01 過ぎていく季節
授業中にふと窓の外を眺めると、茶色い葉っぱが風に舞っていた。
ひらひらと落ちていく葉っぱを眺めていたら、なんだか時の流れの速さを感じて仕方ないなぁ。
こっちに来たばっかりの頃は、草も葉も、まだまだ緑色だったもんね。
私がオルタナギアに来てから、早いもので――もうすぐ二ヶ月になる。
リーリカやユピたちと知り合って、一緒に寮生活を送るようになってから、もう二ヶ月!
なんだか実感が沸かないなぁ。
だって本当に、あっという間だったんだもん。
オルタナギアに来る前は、学校に行くのがひたすら苦痛で、一日が過ぎるのですら永遠のように感じてたのにね。
冴えないぼっち生活を送っていた私が、ひょんなことから異世界転移を果たしてから……なんとも色んなことがあった。
最初にオルタナギアに飛ばされてきたときは、いきなりドラゴンと遭遇したんだっけ。
それを軽々と倒したところをリーリカに見られて。
ルミーユ学園に連れてきてもらって。
学園長のところでは、私がとんでもない潜在魔力を持っていることが分かって、入学許可をもらったんだよね。
そんな私のことが気に入らないチェリルとは、魔法で試合をしたりもしたっけな。
「なんだか、懐かしいな……」
頬杖をついて空を仰ぎながら、私はぽつりと呟く。
学園に馴染んできてからも、私の毎日は波乱に満ちていた。
ゴーレム討伐訓練のときは、魔王グランロッサが直々に送り込んできたグランゴーレムと、決死の死闘を繰り広げた。
そこで名前が知れ渡ったおかげか、キサラさんに目を付けられて。
よく分からないうちに、リーリカVSキサラさんで試合をすることにもなった。なぜだか私を巡って。
最終的にキサラさんは、リーリカのことが気に入っちゃって、今ではリーリカのストーカーもどきみたいになっちゃってるけどね。
そして忘れもしない、臨海合宿での出来事。
謎の男――ヴェルゴーシュが召還したサンドゴーレムを止めるべく、私は中二魔法を駆使して戦った。
どうにか撃破することには成功したけれど……あやうく、学園のみんなに危害が及ぶところだった。
――カンナさん! カンナさんも一緒に戦ってください!!
――どうして?
あのとき、そばにいたにもかかわらず、一切手を出そうとしなかったカンナさん。
カンナさんのことだ。何か思惑があったのかもしれない。
あったのかもしれないけど……残念ながら私には、カンナさんの深遠な考えを理解することはできずにいる。
まぁ……そんなこんなで。
激動の二ヶ月が過ぎ去って、季節はすっかり十一月になった。
ちなみにオルタナギアの暦は、私が元いた世界のものと一緒。
分かりやすくていいんだけど、なんだか不思議な感じ。
「……あ」
そういえば、十一月って。
私はふっと、『大切な日』が近づいていることを思い出した。
そうだよ。ボーッとしてる場合じゃないや。
授業が終わったら、急いで準備をはじめなきゃいけない。
私は視線を窓の外から、教室へと戻した。
そして――リーリカのことを、ちらっと見る。
すると、その視線を感じたのか、リーリカもこちらの方を向いてきた。
「うん? どうかした、アリス?」
「う、ううん! なんでもないよ!!」
「……? そう?」
怪訝そうな顔をしながら、教卓側に向き直るリーリカ。
あ、危なかったぁ。
怪しまれちゃってないよね? 私、ポーカーフェイスを保っていられたよね?
これからはもっと、気を付けて行動しなくっちゃだね。
なんてったって、これから準備することは……。
リーリカには、内緒にしなきゃいけないんだから。




