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中二病を極めた私、異世界魔法を凌駕する  作者: 氷高悠
第1章 第2話「中二病を具現化させた私、異世界で人生逆転する」
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03 ルミーユ学園、初登校

 チュンチュン……チュンチュン……。


 小鳥のさえずり声で目を覚ますと、私はゆっくりとベッドの上で起き上がった。

 布団に脚を突っ込んだまま、私はバッと手鏡を取り出す。


 そこに映っているのは――ゆるふわ金髪の、絶世の美少女。


 よかった……有栖田(ありすだ)真子(まこ)じゃなくて、アリスだ。


 眠ったら全部なかったことになっちゃうんじゃないかって心配してたけど、杞憂だったみたい。


「おはよう、アリス」


 声のした方に顔を向けると、そこには下着姿のリーリカがいた。


「あっ、ごめん!」

「いいよ、別に。女の子同士だし、見られても気にしないって」


 そ、そうは言うけどさぁ。なんかやっぱり気恥ずかしいもん。


「それよりアリスも、そっちの制服に着替えないと。早くしないと、編入早々遅刻しちゃうよ?」


 リーリカに言われて机の方を見ると、そこにはハンガーに掛かった薄紅色のケープと、若草色のスカートがあった。


「これが、ルミーユ学園の制服?」

「そうだよ」


 着替え終わったリーリカは、私の前をつかつかと横切ると、ガタンと棺桶を開けた。

 そして、口元に両手を当てて。


「ユピぃぃぃぃ! 遅刻するわよぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「わきゃん!?」


 棺桶の中から、ネグリジェ姿のユピが飛び出してくる。

 そしてそのまま、ふらっとその場にくずおれる。


「……あぅぅぅ、眠いのぉぉぉ」

「相変わらずの低血圧ね」

「朝は血が不足してるのぉ……アリスがもうちょっと、血を分けてくれればぁぁぁ」

「だ、だめっ! 昨日みたいなのは、だめだからっ!!」


 散々っぱら血をちゅーちゅー吸われたことを思い出して、私は頬が熱くなるのを感じる。

 そんな私の気持ちなんか、ユピは知らないって顔で。


「はぅぅ……アリスのけちぃ」




 そんな、ドタバタな朝の準備を終えて。

 私たち三人は朝食を済ませると、寮を出て学園の方へと向かう。


「改めて見ても、すごい立派な造りだよね。ルミーユ学園」

「なんてったって、オルタナギアのすべての国家が出資してる、世界的なプロジェクトだからね。普通の学校とはわけが違うのよ」


 そう言って、リーリカは校門の前で片手を広げる。


「じゃあ学園に慣れてないアリスのために、このリーリカとユピが、簡単な案内をしてしんぜよう」

「う、うん! ユピも、アリスのために学園案内、頑張るの!!」


 得意げな顔のリーリカと、なんだか気合いの入ってるユピに連れられて。

 私は授業がはじまるまで、ルミーユ学園を案内してもらうことになった。


 ドーム球場かっていうほど、広々とした校庭。

 木製の大きな机の置かれた、階段状になっている教室。

 魔法実技を行うための、防魔壁で覆われた『魔技室』。

 それ以外にも球技室やらプールやら、充実した設備があって。


「……すっごい。学校ってレベルじゃないね、ここ」

「言ったでしょ? 普通の学校とはわけが違うの。あたしたちはここで、魔王グランロッサを倒すための実力を、磨かないといけないんだから」


「リーリカは『剣士』、ユピは『弓使い』なの。自分のジョブ以外も総合的に学ぶっていうのがルミーユ学園の校規だから、授業はほとんど一緒だと思うけど……アリスのジョブは、なんになるの?」

「え。私は、えーと、えーっと……」

「『魔法使い』に決まってるでしょ! ドラゴンを一撃で倒すような魔法を使っておいて、なんで悩むかなぁ」


 あ、そっか。そうだよね。


 魔法使い。

 どんな魔物や怪物だろうと、私が呪文を唱えれば一瞬のうちに灰燼と化す。

 そんな妄想を、中学生の頃から膨らませ続け――できたのがこの、禁断教典『シュバルツアリス』。


 まさかそんな夢物語が、現実になるだなんてなぁ。

 一人で部屋に籠もってぶつぶつ呪文を口にしてばかりいた、昨日までの自分に教えてあげたいくらいだよ。

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