ヘタレ勇者が妄想する恋愛シミュレーションⅡ
俺は、勇者橘恭平。
異世界に来てからわずかの間に大活躍をしたことにより、今や俺の名前はその功績とともに大陸中に知れ渡っている。
しかも、勇猛さだけでなく、自分で言うのも何だが見栄えのよい外見と、その社交性、そして男らしく優しいうえに高潔で、その大きな人間的な器の大きさもあり、将来の国王になってもらいたいという声さえある。
当然、俺はどこに行っても女性からの黄色い声に包まれる。
モテるのである。
実力があるうえに非の打ち所がない人格なのだから、当然ではあるが。
それは、一緒に旅をしている旧創作料理研究会関係者も例外ではない。
その気になれば、歴史に残るハーレムを形成することだって可能である。
だが、人格者である俺は、女性に対しても、いつも通り高潔さを保っているわけなのだが、たったひとり例外がいる。
馬場春香だ。
春香は、少年といってもいいくらいに、外見の髪の毛をかなり短く刈り揃えている。
そして、かわいい。
だが、その外見に騙されてはいけない。
春香の最大の特徴。
それは、お仕置きされることが大好きなことだ。
昼夜を問わず、何かあるごとに、場所をわきまえず全裸になって俺にお仕置きすることを要求する。
もちろん、厳しければ厳しいほど春香は泣いて喜ぶ。
そう、春香は他人に裸を見せる露出狂なうえに、肉体的な痛みに悦びを感じる驚くべき変態なのである。
だから、俺は彼女の望みを叶えるために、毎日のように様々な方法で彼女をお仕置きする。
言っておくが、俺は、他人にお仕置きをして苦しむ様子を見て喜ぶなどという趣味はない。
趣味はないし、春香本人が望んだこととはいえ、そのようなことをおこなった以上俺には責任がある。
たとえまったく胸のない幼児体形の春香など、俺の好みでなくてもだ。
まあこの辺が、俺の高潔なところなのだろう。
ということで、おそらく、少し先のことになるだろうが、将来俺が王になったときに、王妃となるのは馬場春香以外にないことを心の中で宣言しておくことにしよう。
私は馬場春香。
橘のバカが小学生の妹のパンツを覗く、そして被る、さらに妹のパンツを被って交番の前で全裸になるなど数々のおぞましい変態行為をおこなったためにもらった天罰の道ずれとなって、異世界に飛ばされた。
まったく忌々しいかぎりである。
はっきり言おう。
私は橘が大嫌いだ。
理由?
まずこいつはかなりの変態だ。
なにしろ、こいつは小学生の妹のスカートの中を覗くために自宅の玄関に転がり、帰ってきた妹に顔を踏まれながら全裸で眺める妹のパンツが最高と思っている。
そんなやつを私が好きになる理由などない。
もちろん、それ以外にも私がこいつを嫌う理由はある。
まずはバカであること。
高校での成績も、創作料理研究会で最下位であるが、学力以上に常識がない。
もちろん応用力もなければ機転もきかず、こいつの頭は、私とまりんに叩かれるためのみ存在しているようなものだ。
さらに、人間としての器が非常に小さく、小物臭い言動、勇気もなければ意気地も羞恥心ないという生きる価値がない腐った根性の持ち主なのだ。
まだある。
守銭奴教師として有名な恵理子先生に勝るとも劣らないくらいに、金に汚くケチであること。
こいつには、まだまだ数えきれない欠点があるが、それでも、戦闘時に大活躍をするなら多少は我慢もできる。
だが、こいつは誇れるのは、異世界転移の特典でついてきた高そうな甲冑と剣だけで、それも実戦ではその立派な武具もまったく使いこなせず、まさに宝の持ち腐れ状態である。
案の定、こいつは戦いになるとまったく役に立たず、悲鳴を上げて逃げ回るばかりで、私たちだけでなく、敵からも嘲笑されながら最後には殺されるのだ。
そのくせ、分配交渉になると「男女平等」を主張する。
私は望む。
次回こいつが死んだときには、復活の呪文を唱えないでもらいたい。
一応ネタバレ的な説明をしておけば、Aパートは妄想編、Bパートは現実編という形で進行していきます。
これは「小野寺麻里奈は全校男子の敵である」の番外編「小野寺麻里奈が異世界にやってきた」のさらにスピンオフ作品になります。
キャラクターの性格や立ち位置等は本編や番外編に準じていますが、主人公はタイトルどおり麻里奈から恭平となっています。