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気さくな侯爵令嬢は恋をする。  作者: 三条夜実
一期生編
11/12

猛勉強の日々。



翌日から私は特に歴史の勉強を重点的に行った。

予習も復習も欠かさない。欠かしたら全て忘れてしまいそうだから。


私は寝る時間を惜しんで勉強し続けた。


「絶対満点取ってやるわ……!」


夜遅くまで勉強していると、睡魔が襲ってくる。時折意識が遠のくけど、頬を叩いて奮い立たせる。


「しっかりしなさい!クーデリア!」


私は勉強を続けた。


授業中眠くなることもよくある。でも、自業自得。必死に寝ないようにありとあらゆる方法を試しては眠気を覚ましていた。


休みの日も勉強を続け、ルルが心配するくらいに。


そんな日々が続き、二週間。私は熱を出して欠席することになった。


***


「もう、しっかり休まないから」


ルルが少し怒ったような口で言った。


「わかってる………」


症状は倦怠感と熱だけ。恐らくしばらく休めば治るだろう。幸いにも今日は歴史がない。


「今日は午前中で終わるし、お昼ご飯は私が作る!それまで寝ててね?」


「は、はーい……」


と、ルルはそのまま登校していった。


「…………」


静かだ。ルルがいないと寂しい。薬のせいで眠いし、私はこのまま寝よう。


***


夢を見ている。

どこか広い部屋で私は寝込んでいる。夢の中でも寝込んでいるなんて、と思った。

ノックと共に入ってきたのは、黒髪の人。私が起き上がろうとすると、支えてくれる。


「…………すまない」


謝られてしまった。なぜだろう。


すると私はこう答えた。


「いいのよ、この子が元気な証拠だもの……」


お腹を撫でながら答えた。


また私の中に眠る魔力が未来を見せている。


靄がかかり、夢は終わっていく。待って、せめてどんな顔をしているのかを見たいのに………。




「…ちゃん、クーデリアちゃん!」


「……………んん?」


ルルの顔が見えた。昼まで寝ていたのか。


「なんか……また、あなたは誰?って言ってたよ?あ、ご飯出来たよ」


「あ、ありがとう……」


ルルが持っているのはスープ。美味しそう。


私はスープを受け取り、口に運んだ。


「………………美味しい」


「良かったぁ。初めて作ったから不安で……」


人参やジャガイモが入っていて美味しい。スープ自体は薄味で病人の私には丁度いい。


食べ終わった後、薬を飲んだ。効果でまた眠くなり寝た。



***


翌朝、熱も下がったので授業に出席出来る。


「クーデリアちゃん、大丈夫なの?」


「ええ、おかげでもう」


「でも今日は午後まであるよ?本当に大丈夫?」


「大丈夫よ。薬飲んでいくから」


「無理そうだったら早退するんだよ?」


「わかってるわ」


***


午前中は良かった、のだけれど。


「ああ〜………もう限界………」


「大丈夫?すごいしんどそう……」


正直しんどい。身体がだるい。休んでいた昨日のノートはルイが取っていてくれたらしく、紙片を渡された。本当に感謝しかない。


「……………薬飲んで頑張るわ……」


あと二つ授業がある。国語と地理。教室は同じだから移動する必要もなく、負担は軽い。


「でも顔色悪いよ?本当に早退した方が……」


ルルは心配してくれている。でもこれ以上迷惑をかけるわけにはいかない。


「午後の授業も出るわ。分からなくなったら大変だもの」


身体はだるいけれど、出席しなければ成績に響いてくる。休むわけにはいかないのだ。


「………分かったよ。無理はしないこと、クーデリアちゃん、分かった?」


「わかってるわ」


無理をしたらお説教だからね、とルルが言った。



***


授業がすべて終わる頃には、私は生きる屍となっていた。


「がんばった………」


頭をフル回転させて臨んだ授業は、いつもより疲れた。


早く部屋に戻って休もう。そう思い、立ち上がった。


「あっ……」


急に立ったのが悪かったのか、私はふらついて倒れそうになる。


「っとと……大丈夫か?」


まだ残っていたルイが支えてくれた。


「ええ……ありがとう」


「病み上がりなのだろう。無茶だけはしないでくれ」


労ってくれた。ルイは優しいなぁ。


「良ければ部屋まで支えるが?」


「いいの?」


「お前が良ければ、だがな」


男女間で寮の部屋の行き来は定められていない。夜は別だが。


「……じゃあ、お願いするわ」


ルイに部屋まで支えてもらうことになった。


***



「ここか?」


「ええ、ここよ。ありがとう」


付き添ってもらい、部屋まで来た。


ドアを開けるとルルがいて、ちょっとびっくりした様子だった。


「クーデリアちゃんにルイさん!?どうしたんですか!?」


「いや、クーデリアがふらついたのでな。部屋まで送ろうと思った」


「それは……ありがとうございました」


「では、俺はこれで」


「ルイ、ありがとう」


「ああ」


ふっと微笑んで、そのまま去っていった。



「…………クーデリアちゃん、やっぱり早退した方が良かったんじゃない?」


「…………いいえ、早退はしないって決めてるから」


「また……強情なんだから」



私はベッドに座った。ところであることに気づく。


「ルル、さっきまで練習してたの?」


ルルの手には楽譜。歌の練習でもしていたのだろうか。


「うん、学院祭が近いし」


「ああ!学院祭!忘れてたわ」


ローザリア学院の学院祭。生徒の父兄も見に来る。他にも音楽家や声楽家も見に来て盛大なものになる。ちなみに中間テストの後にある。今、まさに音楽科は練習真っ只中らしい。


「声楽とオーケストラは別々だから。普通科は特にないんだよね?」


「ええ、特に聞いていないわ。ただ音楽科と戦術科の発表を見るだけになるわね」


「じゃあ声楽の発表見に来て?私独唱するんだ」


「独唱!?すごいわね」


「カデンツァ先生に抜擢されたから。君の歌声は天使のようだーってすごい褒められたんだ」


「へぇ、それは聴くのが楽しみね」




学院祭の話、これからの話。色んな話をして時間を潰した。体調不良なんて忘れてた。


テストが終われば学院祭。楽しみが待っている。私は期待に胸を膨らませるのだった。

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