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四話 部屋の中で

 「私は隣の部屋で寝るからなにかあったら呼んでくれ」

 なんか変な想像してしまった私が恥ずかしい。

 「はい」

 私は少し顔を赤らめて言った。

 そして、ずっと心に留めていたあることを思い出した。今ならもう言ってもいいんじゃないかと。アインス様なら受け止めてくれるのではないかと。

 「アインス様。お聞きしてほしいことがあるのです」

 「何だ?」

 アインスは振り向き私の方を向いた。

 「長話になります。そこに座ってお話しましょう」

 寝間着のことはもう諦め、私はベッドから降りて、椅子と机が並んでいるところまで歩いた。

 「分かった」

 二人が座ったところでレイティアが口を開いた。

 「アインス様。私が悪女のような人だったらどうしますか?」

 「それはどういう意味だ?」

 「仮定の話です。もし私が悪女のような方だったらアインス様はどうなさいますか?」

 「想像ができないな。レイティアはそのような人ではないから」

 アインス様ならこういう答えをすると思った。

 「アインス様。私が婚約するとき言った言葉覚えていますか?」

 「学院を卒業したら婚約破棄してほしいと言っていたね」

 「ええ。その理由。お話します」

 私は笑顔で答えた。

 「私、夢を見たんです。アインス様に婚約破棄されて国外追放をされる夢です。その夢でアインス様は他の方と結婚をします。だから、私は潔く諦めてた方がいいと思ったんです」

 「それは夢で、私ではない」

 「ええ、そうですね」

 小説の中のアインス様と今のアインス様は反対だ。全く別の人物と言ってもいい。

 「だけどその夢があまりに鮮明で、そう思ってしまったのです」

 「その夢に出てくる君が悪女だったということなのか?」

 「ええ」

 私が震えているのに気づいたのかアインス様は私の手を握ってくれた。

 「ありがとうございます」

 震えが収まったところで、私はまた口を開いた。

 「アインス様。私、諦めようと何度も思ったんです。だけど、その思いはどんどん強くなっていくんです。私、アインス様のことが好きです」

 「私も好きだ」

 予想にしていなかった答えにレイティアは固まった。

 「え」

 「もう一度言おうか?好きだ。君が大好きだ」

 アインスは少し顔を赤らめて言った。

 レイティアは頬をひねってこれが現実か確かめた。

 「君はどこまでもかわいいな」

 アインスはまっすぐレイティアを見つめて言う。

 「では、卒業したら婚約破棄はなしということにしていいということでいいかな。両思いなら婚約破棄する意味がないだろう?」

 「ええ」

 私は涙が止まらず、下を向いて、手で隠した。

 「アインス様。私、アインス様が大好きです」

 「うん。レイティア。こっち見て」

 「無理です。酷い顔してます」

 「君の目が好きだ。優しいところも困っている人もほっておけないところも好き。君の全部を愛してる」

 「なんで、そういう意地悪するんですか」

 私は顔を上げて言う。そこまで言われるとアインス様の顔を見たくなる。

 「やっとこっち見てくれた」

 アインスは幸せそうな顔をレイティアに見せた。

 やっと気持ちが繋がったことが分かってその余韻に浸っていると、アインスが口を開いた。

 「レイティア。抱きしめてもいい?」

 「へ」

 思わず変な声を出してしまう。

 レイティアは少し恥ずかしながらもこくんと頷いた。

 アインスは立ち上がり、レイティアの方に向かって歩いた。レイティアも立ち上がり、アインスの方を見て近づいて来るアインスを抱きしめた。

 二人の心臓の音だけが聞こえることがとても嬉しく、幸せな気持ちになった。

 アインス様の体温が伝わり、それがとても幸せで顔が緩んで自然に口角が上がった。

 レイティアが胸の中にいる嬉しさに胸が高鳴り、この心臓の音がレイティアに伝わればと思った。それと同時にレイティアの心臓の音が聞こえてレイティアも私と同じなんだと安心した。

 その後、アインスは自室へと戻っていった。

 私はその後、胸の高まりが収まらず、しばらくベッドの中で目を閉じて、余韻に浸った。

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