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中二病を極めた私、異世界魔法を凌駕する  作者: 氷高悠
第2章 第6話「魔族の将と相対した私、本気で怒る」
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06 1つの終わり、1つのはじまり

 私は『私と天使(イッツ・ア・)の夜想曲(アリスワールド)』の呪文を唱え終えた。

 同時に――白光が煌めいて、ヴェルゴーシュの身体を包み込む。


「ぐあ……ぐああああああああ!?」


 ルミーユ学園寮を超える巨体をよじりながら、ヴェルゴーシュは断末魔の叫びを上げる。

 だけど、もう遅い。


 この呪文は、私の創り出した魔法の中でも、おそらく最強。

 まともに喰らえば、耐えきることはできない。


「バカな……この俺様が……地軍大将ヴェルゴーシュ様が、こんなところでくたばってたまるかよぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「終わりだよ、ヴェルゴーシュ」


 どろどろと全身を融解させていく哀れな魔軍の将に向かって、私はきっぱりと言い放つ。


 そんな私の言葉を最期に――ヴェルゴーシュの頭が、ぐらりと揺れて。

 空中で塵となって、飛散した。


 終わった……ヴェルゴーシュを、倒したんだ。

 ホッとした瞬間――私はふわっとした浮遊感に襲われる。


 ああ、そうだ。

 ヴェルゴーシュに直撃させるために、私ってば空中に飛び上がってたんだっけ。


 敵を倒した安堵と、魔力の使いすぎからか、私にはもう姿勢を整える力もなくって。

 そのまま無防備な状態で、自由落下していく。


「アリスぅぅぅぅ!!」


 そんな私の身体を、ふわりと。

 柔らかい感触が、包み込んだ。


 鼻腔をくすぐるフローラルな香りが、なんだか懐かしい。

 私は瞑りかけていた目を、ゆっくりと開ける。


 そこには――今にも泣き出しそうな顔をした、快活そうな少女の姿があった。


 私はふっと頬を弛緩させて、彼女の頬に手を伸ばす。


「そんな顔、しないでよ。リーリカ」

「アリスのばか……無茶ばっかりして」


 そう言って、私のことをギューッと強く抱き締めるリーリカ。


 その身体には、傷ひとつ見当たらない。

 おそらく『私と天使(イッツ・ア・)の夜想曲(アリスワールド)』の力が、ダメージを全快させたのだろう。


「よかったよ……リーリカが無事で」


 そして私は、彼女にゆっくりと顔を近づけて。


「大好きだよ、リーリカ。これからもずっと……一緒だよ」

「当たり前だよ……大好きだもん、アリス」


 そしてリーリカは、私を抱いたまま、地面に着地する。

 その大地には、ヴェルゴーシュがつけた傷跡は、欠片も残ってはいなかった。


 どうやらルミーユ学園寮の敷地全体に、魔法の効果が及んだみたいだね。

 ヴェルゴーシュだけを消滅させて、他のすべてを回復させる究極のチート魔法。


 我ながら中二病じみた、極端な魔法だと思う。

 だけど――それでみんなが救えるのなら、別にかまわない。


 私はこの中二病魔法で、私の手の届くすべてのものを、護ってみせるんだから。

 誰も犠牲になんて、させないから。


『…………くっくっくっく』


 心の中でそんな誓いを新たにしていると。

 重く低い不気味な声が、辺り一帯に響き渡った。


 思わず空を見上げるけれど……そこには何もいない。

 声だけが遠くから、私たちに届けられているみたい。


 確か前にも、こんなことがあったな。

 私はそんなことを思いつつ――ギュッと唇を噛み締めて、その名を呼んだ。


「魔王グランロッサ!」

『まさかヴェルゴーシュの奴を倒すとはな……なかなかの腕前だ、魔法使い』


 そう言って、魔王グランロッサは愉悦するように笑う。


『だが……貴様たちはあくまでも、魔軍四将の一人を破ったに過ぎない。果たして、他の将を倒し、我のもとまで辿り着くことが……できるかな?』

「辿り着いてみせるよ。必ず」


 私はきっぱりと。

 どこからともなく響いてくる、この世界の諸悪の根源の声に向かって――はっきりと答える。


「私はこの、異世界魔法を凌駕する力を使って、必ずあなたを倒してみせる。そしてオルタナギアに平和な日常を……取り戻してみせるから」

『そうか……それが貴様の、選択か』


 そんな私の言葉を、どこか楽しそうに聞きながら。


『楽しみに待っているぞ、魔法使い……いずれ貴様が、我のもとに辿り着く日を』


 その発言を最後に、魔王グランロッサの声は途切れる。


 虚空を睨みつけていた私は、ふぅと身体を弛緩させた。

 そんな私のことを、リーリカがギュッと抱き締める。


「リーリカ。そんなにくっついたら、暑いってば」

「いいの、今は……このままギュッてさせてよ、アリス」

「……分かったよ」


 そう応えると、私もまた、リーリカのことを強く抱き締めた。

 そうして、大切な人の温度を強く感じながら……。



 私と地軍大将ヴェルゴーシュとの戦いは――静かに幕を下ろしたのでした。

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