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ヘタレ勇者が妄想する武勇伝Ⅱ

 色々な意味で不幸な出来事は、その出会いから始まった。


 相手はこのあたりを巡回する冒険者と名乗る人間種だけで構成されたチームだった。


 もちろん、こいつらと俺たちが戦闘をする理由などない。


 いや、ないはずだった。


 だから、チームのリーダーである俺が、いつものように人柄にふさわしい丁寧な口調で自分たちはただの旅人だと彼らを説明したわけなのだが、どういうわけか彼らは聞く耳を持とうとしなかった。


 だが、その理由はすぐにあきらかになる。


「お前たちが盗賊団でないというのなら、武器をすべて捨てろ」


 むろん、それは無礼なことではあるが、ここは穏便に済ませるために従おうと俺たちは武器を捨てた。


 これですべてが解決するはずだった。


 だが、それだけでは済まなかったのだ。


「まだ武器を持っているかもしれない。全部脱げ」


「はっ?」


「聞こえなかったのか、服を全部脱げと言ったのだ」


「まあ、男の裸など見たくないからお前はいいぞ。女たち、早くしろ」


「全部に脱いだら、俺たちの前に並べ。全員でじっくり調べてやる」


 なるほど、そういうことか。


 冒険者などといっても所詮この程度なのかと、俺はため息をついた後にこう言った。


「一応聞いておくが、冒険者と言うからにはランクがあるのだろう。ちなみにお前たちはどのランクになるのだ」


「もちろん最上級クラスに決まっているだろう。そして聞いて驚くなよ。こっちにおられるお方が大陸中にその名前が轟いている大魔法使いフヤ様だ」


 剣士らしき男がニヤリと笑って紹介した老人は、いやらしい目で舐めまわすように女性陣を眺めている。


 おそらく、この爺さんの頭の中ではまみたち全員がすでに全裸になっているのだろう。


 仕方がない。


 このままこいつらの言う通りにしていたら、まみたちがどうなるかわからない。


 やるしかないと覚悟を決めた俺は口を開いた。


「悪いな。俺はそこの色ボケ爺さんの顔も名前も知らない」


「なんだと」


「だが、大魔法使いなどと名乗る不逞の輩の顔は知っている。いや、実は今知ったのだがな」


「貴様、フヤ様を愚弄するのか」


「愚弄?別に愚弄したわけではない。ただ事実を述べただけだ」


「貴様、どうやら死にたいようだな」


「その言葉、そっくり返してやる」


 こうしてその戦闘が始まった。


 まず、俺の武器を抱えてぼんやりと立っていた男を倒して武器を取り返す。


 剣をしっかり握りながら、俺は六人の相手をざっと眺めた。


 たしかにフヤと名乗る魔法使いはそれなりの力があるようであるが、残りの五人は単なる取り巻きなのかたいしたことはなさそうであった。


 だが、そこに俺に油断があった。


 そのなかのひとりは盗賊スキルに長けていたのだ。


 俺が老人を倒そうと剣を構えた瞬間に、まみの悲鳴が上がる。


 振り返った俺は怒り狂いそうになった。


「……橘さん、助けてください」


 まみの背後に回った男は、すでにまみのビキニアーマーを毟り取って胸を露わにしており、男の掌の中でまみのそれほど大きくない胸が何度も形を変えていた。


「許さん」


 それまでは軽いお仕置き程度で済まそうと思っていた俺だったが、二度とこのようなことができないようにすることにした。


 それからは一瞬だった。


 まず老人が持つ杖を剣で切り落とし、そのまま刀の峰を枯れた体に打ち込んで昏倒させると、続いてまみを辱めていた男の頭にはそれに見合う強烈な一撃を与えた。


「橘さん、ありがとうございます」


 そう言いながら涙ぐむまみの介抱は恵理子先生に頼むと、残りの男たちにも次々に正義の鉄槌を与えた。


 段違いの力の差がある以上、始まってしまえば、あっという間である。


 気絶している全員は春香と麻里奈が縛り上げた。


「恭平、こいつらを殺さなくてもいいの?」


「ああ」


 そうは言ったものの、愛するまみにあのような辱めを与えた男たちを許したわけではない。


「こいつらの武器などを没収して、ここにこのまま放置して、あとはここの神様に任せることにする。運があれば助かるだろう」


 だが、来るのは徘徊する魔物たちであり、そうなれば襲われて助かることはないだろう。


 それであれば、自らの手でとどめを刺しても良さそうなものだが、たとえ悪人であろうが、まみに人が殺される様を見せたくなかったのだ。


「……橘さん、ありがとうございます」


 どうやら、まみは俺の気持ちを察したようだった。


「俺こそ済まん。おれが油断したばかりにまみをひどい目に遭わせた」


「だいじょうぶです」


「これからは、まみを今まで以上にしっかり守っていくぞ」


「はい」


 こうして、また少し俺とまみの信頼の絆は深まっていくのだ。


「恭平君、恭平君。目を覚ましてください」


 それは博子の声だった。


「やつらはどうした?」


「やつらというのは魔導士さんたちですか?それなら、そこに縛られています」


 北高の制服であるセーラー服姿のエセ文学少女ヒロリンこと立花博子が指さす方向に目をやると、六人の男たちが縛り上げられている。


「まみは大丈夫か?」


「まみたんですか?う~ん、あまり大丈夫ではないです」


「そうか、ビキニアーマーをはぎ取られて裸を見られたうえに、人前で胸を揉まれれば、たしかにショックも大きいな」


「はぁ?」


 実に間の抜けた声だった。


「恭平君、ビキニアーマーって何ですか?そもそも、まみたんは裸にもされていませんし、胸も揉まれていません。そこのお爺さんにスカート捲りをされただけです。魔法で」


「はぁ?」


 今度は俺が博子に負けない間の抜けた声を上げる番だった。


「いやいや、そんな……そういえば、お前も何でセーラー服を着ている?ビキニアーマーはどうした」


「だから、何ですか。ビキニアーマーというのは。あ~わかりました。そういうことですね。まりんさん、恭平君がまたおもしろい話をしています」


 その後どうなったかと言えば、まあいつものとおりであり、俺は女性五人に囲まれていた。


 こちらもいつものように正座をさせられているわけである。


 その中にはもちろんまみもいるのだが、彼女が纏っているものも、北高の制服であるセーラー服であり、当然ビキニアーマーなどではない。


「恭平、まず私たちが、なぜいかがわしいビキニアーマーとやらを身につけなければならないのかを説明してよ」


 もちろん、すでに麻里奈から三発、春香からは七発お仕置きをいただいていた俺の記憶はもうすっかりクリアになっている。


 当然、この状況で麻里奈の質問に素直に応えるわけにはいかない。


「どうも記憶が鮮明ではなくてイダッ」


 俺が誤魔化しているのがわかったのか、再びの一発である。


 そして、ここから怒涛の連続攻撃、いや口撃です。


「どうせ、また夢の中でまみたんのオッパイを揉んでいたのですよ。きっと」


「……橘さん。ひどいです」


「まったく、この変態の妄想力には恐れ入るな」


「本当だね」


「……なあ、麻里奈。もう許してくれ」


「反省もしてないのに、許すわけがないでしょうが」


「まりん、いっそのこと、こいつを爺さんたちと一緒にここに放置していかないか」


「そうしたいのは山々だけど、そうなると荷物持ちがいなくなるかね。恭平、荷物持ちをしっかりできる?」


 俺に選択の余地などない。


 許してもらうためにやることなどひとつしかないのだ。


「もちろん、完璧にやれる。やらせてください。お願いします」




 最後に実際起ことを簡単に説明しておこう。


 俺たちと冒険者たちが鉢合わせをしたところまでは、俺の先ほどの夢のとおりである。


 だが、そこからが違う。


「我々はこのあたりを巡回している魔導士フヤ様率いる冒険者チームである。異様な風体のお前たちはいったい何者だ」


「私たちは北高創作料理研究会よ。それよりも、私たちはお腹が空いているの。あんたたち、何か食べるものを寄こしなさい」


 異世界では絶対見ることがないセーラー服姿の少女五人と、それ以上に場違いな「かみむらえりこ にじゅうよんさい ばすとなななじゅうよんせんち えーかっぷ」と書かれた小学生用の紺色のスクール水着を着用したおばさん教師という顔ぶれである俺たちを怪しまない方こそがおかしいわけで、当然すぎる詰問を始める冒険者たちに、彼らの質問を無視して、麻里奈がいつものように人にものを頼んでいるとはとても思えない命令するような口調で何かを要求をすれば、穏便に済むことも穏便に済まなくなるのは当然である。


「お前たちを盗賊と認定した。戦闘が始まればお前たちは助からん。最後の勧告だ。とりあえず女たちはいい。お前、武器を捨てて、身につけているものをすべて取れ」


 彼らがそう言って指さしたのは俺だった。


「俺?」


「そう、お前だ。早くしろ」


 考えてみれば、彼らがそう言うのもわかる。


 見た目だけでいえば、戦闘に向いていそうなのはたしかに俺だけだ。


「……わかった。助けてくれ。全部脱げばいいのだな」


 まみの前で全裸になるなど御免被りたいが、背に腹は代えられない。


 俺は要求に応じて甲冑をもたもたと脱ぎ始めたのだが、交渉事に負けるのが大嫌いな麻里奈がこれに納得するはずがない。


「あんた、こんなところで全裸になるなんて、どこまで変態なの」


「仕方ないだろう。死にたくないなら脱げと言われているわけで、全裸になって助かるならいくらでもグワッ」 


 麻里奈の一撃で俺は気絶し、このあとに何が起ったのかはわからない。


 遠くなる記憶のなかで、このような会話が聞こえた気がした。


「私たちにケンカ売った罰として、食べ物を全部出しなさい。それから土下座して泣いて頼んだら許してあげてもいいわよ」


「ふざけるな。戦闘開始……」


 本物の大魔術師であるエセ文学少女ヒロリンこと立花博子と、破壊力抜群のハリセンの使い手である自称お嬢様で、元の世界では「創作料理研究会の歩く銀行」と呼ばれていた凶暴な馬場春香がいる以上、その結果は火を見るよりも明らかだったのだが、どうやら、その過程で魔法使いの爺さんが、まみのスカートも捲り上げパンツを見る大罪を犯したらしい。


 なるほど、それでまみが不機嫌なのか。


 しかも、ついでに春香のパンツも見たとは、なんとも剛毅な爺さんである。


 というか、俺が気を失っていた時に、そのような美味しい場面があったとは実にけしからん。


「なあ、春香。聞きたいことがある」


「どうした、橘」


「お前のパンツなどどうでもいいのだが、とりあえずまみのパンツ何色だった?」


俺のこの愚かな質問に対して返ってきたのは、拳だったのは言うまでもない。



これは「小野寺麻里奈は全校男子の敵である」の番外編「小野寺麻里奈が異世界にやってきた」のさらにスピンオフ作品になります。

キャラクターの性格や立ち位置等は本編や番外編に準じていますが、主人公はタイトルどおり麻里奈から恭平となっています。


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