表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
中二病を極めた私、異世界魔法を凌駕する  作者: 氷高悠
第1章 第2話「中二病を具現化させた私、異世界で人生逆転する」
7/80

01 今日からルームメイト

 オルタナギア。

 それが私の転移してきた、この世界の名前らしい。


 魔王グランロッサと名乗る存在が現れ、山や海や平野に、魔物たちが跳梁跋扈するようになってから――早百年近く。


 人間を襲う魔物たちを危険視したオルタナギアのいくつかの国は、総力を挙げて魔王討伐を試みた。

 大国が一丸となれば、いくら魔王といえど容易い……誰もがみな、最初はそう思っていた。甘く見ていた。


 グランロッサ討伐軍の第一陣が全滅するまでには、さほどの時間は掛からなかった。


 事態を重く見た国家連合は、第二陣・第三陣と、討伐軍を送り込んでいく。


 討伐軍の決死の戦いにより、かろうじて魔王軍の侵攻は最小限まで抑えられた。

 しかし均衡を保つことはできても、魔王軍を壊滅させるまでには至らない。


 そんな拮抗した情勢を打破するため、国家連合はある人材育成計画を立案する。


 十五歳を超えた子どもを、三年間のカリキュラムで、立派な戦士へと育て上げる。

 そして卒業した暁には討伐軍を編成し、今度こそ魔王グランロッサを狩る旅へと向かってもらう。


 これこそが、『ルミーユ計画』。

 そしてその計画のために作られたのが、ここ――『ルミーユ学園』なんだって。




「……どう、分かった?」

「うん。ありがとう、リーリカ。よく分かったよ」


 食後のフルーツジュースを飲みながら、私は深く頷いた。


 これが妄想じゃない可能性に行き着いた私は、ひとまずリーリカに、この世界について尋ねることにした。

 そして語られた、この世界――オルタナギアを取り巻く状況は、さっきのとおり。


 思っていた以上にこのファンタジー世界は、緊迫した状況下にあるらしい。


「しっかし、オルタナギアのことを詳しく知らないなんて……アリス、一体どこの国の辺境で暮らしてたのよ?」

「え!? い、いや、知ってたよ? ちょっと復習したいなって、思っただけで!」

「ふーん? まぁいいけどぉ」


 ジト目でこちらを見ながら、ストローを口に咥えるリーリカ。

 ちょっと不満そうなその顔も、美人がやると、さまになるね。


「だけど私、本当に入学なんてしちゃってよかったのかな? そんな重大な任務があるなんて、意識してなかったけど……」

「何言ってんの。アリスの才能を、ここで使わずしてどうするっていうのよ。それこそオルタナギアの損失になるわ」


 そんなたいそうな存在じゃないんだけどな、私。

 元を正せば、クラスの隅っこでこそこそしてる、ただの中二病患者だったってのに。


「ってなわけで、明日から編入。今日は早めに布団に入って、ゆっくりしちゃうのがいいと思うな」

「そうだね……って、私の部屋」

「学園長から聞いてるから、安心して。案内するよ」


 食器をカウンターに下げてから、私はリーリカに先導されるがまま、女子寮の階段を上がっていく。

 すれ違う女生徒たちが、私のことをちらちらと見ていくのが、なんだか気になる。


「なんだろう。この服装、やっぱり目立つのかな?」


 こっちの世界じゃ、セーラー服なんて普通じゃないもんね。


「んー。それもあるかもだけど。やっぱりアリスが、かわいいからじゃない?」


 リーリカがこちらを一瞥して、さらりと言う。


「か、かわいい……私が?」

「アリスがかわいくなかったら、この世界に美少女は存在しないね。それくらいアリスは人目を惹く外見してるんだってば。ちょっとは自覚したら?」


 苦笑するリーリカ。


 うーん、そうは言われてもなぁ。

 この容姿で暮らしはじめて数時間だし、そんな自覚を持つのはまだ難しいよ。


「はい、アリスはこの部屋だよ」


 リーリカがガチャリと、鍵を開けてくれる。


 廊下の電気を点けて、中へと入っていく。

 明かりの消えている室内には、ベッドが全部で三つ。


「三人部屋なんだ。ねぇ、リーリカ。私のルームメイトって……」

「――ふっふふふふ」


 振り返ると、そこには不敵な笑みを浮かべているリーリカ。

 そして大きく腕を広げると――そのままリーリカは、私に向かって抱きついてきた。


「ちょっ!? どうしたの、リーリカ!?」

「あたし史上、最高だわ! アリスとあたしが、一緒に暮らすことになるだなんて!!」

「え? ってことは、ルームメイトの一人って……」

「そう、あたし! 今日からよろしくね、アリス!!」


 腰に手を回して、ギューッと私を抱き締めるリーリカ。

 吐息が首筋に掛かってくすぐったいよぉ、もう!


 リーリカってば、ボディタッチが過剰なんだから!!


「……アリスは、あたしが同室だと、いや?」

「そ、そんなわけないじゃない。リーリカと一緒だと、心強いよ。まだ私、リーリカしか知り合いいないんだし」

「ふふ。ありがと! あたしもアリスと一緒なの、すごく嬉しい」


 私から身を離して、花のような笑みを浮かべるリーリカ。

 見てるこっちが幸せになりそうな、満開の笑顔。


「これまでこの部屋、二人で使ってたんだ。人数の都合で。これから賑やかになるなぁ、楽しみだなぁ」

「リーリカ。もう一人って、どんな子なの?」

「あ、そうだね。紹介しなきゃだね」


 そう言ってリーリカは、てくてくと部屋の中に入っていく。

 そして電気を点けて、奥のベッドに向かって手を広げた。


「あそこにいるのが、ユピ」

「あそこにいるのが……って、言われても」


 得意げなリーリカとは反対に、私は不安な気持ちを抱きつつ。

 おそるおそる……ベッドの方を指差す。



「……そこ。棺桶が置いてあるんだけど」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ