5話
明けましておめでとうございます。
久し振りに執筆意欲が湧いたので投稿させて頂きました。
ほんとに暇なときでいいのでひと目通してくれたらありがたいです!
シエラから愚痴を散々聞かされた次の日。
俺はギルドに足を運んだ。
いつも通りにレミィたんが受付をしているカウンターに向かうと、遠くを見つめながら溜息を吐くレミィたんの姿が目に入った。
「おはよう。どうしたん?元気ないけど」
「うん。ちょっとね」
片肘をつきながらもう一度溜息をこぼす。
こんなあからさまに元気がないレミィたんの様子を察するに、よほどのことがあったんだろう。
「悩みなら聞くよ?解決できるかどうかは別にして」
「遠慮しとくわ」
「えー。気になるなー。本当に言えなかったならいいけど、言えるんなら教えて欲しいんだけど」
「‥‥‥しつこいわね。なんでそんなに知りたがるわけ?」
レミィたんは鬱陶しそうな視線を俺に向けた。
「なんでと言われたら、やっぱり心配だから?」
「なんで疑問形なのよ。言っとくけど別に悩み事があるとかじゃないからね」
「じゃあなに?」
「‥‥‥はぁ」
レミィたんは一度冷たい視線を俺に浴びせると、折れたのか事の詳細を話し始めた。
「‥‥‥手紙が来たのよ」
「誰から?」
「ガーナンド王国現国王、ガルロ・ウルティシア・ガーナンド様からね」
「まじか。なんでレミィたん宛に王都にいる王様から手紙が送られてくるん?それ嘘でしょ?」
「嘘じゃないわよ。しっかりと王族の証で封蝋されていたから間違いないわ」
レミィたんは何度目かわからない溜息を吐いた。
「で?なんて書いてあったん?」
「この国の王様から呼び出されたの」
「なんで?」
「それについては心当たりがあるわ。でも‥‥はぁ‥‥‥」
レミィたんはより一層深い溜息を吐いた。
みるみるうちに暗くなっていくレミィたんを見て、俺は話を変えた。
「そんで?いつ行くん?」
「すぐ来るように書いてあったから、本当は今にでも出発して向かってないとまずいわね」
「え!!なんでギルドの受付なんてやってるん?」
「それが私の仕事だから」
「時と場合があるよね?王様からの呼び出しだし、行かないと罰せられるかもよ?」
ここから王都までは約四日は掛かる。
すぐに行ける距離じゃないから、もう今からにでも出発した方がいいと思うけど。
「大丈夫よ。私の魔法を使えば今すぐにでも王都に行けるわ」
「え?それって、転移魔法かなんか?」
「そうよ」
驚きだ。五年も一緒にいるがレミィたんが魔法の中でも上位に位置する転移魔法まで使えるなんて驚きだ。
「でもそれならなんで行かないの?」
「‥‥‥‥‥‥」
俺がそんなことを聞くと何故かレミィたんは不機嫌になった。
うわー、この顔不機嫌のときの表情だ。
レミィたんの地雷踏んじゃったかな?分からない。
とりあえず聞くしかない。
「い、いきなりどうしたん?怒ってる?」
「別に。ただ王都にはあまりいい記憶がないから」
レミィたんは王都に行きたくないようだ。
それでも王様の命令だし渋々ながらいくんだろうけど。
気になる。小さな町のギルドの受付嬢を王宮に呼び出す理由が。
確かに、レミィたんは魔法の才能があるから王宮で魔導師として働くぐらいの才能はあると思う。
だが今そう言った理由で王宮に呼び出すにしても突然すぎる。
じゃあ何で王宮に、しかも早急に呼び出されることになったのか。
でもまぁそんなことよりも、俺もレミィたんと一緒に王都に行きたいなー。
だってレミィたん一人で行かせるのもなんか寂しいしじゃん?俺がね?
もうとっても寂しいわけよ。
レミィたんと出会って五年間、こんなこと一度もなかったんだよ?
レミィたんだって向こうに知り合いが一人もいなくて寂しい思いをするかもしれない。
だから俺はレミィたんに同行を頼むことにしよう。
「あのさ。俺も一緒に王都に行っちゃダメかな?転移魔法って何人まで一緒に転移できるん?」
「‥‥‥転移魔法の方は心配ないけど。くるの?どうして?」
「あれだ、王都に行って話し相手ぐらいいないとレミィたんもつまんないでしょ」
「‥‥‥‥‥‥」
まぁ、レミィたんが駄目って言うのなら俺は諦めてこの町でレミィたんがいない時間を過ごそう。
あっ。忘れてたけど、どのくらいの期間王都に滞在するのか聞いてなかった。
「そう言えば、向こうには何日いるの?て言うか転移の魔法あるから向こう行って暇な時とかこっち戻ってこれたりしないん?」
「手紙には詳細なことが描かれていなかったから取り敢えず行って王様の話を聞かないと。それから転移の件だけど、一度王都に行ったらこっちに戻ってこれないわよ」
戻ってこれないのか。
まぁ、転移するのにも厳しい条件が色々あるってことかな。
でもそれよりも問題なのが向こうでの滞在日数が分からないことだ。
レミィたんは向こうからの呼び出しだから何日王都に居ようと大丈夫だろうけど、俺はそうじゃない。
多分向こうで宿かなんかとるんだろう。
そうすると問題なのが俺の懐事情である。
オークを倒した時に貰った金はもう底が見え始めている。
まぁ、俺は冒険者だから金の件は向こうのギルドで依頼をこなしてやりくりするしかないな。
「それで?俺も行っていいかな?」
「‥‥‥来れば」
レミィたんはプイッと横を向いて言った。
なんとも可愛らしい。
「そんじゃいつ行く?」
「受付の当番が終わったらね。多分もうそろそろ終わると思うわ」
「じゃあ、ここでレミィたんが終わるのを待とうかな」
「邪魔よ。どっか言ってなさい」
「冷たい!!酷いよレミィたん」
「別に普段通りよ」
「そんなバカな」
俺はガクッと項垂れた。
でもまぁレミィたんの邪魔しちゃ悪いし、ギルドについている酒場で適当に時間を潰してるか。
そう思い俺はレミィたんに「そこの席で待ってるよ」と指差しその席に向かった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
レミィ視点。
フドルが席につくのを見届けた私は、肩を誰かに叩かれたので後ろを振り返った。
「レミィあんた、嬉しそうよね〜。彼の同行そんなに嬉しかった?」
ニヤニヤとからかうように言うのは私の同僚のナーサだ。
「聞いてたの?」
「聞いてたわよ〜。バッチリとね」
ナーサはピースサインを此方に向けてくる。
「なんで聞いてるのよ」
「だって彼に王都に呼ばれた事話してたでしょう?」
「‥‥‥そうね」
「私達ギルドの関係者なんかは事情を察してるけど、貴方が王国との繋がりがあるって知られたくないから、他言無用という話じゃなかったけ?」
ナーサは『なんで彼に言ったの?』とキラキラした瞳で詰め寄ってくる。
それが鬱陶しかったので私はナーサを少し遠ざける。
「別に彼は言いふらしたりしないし。言っても問題ないわ」
「信頼してるんだね〜」
「‥‥‥‥‥‥そうね」
私は彼の後ろ姿を見て言った。
そして他愛もない会話をした後、ナーサは自分の持ち場に帰って言った。
その後私は時々来る冒険者の人達の案内をし、頃合いをみて受付の仕事を他の子に任せて彼のもとに向かった。
「お待たせ。もう大丈夫よ。行きましょう」
「あっ、レミィたん終わったん?じゃあ行こうか」
「えぇ、そうね。じゃあ人気がない場所に行きましょうか」
私は彼に言ってギルドから出る。
何故人目を気にするかと言うと、私が使う転移魔法と言うのは世間一般では王国に数人使える者がいるかどうかのとても珍しい魔法の為、人前で使ったら騒ぎになるのは間違いない。
彼もそのことを察したのか、私の提案に『そうだね』とギルドから出ようとする私に続いた。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
感想お待ちしております!!
一言でも感想を頂ければ執筆の糧になります!
是非ともよろしくお願いします!