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中二病を極めた私、異世界魔法を凌駕する  作者: 氷高悠
第2章 第5話「友達の誕生日を祝いたい私、準備に奔走する」
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03 サプライズが楽しみで

「なんでにやにやしてるの、アリス?」


 夕飯とお風呂を済ませて、そろそろ就寝しようかという頃。

 向かいのベッドに腰掛けていたリーリカが、ふいにそんなことを言ってきた。


「えっ!? に、にやにやなんてし、してないよ?」


 突然のことに、思わずしどろもどろになってしまう私。

 そんな私を訝しんでか、リーリカはますます目を細めて、こちらを睨むようにして見てくる。


「してる。ご飯食べてるときもそうだったし、髪を乾かしてるときもそうだったし」


 って、ずっとじゃん。

 ひょっとして私ってば、全然ポーカーフェイスできてない?


「アリスはただでさえ、分かりやすいんだから。そんな見え透いた嘘をついたって、無駄だよ」

「あ……う、うん……」


 いつになく厳しめな口調で告げてくるリーリカに、私は思わずしゅんとしてしまう。


 ああ。せっかく、みんなの協力を取り付けたっていうのに。

 こんなところで計画がバレてしまうなんて……。


 でも、リーリカの目を見てれば分かる。

 これは、私なんかの話術じゃ、ごまかしが利かないやつだって。


「それで? 一体、何を隠してるの?」


 ごめんなさい……みんな。

 私が諦めて口を割ろうとした、そのとき。


「リーリカ。アリスは先生から、ある密命を帯びているの!」


 棺桶のそばで髪をとかしていたユピが、急に大声を上げた。

 思いがけないユピの声量に、私もリーリカもびっくりする。


「み、密命? アリスが?」

「そうなの。詳しいことはユピも知らないの。だって、密命だから!」


 すっごくあやふやな情報を、ぶんぶんと拳を振るいながら力説するユピ。

 そして、ちらっと私の方を見て――目配せをしてきた。


 あ。そっか。

 密命ってなんのことかと思ったけど、ユピってば……誕生日パーティーのことを隠すために、咄嗟に機転を利かせてくれたんだね。


 よーし。それじゃあ私も、それに合わせなきゃだね。


「実はそうなんだ、リーリカ。私の魔法ってさ、みんなのものと比べて強力なものでしょ? その魔法を使って、ある任務を任されてるんだよ」

「任務って?」

「そ、それは言えないよ。言っちゃいけないって、先生に言われてるから」

「そうなの、そうなの! なんたって、密命なの!!」


 私とユピは、とにかく『秘密の任務』だってことを強調し続ける。

 決してリーリカにだけ、何かを隠してるってわけじゃなく。

 絶対に言っちゃいけない何かがあるんだって、思ってもらうために。


「そっか……それなら仕方ないね」


 リーリカが眉尻を下げつつ、ふぅとため息をついた。


「アリスが何か隠し事をしてるみたいだったから、どうしてあたしに言ってくれないんだろうって……悲しかったんだ。でも、そういう事情なら、分かった」


 ズキッ。

 リーリカの何気ない言葉が、私の胸をえぐってくる。


 別にリーリカを除け者にしようとか、悪い嘘をついてやろうとか、してるわけじゃないんだけど。

 実際に隠し事をしているのは、本当なわけで。


 しかも『密命』だなんて、嘘までついてしまったわけで。

 なんだかそれが――ちょっとだけ心苦しい。


「その密命っていうのは、いつまで続くの?」

「あ。えっと……あと何日か、だよ」

「そっか。じゃあそれが終わったら、また元通りにあたしと接してね。やっぱりあたしは、いつもどおりのアリスが、一番好きだから」


 そしてリーリカは、部屋の電気を落とす。


 ユピは棺桶の中に入っていき。

 私とリーリカも、自分のベッドへと潜り込んだ。


 リーリカに背中を向けるように寝返ると、私は真っ白な寮室の壁を見つめる。


 ごめんね、リーリカ――もうちょっとだからね。

 私は心の中で謝罪をして、二日後にサプライズが大成功を収めている様子を夢想する。


 私たちに囲まれて、驚いたような恥ずかしがるような、そんな笑顔を浮かべているリーリカ。

 そんなリーリカを見ているうちに、私たちまで思わず顔がほころんできちゃって。

 みんなで声を揃えて、バースデーソングを口ずさむんだ。


「……楽しみだなぁ」


 リーリカに聞こえないよう小声で、私は独り言ちた。

 ――誰かの誕生日をお祝いするなんて、これまでの私の人生では考えられなかった。


 かつての私には、そこまで深く関わっている友達がいなかったから。

 そもそも、誕生日を知っている相手がいないレベルだったから。


 だからこそ……この世界で最初にできた、大切な友達の誕生日は。

 リーリカの誕生日は――盛大にお祝いしてあげたいって。そう思ったんだ。


 有栖田(ありすだ)真子(まこ)はとにかく恐がりで、自分から行動を起こすことなんて、絶対にできない人間だったのにね。

 それが、パーティーを主催するようになるんだから、人生って何が起きるか分かんないもんだよなぁ。



 引っ込み思案な私は――どうやらいつの間にか、どこかへ行ってしまったみたいだ。

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