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中二病を極めた私、異世界魔法を凌駕する  作者: 氷高悠
第2章 第4話「夜のお泊まりを満喫する私、謎の男と出会う」
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03 初めての枕投げ

 私たちが息を潜めている間にも、窓ガラスがガタガタ揺れる音は、ますます大きくなっていく。


 ど、どうしよう? 温泉も入っちゃって、みんな完全にオフモードなのに。

 こんなところに男子が来たりなんかしたら……どんな顔したらいいんだろう?


 人生初の夜這いイベントに、私は動揺を隠せない。


「あたしに任せて」


 そう言って、リーリカはベッドの横に立てかけていた、『ルクシアブレード』に手を掛ける。


「ちょっ!? リーリカ、何するつもりなの!?」

「決まってるじゃない。不届きな男子は、あたしが成敗してやるから」

「成敗っていうか、本気で死んじゃうよねそれ!?」

「アリスのこんなあられもない姿を、見せるわけにはいかないじゃない。それならいっそのこと、ひと思いに……」


 わー、ちょっと待って!

 私は慌てて、リーリカの腕を掴む。


 そりゃあ男子にパジャマ姿を見られるのは複雑だけど、それ以上に友人を犯罪者にさせるわけにはいかないって。

 そうして、私とリーリカがドタバタやっていると。


 ――――ガシャンッ!!


 窓ガラスがぶち破られた。


 わお。なんて強引な男子。

 私は恐怖心から、思わずギュッと目を瞑ってしまう。


 そして、飛び込んできた男子は――。


「にゃっはははははははっ!!」


 猫みたいに甲高い声で、高らかに笑った。


 …………ん?

 今の声、どう考えても女性のものだったような……。

 ていうか、すっごい聞き覚えがあるような……。


 私はおそるおそる、目を開ける。


「やっほー、みんな。キサラちゃんの、登場だぜ!」

「って、キサラさん!?」


 風呂上がりだろうにネコ耳みたいな髪型を崩すことなく。

 我らが困った先輩――キサラさんは、窓際でえっへんと胸を張っていた。


「何やってんですか、キサラさん!」

「そりゃあ決まってるじゃん。合宿の夜といえば、よ・ば・い☆」

「普通それ、男子が女子にやるやつなんじゃあ……」

「性別は関係なくね? 好きな相手がいれば、窓ガラスなんてぶった切りたくなるのが、人情ってもんさ」


 いやいや。そんなの人情でもなんでもないですって。

 相変わらずな俺様理論を展開しながら、キサラさんはベッドの隅に固まった、私たちの方に近づいてくる。


「やっほー、リーリカ」

「……何しに来たんですか。キサラさん」

「いやぁ。リーリカに会いたくってさ。来ちゃった☆」

「迷惑です! 帰ってください!!」


 ぴしゃりと一喝するリーリカ。

 だけどキサラさんはどこ吹く風で、あっけらかんと笑う。


「まぁ、嫌よ嫌よも好きのうち、ってやつさ」

「そういうこと自分で言う人、初めて見ましたよ……」

「本当に嫌だって言ってるんです、帰ってくださいってば!」


 リーリカは憤慨したようにそう言って――手元にあった枕を、キサラさんの顔面目掛けて、思いっきり投げつけた!


 ぼふっ!

 枕は見事、キサラさんの顔面を直撃。


「へっへっへ……やってくれるね、リーリカ!」


 キサラさんは枕を顔からはぎ取ると、お返しとばかりにそれを投げ返した。

 それを華麗に避けるリーリカ。


 すると当然――対象を失った枕は。


「あうっ!?」


 ぼふっと……リーリカのそばにいたチェリルの顔面に、見事ヒット。


「あははー。なんだか楽しそうなの。えいっ!」

「ぎゃっ!?」


 キサラさんに乗っかるようにして、ミルミーがチェリル目掛けて枕を投げつけた。


「な、何するんですの!」


 怒ったチェリルが、ミルミーに枕を投げ返す。


「きゃん!」


 だけど、その軌道は横に逸れて……ユピの顔面をきれいに捉える。


「何するの、チェリルさん!」


 ユピが枕を投げ返す。


「いい加減にしてください、キサラさん!」

「あははっ! こうして盛り上がるのも、一興じゃん!!」

「楽しいねーチェリル!」

「わ、わたくしは全然、楽しくないですわ!!」


 さらに、リーリカが。キサラさんが。ミルミーが。チェリルが。

 みんなが入り乱れて、枕をぶんぶんと投げ合いはじめた。


 こ、これは!

 合宿名物の、枕投げというやつでは……!?


「ほーら。隙ありー」


 ぼふっ!

 キサラさんの枕が、私の顔面を見事に捉えた。


「や、やりましたね、キサラさん!」


 私はドキドキとした高揚感に包まれながら、枕を投げ返す。


 かくして、六人入り乱れての枕投げ大会の火蓋は、切って落とされた。


 自分の顔面に、枕の直撃を受けながら。

 私もまた、誰かの顔面へと枕を投げる。


 まさに青春の一ページとでもいうべき――記念すべき私の人生初の、枕投げイベント。

 ああ……なんって楽しいんだ。


 これが学生生活を謳歌するってことなんだな。

 そんなことを考えながら、枕投げをしていると。


「何をやってるんですか、あなたたちは!」


 当然のように先生に見つかって。

 ものすごく怒られたわけでした。



 特に――窓ガラスをぶち破って、後輩の部屋に侵入してきたキサラさんは。

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