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中二病を極めた私、異世界魔法を凌駕する  作者: 氷高悠
第2章 第4話「夜のお泊まりを満喫する私、謎の男と出会う」
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04 夜の浜辺で

 …………ん。


 私は眠い目を擦りながら、ベッドで上体を起こした。


 先ほどまでの枕投げ騒ぎが嘘のように、暗い部屋の中はシンと静まり返っていた。

 隣のベッドで寝ているリーリカも、すやすやと寝息を立てている。


「……変な時間に目が覚めちゃったなぁ」


 私はぼやきつつ、靴を履いて廊下に出た。


 廊下の電気も落とされていて、薄ぼんやりとしたランプの明かりだけがかろうじて、足元を照らし出している状態。


 ……さすがに、ちょっと怖いな。

 ぶるっと肩が震えるけれど、トイレに行かないと、もう一回寝れるような気がしない。


 私は意を決して、ひとけのない廊下を歩いていく。

 怖さを意識しないように、私はふっと窓の外へと視線をやる。


 月明かりに照らされて、白波を立てる夜の海。

 それはなんだか、とっても幻想的。


「……ん?」


 そのとき、私は気付いてしまった。

 砂浜に何か、ぼぉっと不思議な明かりが灯っていることに。


「え……何あれ?」


 独り言ちるが、当然誰の反応もあるわけもない。


 ――気のせいかもしれないし、放っておこう。

 そう自分に、言い聞かせようとするのだけれど。


 なんだかその明かりが、私を呼んでいるような気がして。

 私はふらっと、宿を出てしまう。


「さっきは確か、この辺りで明かりが見えたような……」


 きょろきょろと見回しながら、私は夜の砂浜をパジャマ姿のまま歩く。

 寄せては返す波音だけが、静寂の夜に響いている。


 すると。

 ぼぉっとした明かりが、私の正面から近づいてきた。


「……あなたは?」

「ここに来たってことは……てめぇなのか?」


 乱暴な口調で吐き捨てるように言って、男は右手をギュッと閉じた。

 すると、男の手の中にあった光が、すっと消滅した。


 目つきの悪いその男は、なんだか不機嫌そうに眉をつり上げていた。


 茶色いもじゃもじゃの髪。

 乱雑に生えたひげ。

 白いシャツの上には、赤茶色をしたマントを羽織っている。


 明らかに、ルミーユ学園の学生ではない。


 年齢的には先生だろうか? 編入して以来、見たことがない人だけど、もしかしたら他学年の先生なのかもしれない。


「てめぇ、名前は?」

「え、あ。アリスです」


 先生にしては、口が悪い人だなぁ。

 私はやや警戒しつつ、答える。


「アリスか……なぁアリス、聞かせろ。グランゴーレムをぶっ倒したってのは、てめぇなのか?」


 グランゴーレム。

 それは少し前に、アルミラの森に出現した魔王グランロッサの刺客。


 他のゴーレムを圧倒する大きさと力を持っていて、厄介な相手だったけれど……私の中二魔法で、どうにか倒すことができた。

 なんで今さら、そんなことを?


「えっと、先生なら表彰式で見たんじゃないかと思いますけど……私で合ってます」

「そうか……やっぱり、てめぇか」


 ぞくっとするような気配が、私の身体を通り抜けた。

 この気配は――殺気?


「さっきの明かりはなぁ。俺様が呼び出したい相手が見ると、無意識に近づいてきちまうって……そういう代物なんだよ。そしてのこのこ来たのが、アリス。てめぇだ」

「え、えっと……」

「グランゴーレムを倒した奴を、俺様は探してたんだよ。そして見つけ次第――ぶっ殺してやろうと思っていた」


 こ、殺……?

 なんて物騒なことを言うんだ、この先生は。


「死ねよ。魔王様にたてつく、愚かな人間風情が」


 その言葉と同時に。

 凄まじい地鳴りとともに、立っていられないほどに砂浜が揺れはじめる。


 そしてビシビシッと、大地に亀裂が走って――。


「『解錠(シャンテ)』」


 瞬間。

 ふわっとした浮遊感とともに、私はいつの間にか宿の玄関まで移動していた。

 あ、あれ……? 私、確かさっきまで海辺にいたはずなのに……。


「誰彼かまわず話しすぎるのは、感心しないな」


 澄み渡った声でそう言って。

 私の肩をポンと叩いたのは――カンナさんだった。


「カンナさん? どうしてここに?」

「君があの男に吸い寄せられていくところを、たまたま見掛けてね。それで、魔法を使って引き剥がさせてもらった」

「あの男って……さっきの先生ですか?」

「彼は、先生ではないよ」


 え……?

 じゃあ、さっきの人は一体――。


「考えている暇はない。来るぞ」


 カンナさんがそう告げるのと同時に。

 遠方に見えていた砂浜がゴゴゴ……とけたたましい音を鳴らしながら、こちらに向かって流れてくる。


「な、なんですか、あれ!?」

「よく見るんだ」


 カンナさんの言葉に、私はジッと目を凝らす。

 土砂のように流れてくる、砂の波。


 いや……違う。

 砂は一定の形を保って、まるで歩くようにしてこちらへ向かってきている。


あれは砂の波なんかじゃない。

 あれは……。


「グオオオオオオオオオオッ!!」



 砂で形作られた。

 巨大な――ゴーレムだ。

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