとう。ヴィレッツも」

 「僕は何もしてないけど」

 少し恥ずかしながらもヴィレッツは言う。ヴィレッツは恥ずかしいとき首をかくからバレバレだ。

 「来てくれただけで嬉しいの」

 「もう心配かけんなよ」

 「うん」

 


 家に帰ると両親が涙を流して私を抱きしめた。

 「レイティア。大丈夫かい」

 「ええ」

 この件で一層家族と繋がって気がする。

 その後はこっぴどく父様と母様に怒られた。紋章のない馬車には乗らないことと説教をされた。その時に思い出したことといえば、アインス様と言った孤児院の事だ。あのときの子どもたちにはまた会えるだろうか。

 次の日はいつもより少し寒く、息を吐くと白くなった。その日は護衛をつけて登校した。犯人は捕まったから大丈夫だと父様に言い聞かせたが、安心できないと言われ、仕方なく、護衛付きで登校した。私より長くあの場所に居た令嬢たちはすぐには家には帰れず、療養のためという理由で数日休むらしい。

 ケヒューバ男爵にはなんの罪もないということで彼は罰されなかったが、弟の事を見定められなかった私のせいだと言い、悔やんでいた。

 令嬢の家族たちへの慰謝料はケヒューバ男爵が払うことになった。ケヒューバ男爵は請求された金額を払ったが、そのおかげで夫人の医療費はすべてなくなった。

 「ケヒューバ夫人を私が診ることはできませんか?」とアインス様に言ってみると、アインス様は考えた末、言いだろうと言ってくれた。

 手紙でその事をケヒューバ夫人宛に送ると喜びの返事が帰ってきた。

 一週間後、私はアインス様と一緒に夫人のもとに行った。出迎えは夫人ではなく、男爵がしてくれた。男爵が言うには夫人は体調を崩し、お出迎えもできないほどなのだという。

 男爵は医療費を慰謝料として捕まった令嬢たちの家に渡した事を後悔はしていなかったが、夫人の寿命が短くなることを自分のせいだと悔やんでいた。

 夫人の病は幸い私でも治せる病気で、すぐに治療は終わり、定期的に夫人の様子を見に来るということになった。

 「レイティア。約束のことなんだが」

 少し恥ずかしそうにアインスが言う。

 「ええ、お出かけのことですね」

 ふふっと私は少し笑って言った。

 「花畑に行かないか?」

 「ええ」

 私達が知る花畑は一つだけ。そこが思い出の場所でもある。

 アインスが言っている場所がそこなのかはわからないが、花は好きなので嬉しい。

 いつかきっとこれも思い出となるのだろう。その日は今からとても楽しみだ。

 「花畑といえば、色々ありましたよね」

 「ああ、本当に」

 嬉しいことも悲しいこともあの場所で経験した。

 「()()()()なのですか?」

 「ああ。私がレイティアと行きたい場所として一番最初に思ったのが花畑だったんだ。もしかして嫌だったか?」

 「いえ、むしろ嬉しいです。私ももう一度行ってみたいと思っていたので」

 レイティアがそう言うとアインスは安心したように息をついて、嬉しそうな顔をした。

 アインス様も私と同じ気持ちなことが心底嬉しかった。

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