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レコードによると  作者: 朝倉春彦
Chapter3 郷愁ラプソディ

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2.RKC 1978 PartⅡ -1-

「レン、あれ…Zだ。部長の横開いてるよ」


日向で1日を過ごした次の日。

私達は札幌の山奥にある、ホテルまでやって来た。

大物家電とか、家具とかを買いに来ない限り来ない場所…そこで、今日から3日間、世界中のレコードキーパーが集うお祭りが開かれるのだ。


買い物にしか来ないから、大きなショッピングモールしか印象にないが…

この山奥の空間には、高そうなリゾートホテルが何棟も建っている。

何時か、榎田さんが…「その気になれば、世界中のレコードキーパーだって呼び込めるぜ」って言っていたのを思い出した。


部長の乗る赤いスポーツカーの横に、背の低いスーパーカーを滑り込ませたレンは、ギアをニュートラルに入れて…サイドブレーキを引いて、エンジンを切る。

2人揃って、小さくため息を付くと、何時ものようにドアを開けて車を出た。


這い出るようにして、車から降りる。

髪が揺れたが…今は眼帯をしているお蔭で気にならない。


「で…チェックインして…どーするんだ?」


両腕を組んで、上に伸ばしている私の横に来たレンが言った。

既にキャリーケースも出してくれているようで、右手にケースの取っ手が見える。


「そうだね…カレンが出る前に電話で言ってたよ。15時から開会式だって…国別にやるみたい。私達は…このホテルの1階…コンサートホールでやるみたいね」


伸びをやめた私は、何時ものようにレンの右側…傍に寄り添うように収まると、ホテルの入り口を目指して歩き出す。


「ホテル自体は、いろんな国の人がいるみたいだよ。レンって英語とかできる?」

「出来るわけあるか。英語なんて5段階評価のうち、2だぜ」


レンはそう言って笑うと、目前に迫った回転扉に体を入れる。

私も、彼の横に引っ付いて中に入った。


「回転ドアなんて何年ぶりに通ったかな」

「さぁ?日本じゃないみたいだね」


無言でドアを潜り抜けた後、2人でそう言いあって小さく笑う。

ホテルの中に入り、ロビーを見回すと、ロビーはレコードキーパーで溢れていた。


何人かの…日本人が私とレンを見て、ちょっと驚いた顔を浮かべる。

外国人も…一部はこっちを見て何かを言っていた。


「チェックインは…ああ、レナ、こっちだ」


レンにそう言われて、手を引っ張られる。

ちょっとだけ驚いたが、彼に手を引かれた先に受付が見えた。


「いらっしゃいませ…手帳の掲示をお願いします」


人が並んでいなかったので、アッサリと受付の女の人の前に立つ。

前田さんのような、無機質で透明な声を聞いた私達は、言われた通り、手帳を出して開いて見せた。


「平岸レナ様…宮本簾様…ですね。こちら、お部屋の鍵でございます…ご自由にお使いください…それから、前田様よりお荷物が届いております…お部屋にありますので、ご確認の程、よろしくお願いいたします」


受付の女の人は、抑揚のない声でそう言って、鍵をトレーに置いて、私達に渡した。

鍵を受け取ると、彼女は小さく一礼する。



エレベーターのスイッチを押して、やって来たエレベーターに乗り込んだ。

広々としたエレベーターに揺られて、9階まで上がる。


「何号室?」

「911号室」


エレベーターから少し離れたところにある部屋の鍵を開けて、中に入る。

キャリーケースを適当に置いて、靴も脱いだ私達は、2人揃ってベッドにダイブした。


ボヨンとベッドに跳ね返されて、一瞬体が宙に浮く。


「15時からっていうけど、まだ12時過ぎだぜ?どうする?」

「前田さんからの品物確認してから…レストランでも行こう。2階にあるから」


ベッドに仰向けになったままそういうと、ヒョイと体を起こして部屋を見回した。

東京に行ったときに泊まったホテルとほとんど作りは同じだ。

違いがあるとすれば色合いくらいだろうか。


そんな部屋の隅に、置かれた4つのケース。

拳銃サイズの小さいものが2つと、ちょっと長いケースが2つ。

部屋に似合わない、無骨な黒いケースを見つけた私は、それを持ってベッドの上に投げる。


「中身、開けてみてよ」


そう言いながら、最後に1つ残ったケースを持ってベッドに戻り、ロックを外してパカっと開く。


中に入っていたのは、この前、前田さんが私に貸してくれた拳銃と同じ物だった。

黒い筒…消音器と、予備の弾倉がいくつか…弾薬の入った箱も入っている。


「これは…私向け見たいだけど…レン、そっちのは?」

「ん?ああ、拳銃は普段のまま…だけど、長いケースの方は…2種類ある。一つはレナに使わせろってさ。前田さんの伝言付きだ」


私が使う拳銃の入ったケースを閉じて、ベッドに上がり、レンの所まで這っていく。


ベッドにあげた3つのケースはすべて開かれており、レンが言うように、彼が使う拳銃は、2年ほど前まで私が持っていた拳銃と同型のものだった。

こちらにも、消音器と、予備の弾倉…弾…さらに、この拳銃独特の、持ち手に付けられる木製のホルスターまでセットになっている。


それから、長いケースに目を向けると…ケースの割には小ぶりなマシンガンが出てきた。

持ち手の付近に付いている小さな懐中電灯が、ちょっと特殊な事に使われていたのを示していた。


その一方…ちょっと小柄な方に、紙切れが乗っていて…前田さんの直筆で、だろうか?"レナが使うこと"と書かれている。


「使ったことは…あるから大丈夫かな…でも、レンの…そっちって使ったことないでしょ?」


私はそう言いながら、もう一方…レンが使うように用意されたライフル銃を拾い上げていった。


「こういうのって、偶にテレビに出てきたよね。中東のニュースとかでさ」


そう言って、ライフル銃を左手に持って、湾曲した弾倉を右手に持つ。


「これをさ、この…弾の先端側からくっと差し込んで…」


そう言って、弾倉を銃に差し込む。


「左側に出っ張ってるこれ、これを引けば…」


そのまま、カシャン!とレバーを引いた。


「準備完了。簡単でしょ?…この、左側のここが切り替えになってて…ここが単発。これが連射…で、ここにやると安全装置がかかる」


そこまで言うと、弾倉を取り外して、ケースの中に置いた。

弾倉に弾が入っていなかったから、別にレバーを引いて弾を出すこともしない。


「ま、何事もなければ、入用はないのだから…」


そう言って、レンの手を引っ張って起き上がる。

私の力では到底彼を起こせないから、彼の手だけが付いてきた。


「どうした?」

「レストランでも行ってみようよ。この上…12階にバイキングだって」


そういうと、彼も起き上がって…私の横。普段の定位置に収まった。


「カギは?」

「私が持ってるよ」

「行くか」


短い言葉を交わして、靴を履いて外に出る。


「しっかし、このためだけに外から人集めてるってのも凄いけど…あれか?このホテルの従業員は、この前の東京みたいに死人から出来たアンドロイド?」


廊下に出て、エレベータを待つ間。

ふとレンが言った。


「そう。榎田さん謹製のアンドロイド。ここは彼のホームグラウンドだからね。ほかの場所よりも性能は良いんだって…この前、電話越しに自慢してきたよ」

「へぇ…料理人もそうなのか?」

「エースは元一流ホテルのシェフ。脇を地方の料亭の料理長だので固めてるって」

「ヒュー…期待半分怖さ半分ってところかな」


レンが笑顔半分ながらも、複雑そうな表情で言う。

丁度、エレベーターの音が鳴って、扉が開いた。


「探せばいるんだな。レコード違反してて…そこそこ地位のある人って」

「いるいる。海外だと、昔ヒットしたミュージシャンとか、政治家とか」

「死亡説流れてそうな?」

「そうそう。そこまで人気があったり、影響力があると、人々からは忘れられずに都市伝説化するの」


エレベーターの中に2人。

何時もの調子で会話を重ねると、すぐにエレベーターは12階に到着した。


音が鳴り、扉が開くと同時に、料理の香りが立ち込めてくる。

そして、聞こえてくるのはありとあらゆる言葉。

時折日本語が混ざっているが…聞こえてくる9割の言語は外国語だった。


「自由だから、好きに料理を持ってきて…席について食べていい」

「ああ…ってレナ、お前は行かないのか?」

「席を取っとくよ。人も多いみたいだし」

「そっか、サンキュー」


そう言って、入り口でレンと別れてズラリと並んだテーブルの方に目を向ける。

森の奥深く…といっても、その中では小高い丘の上に立ったホテルの12階。

窓から見える夏の北海道の景色は素晴らしいの一言に尽きた。


…日向の展望台から見える景色には到底負けるが…


既に料理を取ってきて、思い思いのコース料理を堪能している人たちの横を通り過ぎていき、空いていた、窓際の4人席に陣取ることにする。


窓際なのだが…料理からは遠く、端っこだから、周囲にも人は多くない。


テーブルに置かれたプレートを"使用中"を表す方に変えて、椅子に座る。


偶々、遠くで目が合ったレンに手を振って位置を知らせると、ふーっと一息ついて外に目を向けた。


「ここって2人分空いてますか?」


さて、景色でも見ていよう。と思った矢先、誰かに話しかけられる。

声に反応して顔を向けると、真っ白髪の、中学生くらいの子が私の前の席に座った。


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