悪役令嬢にはコントロール機能がついている
カランカランと福引き会場でよく耳にする鐘の音がした。
「出ました一等!商品はこれ、乙女ゲームヒロインへの転生!」
ここ、死者の国に行く道だよね。ちゃんと看板あるし。なんでこんな所で福引きをしているのだろう。
だけど転生か。いいなあ。私も憧れたっけ。
あの商品、ぶんどれないかな?
「何を無視しているんですか。当選したのはアナタですよ」
すぐ耳元で声がした。声の主の姿は見えない。
──私?
「そうです。応募していたでしょう?異世界転生」
──応募?記憶にないけど転生したいとは思っていたよ。
「願うイコール応募です。おめでとうございます。今ならなんと、悪役令嬢にコントロール機能がついていて、まさに無双。敵なし。悪役令嬢に反撃される心配がないどころか、あなたの思うままに動かせます」
──すごいっ。
「商品を受け取りますか?」
──もちろんっ。
だって転生でもしなければ私は死者の国に行くのだろうし、確実にそれは楽しくない。どうにか逃げられないかと考えていた。
「コントロール機能の使い方は簡単。どう動いてほしいか願うだけ。これで完璧です。それでは第二の人生を楽しんで」
◇◇
はっと目を開く。僅かな時間、白昼夢を見ていたらしい。
いや夢ではない。すっかり忘れていたけれど、いつだったかに確かに起きたことだ。私はご平凡な女子大生だった。前世では。
今は剣と魔法の世界の男爵令嬢。
「いい加減、白状しろ」
頭上から声が降ってくる。顔を上げると、王子や公爵令息、騎士団長の息子といったそうそうたる顔ぶれが憤怒の表情で私を見下ろしていた。
「どうやってナディアを操っていた」
ナディア。そう、私は彼女を意のままに動かす力があった。不思議に思いながらもその力を利用し彼女を悪者にして、王子たちが私に同情するように仕向けたのだった。
あの力は、転生時にもらった悪役令嬢をコントロールする機能だったのだ。全て思い出した。
私は生まれながらに全てを持っているナディアが妬ましくて、彼女を必要以上に悪くコントロールした。
その結果、あまりにおかしいと王子たちが言い出して、私が彼女を操っていたとバレてしまったのだ。
「どんな魔法を使った!」
王子が重ねて問う。
「魔法ではないわ。神がくれた特別な力よ」
そう答えてから、自分で首をかしげた。
果たして本当にそうだろうか。他人を意のままに操るような力を、神が私に与えるだろうか。
もしや……。
ぶるりと震え、傍らの断頭台を仰ぎ見た。
お詫び
うっかりミスで、ジャンルを異世界恋愛にしていました。
恋愛ものと思って読んでしまっま方、申し訳ありません。
ホラーに変更しました。