ヘタレ勇者が妄想する古代都市クエスト その2
さて、その夜のことである。
俺は物音で目が覚めた。
あきらかに何かを探す音である。
俺は剣に手を掛けた。
「誰だ。勇者恭平の前で盗みを働くとはいい度胸だな」
「あれ、恭平君?」
盗人の正体はポンコツ魔法使いだった。
「何をしている?」
「う~ん、お腹が空いたので何か食べるものがないか探していました」
これである。
昼間の探索時にまったく役に立たず、そのくせ夕食時には人一倍食べて、さらに真夜中にひとりだけコッソリとおやつを食べようとするこの浅ましさ。
まったくうんざりするが、これでも一緒に異世界に飛ばされた仲間である。
見捨てるわけにはいかない。
「この袋に入っている俺の分を食べろ」
「ありがとう、恭平君。これで安心して寝られます。実はお腹が空いていたのでよく寝られなかったのです」
「ああ、そうか。それはよかった」
だが、心の声は違う。
……お前が寝られないのは、空腹だけでなく、昼間に散々寝ていたからだろう。まったく役に立たない魔法使いだ。たまにはアイテムのひとつくらい見つけてみろ。
俺のその声が届いたのか、ポンコツ魔法使いはポツリと呟いた。
「そういえば、食べ物を探しているときにこんなものを見つけました」
「ん?」
「食べ物ではないですけど、まあ面白い形なので捨てずにとっておきました。これです」
博子がポケットから取り出したのはなにやら文字が書かれた凹型の石だった。
「何でしょうか?」
「わからない。現在使用されている文字とは違うな」
語学堪能な俺は、この世界で使用されている言葉にも通じているが、その俺でも初めて見るその文字を読むことはできなかった。
「まあ、持ち帰って調べてもらおう。とりあえず預かっておいていいか」
「はい」
「あれ、ヒロリンも何か見つけたの?」
声をかけてきたのは俺たちの声に目が覚めたらしい麻里奈だった。
「私も見つけた。ダハシュールに戻ったら売りに行こうと思って取っておいた」
こっちはこっちで相変わらずである。
いかにもずる賢い麻里奈と言わざるを得ない所業である。
色々言いたいことはあるが、それを口に出さないところが、博愛主義者である俺のいけないところなのだろう。
「まあいい。返すから、見せてみろ」
「うん。これだよ」
先ほどと同じ見慣れぬ文字が書かれた凸型の石だった。
「ん?これは……」
俺は直感した。
ポンコツ魔術師が先ほど食べ物を漁っている最中に偶然見つけたものと、麻里奈が発見しコッソリ隠し持っていたものは一対であることを。
「これは本来ひとつであったものだ」
「割れたということ?」
「いや、意図的に割ったようだな。もしかしたらマジックアイテムかもしれない。合わせると何か効果が得られるのかもしれないな」
そう言ってはみたものの、実は俺自身その言葉をそれほど信じてはおらず、まして大きな効果があるなどとは思いもよらなかった。
「じゃあ、試してみようよ」
「そうだな、少し離れていろ」
だから、慎重な俺には珍しく短絡的な麻里奈言葉に乗ったのだ。
二人を遠ざけてから、俺はふたつの石をひとつにした。
そして、それは起きてしまった。
これは「小野寺麻里奈は全校男子の敵である」の番外編「小野寺麻里奈が異世界にやってきた」のさらにスピンオフ作品になります。
キャラクターの性格や立ち位置等は本編や番外編に準じていますが、主人公はタイトルどおり麻里奈から恭平となっています。




