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中二病を極めた私、異世界魔法を凌駕する  作者: 氷高悠
第2章 第6話「魔族の将と相対した私、本気で怒る」
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03 死闘! VSヴェルゴーシュ

 ルミーユ学園の生徒たちの実力は、かなりのものだった。


 迫り来る魔物たちを、ちぎっては投げ、ちぎっては投げ。

 数の上では圧倒的に劣っているっていうのに……互角以上の戦いを繰り広げていた。


 もちろん、優勢な理由としては……自分で言うのもなんだけど、私の存在が大きいとは思うけど。


「『愛してる』と彼女は言った。『哀してる』と彼は答えた。零した涙は、微熱の憂い。溢れた心は、灼熱の炎。涙と炎の協奏曲(コンチェルト)――『嫉妬の女王(ハデスメイデン)』!」


 オルタナギアの魔法を凌駕する中二魔法を駆使して、私は雑魚敵たちを一掃していく。


 カンナさんやキサラさんがいれば、さらに戦力としては強固なものになっていたと思うんだけど……運の悪いことに、二人が不在のところを襲われている。


 だけど、このまま拮抗状態を続けていれば。

 いずれ先生たちが駆けつけて、挟み撃ちの形にすることができるはず。


 それまでは私たちだけで――持ちこたえてみせる!


「――固まれ(、、、)


 ――――ゴトン。


 私の周囲にいた生徒たちが、突如としてその動きを止めたかと思うと、そのまま地面に倒れ伏した。

 その身体は……完全に石化している。


「ああ……うぜぇ。うぜぇ、うぜぇ、うぜぇ!!」


 目の前の男が苛立たしげに、力いっぱいに足踏みをする。

 すると大地が大きく揺れて、ビシッと――巨大な亀裂が走った。

 私はたたらを踏みながら、キッとその男を睨みつける。


「地軍大将ヴェルゴーシュ……っ!」

「その目を今すぐやめろ、アリスぅ!!」


 がなるようにして、この軍勢の大将・ヴェルゴーシュは叫んだ。


「さすがだよ……ああ、さすがだ。俺様のかわいいグランゴーレムをぶっ倒したってだけのことはある。俺様のかわいい、グランゴーレムをなぁ!!」


 血走った目のヴェルゴーシュに、私は思わず身震いする。


「魔王様が直々に遣わした俺様のかわいい部下を、てめぇは容易くぶっ殺しやがった。おかげで地軍大将たる俺様の顔には、見事に泥が塗られたってわけよ」

「……それで、汚名挽回に来たってこと?」

「いいや――んなこたぁ、どうだっていいんだよ!!」


 再びの、ヴェルゴーシュの咆哮。


「俺様は泥にまみれようと、一向にかまわねぇ。最後に笑うのは俺様だって、信じてるからなぁ! ――だが! 死んだグランゴーレムの弔いは、してやらねぇとなぁ!! なんたってあいつは、俺様のかわいい部下だったんだからよぉ!!」

「グランゴーレムの、弔い……?」


 部下の敵討ちのためだけに、わざわざ敵の本拠地まで、大軍勢を率いてきたっていうの?

 なんて直情的な奴なんだ。


 だけど案外――そういう感情的なタイプの方が、敵としては恐ろしいのかもしれない。


「アリス、避けてなの!」


 その言葉に、私はパッと身を逸らした。

 私のそばを通過して――一本の矢が、ヴェルゴーシュの胸元へと突き刺さる!


「あん? なんだ、これ?」


 けれど……ヴェルゴーシュはなんでもないように、胸に突き刺さった矢を抜き去った。


「き、効いてないの……?」


 ヴェルゴーシュと相対しながら、声を震わせるのは――ユピ。

『ピルピッドユピ』をかまえた姿勢のまま、呆然と立ち尽くしている。


「ユピさん! ボーッとしてる場合じゃ、ありませんよ!! ――『火炎滅波(ファイアブラスト)』!」

「喰らえぇぇぇぇ! 『ハンマーダンパー』!!」


 チェリルの放った『火炎滅波(ファイアブラスト)』が、ヴェルゴーシュの身体を包み込んだ。

 さらに、炎に巻かれたその身に向かって、ミルミーがハンドアックスを振り下ろす。


『チェリミル』による、コンビネーション攻撃。

 だけど――。


「鬱陶しいんだよ、雑魚どもがぁぁぁぁ!!」


 ドンッと、ヴェルゴーシュが地面を踏みならしたかと思うと。

 隆起した大地が、まるで生き物のようにうねりながら、チェリルとミルミーのことを弾き飛ばした!


「チェリル! ミルミー!!」

「大丈夫なの!?」


 私とユピは慌てて、泥まみれになった二人のもとに駆け寄った。

 全身にかすり傷を負ってはいるものの、二人ともまだ意識はある。


「この程度の実力で俺様に挑もうなんざ、随分と舐められたもんだなぁ」


 ヴェルゴーシュがゆらりとその身を揺らしながら、こちらに近づいてくる。


「右手に勇気を、左手に涙を。握り締めた二つの心は、ひとつに重なり一閃の『正義』となる。瞬け、私の二律背反(アンビバレント)――『蝋細工の十字架(シンクロクルセイド)』!!」


 私は咄嗟に、呪文を唱えた。

 それを合図にして、現れた十字架が――ヴェルゴーシュの身体を拘束する。


 …………が。


「この程度じゃあ――効かねぇっつってんだろうがぁ!!」


 ブチブチブチッ!

 手足を縛り付けていた鎖が、強引に引きちぎられる。


蝋細工の十字架(シンクロクルセイド)』が――破られた!?


「ア、アリスさんの魔法が!?」

「そ、そんな……こんなの、勝てっこないよ!」


 地べたに座り込んだまま、チェリルとミルミーが悲鳴を上げる。


「まだ諦めるには早いの!」


 ――その言葉と同時に。

 ユピがヴェルゴーシュ目掛けて駆け出した!


「ユピ!」


 ぐんぐんと加速していくユピ。

 その速度は、普段の彼女の走るスピードを超越している。

 そしてその瞳は――血のように真っ赤な色に、変化していた。


 あれは……間違いない。グランゴーレム戦で見せたのと同じ。

 ヴァンパイアとしての力を解放した――ユピの姿だ。


「さぁ! 噛んじゃうから、覚悟するの!!」

「あん? てめぇ、ひょっとして――ヴァンパイアなのか?」


 ひゅっと風を切る、ユピの拳。

 ヴェルゴーシュはそれを避けつつ、面白そうに顔を歪めた。


「……ヴァンパイアの生き残り。あぁ、つまりてめぇが――あの裏切り者の、娘ってことかぁ!」

「――――!? ユピのお父さんを、知ってるの!?」

「当たり前だろうが、アリスぅ! なんたって、こいつの親父は俺様と同じ――」

「……!! お喋りはぁ、そこまでなのぉぉぉぉぉ!!」


 一瞬の隙。

 それを突いたユピは、ヴェルゴーシュの腕にしがみついたかと思うと――牙のように変化した歯を、思いっきり突き立てた!


「このまま血を吸い尽くしてやるの! さぁ、覚悟――!?」

「…………茶番は、そこまでだ」


 ビキビキビキ、と。

 軋む音を鳴らしながら、ヴェルゴーシュの腕が――岩石のように変化した。


 その硬度に耐えかねたのか、ユピはヴェルゴーシュの腕から口を放す。

 そこへ繰り出される、ヴェルゴーシュの回し蹴り。


「きゃっ……!?」

「ユピ!!」


 小さな悲鳴を残して、ユピは蹴り飛ばされる。

 そして――地に膝をついたユピ・チェリル・ミルミーのことを、まっすぐに見据えたヴェルゴーシュは。


「――固まれ(、、、)


 呟いた。

 瞬間――ゴトンと、その場に倒れ伏す三人。


「ユピ! チェリル! ミルミー!」

「無駄だよ。そいつらはたった今、石化した」


 ヴェルゴーシュが酷薄に告げる。

 言い知れぬ怒りに身を震わせながら……私はグッと歯噛みした。


「絶対に……あなただけは、許さない!」

「上等じゃねぇか……来いよ、アリス」


 私は禁断教典『シュバルツアリス』に書き綴った、最後の一節を思い返す。

 それは、グランゴーレムとの戦闘時に血文字で追記した、最も新しい魔法。


 ――『私と天使(イッツ・ア・)の夜想曲(アリスワールド)』。


 私が敵と認識したものだけを、白光によって消失させ。

 さらに私が味方と認識したものについては、その体力を全快させるという、チート極まりない魔法。

 これを発動させれば、いくら魔軍四将の一人とはいえ、ひとたまりもないはず。


 私は両手をクロスさせ、ギリッとヴェルゴーシュのことを睨みつけた。


 それをどこか楽しそうに眺めながら。

 ヴェルゴーシュは吼えるように、言った。


「いいぜぇ……それじゃあ俺様も、『真の姿』ってやつを――見せてやるよぉ!!」



 大地が、大きく揺れる。

 そしてヴェルゴーシュの身体は――どす黒い霧に、包み込まれた。

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