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Fランクの冒険者をやっています  作者: tomaburo
王国編
3/5

3話

オーク。


その言葉を聞いて皆が思い浮かべるのは、豚顔に俺みたいな体型を思い浮かべるだろう。


だが実を言うとオークは二種類存在する。

その内の一種類は皆さんご存知の豚顏オーク。

もう一種類は猪の顔をしたオークだ。

体型は変わらず、豚顏オークと顔の部分しか外見が変わらないが、気性の荒さはこの猪顏オークが断然やばい。


猪突猛進サイコーだぜぇぇ。

と言った感じで、取り敢えず動く物に対して過剰に反応する。

オーク仲間の豚顏オークに対しても見つけたら容赦なく突進していく。

戦闘するなら豚顏オークの方がいいな。


だって猪顏オークと比べれば、それはもう温厚で自分のテリトリーに入らなければ決して攻撃してくる事はない。

猪顏オークより冒険者に優しいオークだ。


そんで?

俺は依頼でオークの討伐に来た訳だが、緊急事態が発生した。

それは、はぐれオークがどっちの方か解らないと言う事だ。

豚顏の方なのか猪顏の方なのか、依頼用紙を見る限りそれが明確に記載されていない。


まぁ、どんだけ気性が荒いと言ってもEランクの冒険者が倒せるほどの雑魚なので、危険視されてないってのは分かるが、それでも情報は明確にしてほしい。


Fランクにとってオークとは強敵そのものだ。

オークにあの怪力で振るわれた一撃は確実に俺を戦闘不能にまで持ち込めるし、追いかけられたら速さで負ける。


だからあらかじめ対策をして戦闘に備えておきたかったが、どっちか分からないと対策のしようがない。

何故なら豚顏オークと猪顏オークじゃ完全に対応が異なるからだ。

だから事前にどっちか知りたかった。


なのにその情報が欠けているのはとても致命的だろ。

オークとは戦った事はないがEランクの冒険者やDランクの冒険者が戦ってる所を何回も見た事がある。


だからさっきも言った様に対策はできる。

だけど猪顏なのか豚顏なのか、その情報が分からないとなると行き当たりばったりではとても不安だ。

と言うかオークとは初戦闘だ。


瞬時に判断する事なんてできる訳ない。

そう言う事なんで此処は慎重に行くしかな

い。


俺は周りに注意を払いながら、はぐれオークを探すが一向に現れない。

もしかしたら、そこらへんの冒険者が倒しちゃったのかもしれないな。

それか深傷を負ってた様だし、その辺で力尽きてるかもな。


あとはぐれオークが豚顏の方だった場合、猪顏オークにやられてるかもな。


でもはぐれオークが猪顏の方だった場合それはないな。

あいつら他の奴等には猪突猛進スタイル決め込むくせに、猪顏同士の場合攻撃はしない。

そこら辺は仲間意識があるのか、変わった奴等だ。

まぁ、取り敢えず出てこないならこんな危ない所に居ても意味ないし帰ろうかな。


俺はそう思ったが。

ちょっと待ってくれ。

近くでなんか音がする。


耳を澄ませるといびきのような音がする。

俺はこの時点でもう察したぞ。

俺は音のしている方を見ると、音が聞こえる場所には丁度木が立っている。

その木の下。

恐る恐る近づくといた。


俺が出くわしたくなかった方の奴だ。

そいつは木の下で気持ちそうに寝てやがる。

戦闘で疲れたのかな?


俺は腰にある愛用している剣に手をかける。

剣を抜き取ると大きく振りかぶって、躊躇なく振り下ろした。


「不意打ち上等じゃコラァァアアア!!!」


声と一緒に剣を持つ両腕に力を込めて、確実に猪顏オークに剣を突き刺した。


決まったぜ。

悪く思うなよ。

これも生きて行くために必要な事だ。


愛剣を鞘に収めて、初めてのオークの討伐を達成した事に嬉しさが込み上げてくる俺。

さぁ、帰ってレミィたんに報告だ!


「グルルルゥゥゥ――」


ん??

お腹が鳴ったのかな?

それにしては音に力があると言うか、殺気が籠っていると言うか。


冷や汗が一つ落ちる。

元から汗は掻きやすい方だが今日は比較的涼しいし、それに今の今まで汗なんて一つも掻いてなかったし。


まじか。

確実に刺さった筈だよね?

死んだのは確認してないけど確実に仕留めたと思ったんだけどなぁ。

ゴブリンやスライムならこの一撃でかなり痛手を負わせる事ができるって――――


そうだよな。

オークだもんな。

俺のこの貧弱な一撃で屠るとか無理に決まってんじゃん。

はぁ、結構弱ってたからなんか勘違いしちゃたよまったく。


死の危険をビンビンに感じる背後を覚悟を決めて振り向くと、近くに立て掛けてある武器を片手で持ち、イラついているのか元からなのか鼻息が荒い猪顏オークが血走った目を俺に向けている。


はぁ、武器とか奪っとけばよかったな。

なんでオークが装備している鎧剣を刺したのか謎だ。

頭とか首とか、生身が剥き出しの所を狙えば倒せてただろう。


俺刺した方をチラリと見ると、確かに血は流れているが他の傷と比べると明らかに浅い。

屠るには力が明らかに足りないと分かった。


全力だったのになぁ。

まぁ、そう言う訳なんで、これはもう取り敢えず逃げるしかないよね?


逃走経路を確認し、ストレッチを始める。

足首のストレッチオーケー。

膝を曲げてっと、よし、準備完了。


俺は猪顏オークと睨み合いそして――――


ダッシュ!!!!


ヤバイヤバイヤバイ。

逃げないと殺されるぅ。

当たり前だろ?

不意打ちであれだぞ?

勝てる訳ないし。

なら、逃げるしかねぇだろう?


俺は全速力で森を突き抜ける。

偶に後ろをチラッと振り向くと、武器を引きずりながらも確実に俺に追いついてくるオークの姿が見えた。


持って(俺の足が)どのくらいだろうか。

走って数分も持たずして、俺の足は限界に近づいていた。

息も荒くなり、汗もいっぱい出てきた。

このままじゃマズイな。


俺は今にも攣りそうになる足を我慢して、ある場所を探し求めて夢中で走った。

その中で俺はある作戦を思いついた。


「い、いたぞ!」


俺が目指したのは豚顏オークのテリトリー。

理由は簡単で、此奴らは猪顏オークよりは大人しいが縄張り意識が高い。

その為、異物が縄張りに入って来るとすぐに襲い掛かって来る。


それを逆手にとって、この猪顏オークを豚顏オークの方に倒してもらおうじゃないか。

それをさっき思いついた。


だが欠点が一つ。

俺もその異物の内に入っていると言う事だ。

何か策を考えないと、俺の背後を追ってきている傷だらけの猪顏オークちゃんと仲良くボコされて終わり、と言う最悪なパターンになってしまう。


そうこう考えているうちに、豚顏オークのテリトリーに入っていた俺と猪顏。

豚顏オークが四、五体こちらの方を向いてそして追ってくる。


もうとっくに足は限界だ。

とても焦ってます。

俺死ぬの?

死ぬのかなぁ。


そんな時だった。

後ろばっかり見てたせいで目の前の斜面が急になってるのに気付かなかった。






あ、死んだ。









俺が最後に思い浮かべたのはそんな言葉だった。








どれくらいの時間が経過したのか、俺は頭に走る痛みをこらえながら体を起こす。


体のあらゆる場所が痛い。

気分は最悪で、頭の痛みに加え吐き気が物凄くする。

それこそ、今にも中の物をぶちまけそうになるほどに。


とりあえず、近くの木を支えにして起き上がった。

その際に足に右足に激痛を感じて、思わずよろける。

ドサリと地面に倒れ、このまま街まで戻れるのか不安になってきた。


すると、この最悪な気分を絶好調に変えてくれる物が近くに転がっているのに気が付いた。


「やったぜ」


転がっていたのは猪顏オーク含め6体のオーク。

どうやら俺と一緒に急斜面を転がり落ちたようだ。


はい、という訳で今度こそ依頼達成。

まさか達成できるとは思わなかった。

本当はチラッと見て無理そうだったらそおっと帰ってくるつもりだったんだけど。

達成できちゃった。


俺は近くにあった木の枝を杖の代わりにして、痛む足を引きづりながらギルドに向かった。




◆◇◆◇◆◇



「という訳で、ほい」


俺はなんとかギルドまで自力で来ると、さっそくレミィたんに依頼を達成した証拠を見せるべくギルドカードを渡した。


「‥‥‥やればできるじゃない。弱体化してたとはいえ、オークをFランクの貴方が倒すなんて凄いことよ」


カードを受け取ったレミィたんは内容を確認すると少し驚いていた。


「だろー。レミィたんに見せてやりたかったなー、俺の勇姿」


その後俺は身振り手振りであの時の状況を若干の美化を加えて話した。

そのぐらい俺は興奮している。


だってこの五年間で初めてオークを倒したんだぜ。

弱体化してるって言ってもオークはオーク。

俺にとっては弱体化してても、確実に強敵だった。


確実にあの運がなかったら倒せてないかもしれない。

だけどほら、運も実力の内っていうだろう?


結果論を後で語って偉そうにするなと思う奴もいるかもしれないが許してくれ。


今は、余韻に浸りたい。


「レミィたん。お祝いしよう。お祝い」

「全く、大袈裟ね。でもそうね、貴方にとってオークを倒すという事は、ギルドの中なのに周りを気にせずに語ってしまうぐらい嬉しい事なんでしょうね」

「あ、」


俺は周囲を見渡した。

冒険者の皆さんが奇妙な物を見るような目でこちらを見ている。


それもそうだ、百キロの巨体が大声で何かを言ってると思えば何かの攻撃を避ける動作をしている。


はたから見れば明らかにおかしい人だ。


「ご、ごほん。そんでお祝いどうしようか」

「切り替え早いわね。そうね」


レミィたんは顎に手を当て考える。

少し経って、落ちていた目線が俺の目を捉えるとレミィたんは言った。


「貴方の行きつけの酒場に行きましょう。私が好きなもの奢ってあげるわ」

「まじで?やった。でも、女の子になんか奢らせるっていうのもなんだか気がひける感じがするなぁ」

「女の子、じゃなくて女性ね」

「え?あぁ、うん。そうだね女性だね。でも、敏感すぎない?」

「何が?」


おっと危ない。

目が本気だ。

これ以上何か余計なことを言ったら俺の体で祝杯を挙げられそうなのでここは話を元に戻そう。


「まぁ、レミィたんもギルドの仕事で忙しいし、本当に暇なときでいいからね祝うの」

「できるだけ近いうちがいいわね。時間が合いそうなとき私から言うわ」

「それじゃ俺は依頼も達成したわけだし帰るとするよ」

「そう。それじゃあね」


じゃあ、と手を振り俺はギルドを後にしようとする。でも何故だろう。レミィたんと話し始めてから妙に足が痛い。

どうしてだろう。


思い出した。


そうだ怪我してたんだ。あまりにも長い間激痛に耐えながら此処まで来たから感覚が麻痺してたのかもしれない。

やばい。痛みを意識したせいで凄く痛い。もう駄目かもしれない。


気が付いたら俺はその場に倒れていた。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

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