02 合宿の夜はガールズトーク!
そんなこんなで、夕食やら温泉やらを満喫した私たちは。
寝室のベッドにそれぞれ陣取って、ゆったりとした時間を過ごしていた。
「さて、そろそろ寝ましょうか。皆さん」
そう言ってベッドから腰を上げ、電気のスイッチのそばまで歩いていくのは、チェリル。
それぞれのベッドでは、私・リーリカ・ユピ・ミルミーがくつろいでいる。
そう。
二つのパーティで一室ということだったから、『フレンドライン』は『チェリミル』と同室で過ごすことになったのだ。
パチンと、チェリルが部屋の電気を落とす。
電気スタンドの淡い光だけが、暗い室内を照らし出している。
「さて、それでは皆さん、お休みなさいま――」
「ちょっと待ちなって、チェリル」
自分のベッドに戻って、布団に潜り込もうとするチェリルを、リーリカが制する。
「なんですの、リーリカさん」
「せっかくの合宿だっていうのに、こんなに早く眠っちゃうのは、もったいないでしょ」
「ですけど、そろそろ消灯時刻ですし……」
「真面目だなぁ、チェリルは。大丈夫だって、消灯はしてるんだから」
強引な説得をしてくるリーリカに嘆息して、チェリルはごろんと掛け布団の上でうつぶせの姿勢となった。
「はぁ……それで? 一体、何をするっていうんですの?」
「決まってるでしょ。合宿の夜といえば……ガールズトーク!!」
ガールズトーク!
合宿の定番っていうか、修学旅行とかだと欠かせないイベントのひとつだね!!
まぁ今までの人生では、欠かしてばっかりだったんだけど……それは置いといて。
「なんだかアリス、楽しそうなの」
棺桶の中からひょこっと顔を出して、ユピが言う。
「え、そ、そう? で、でも……うん。リーリカの言うとおり、寝るにはまだ早いっていうか。もっとみんなで盛り上がりたいなって」
「まぁ、皆さんがそうおっしゃるのなら……」
そして――ユピが棺桶から出てきたところで。
私たちは五人でベッドにうつぶせて、顔を寄せ合った。
「わー。なんか楽しみだねーチェリル?」
「べ、別にわたくしは、そんなに楽しみではありませんけどね!」
「チェリルとミルミーってすごく仲良しだよね」
「そうだねー。チェリルとボクは、ルミーユ学園に入る前からの付き合いだから」
「あ、そうだったの?」
「ミルミーのお父様と、わたくしのお父様は、昔からの友人でしたの。だからわたくしたちも、幼少期からお互いを知っておりましたわ」
「へぇ。幼なじみってやつなの」
幼なじみ!
いいなぁ、そういう関係。
小さい頃からお互いの良いところも悪いところも知っていて、それでもずっとそばにいられる……そんな関係。
私はなんだか羨ましくなって、思わず聞いてしまう。
「じゃあミルミーって、チェリルと小さい頃から、一緒に遊んでたんだ?」
「そうだねー。お医者さんごっことか結婚式ごっことか、色々したよねー」
「ま、まぁ、そうですわね」
「一緒にお風呂に入ったりとかも?」
「したしたー。洗いっことか、よくしてたよねー」
「ち、小さい頃の話ですからね!」
「もっと過激なことも?」
「ああ。それならチェリルが初めて――」
「ミルミぃぃぃぃぃぃ!!」
チェリルが悲鳴のような声を上げて、ミルミーの頭を布団に押しつけた。
リーリカが眉をつり上げて、「しー」と口元に指を当てる。
「ちょっとチェリル。騒いだら先生が来ちゃうでしょ?」
「だ、だって!? アリスさんが変なことを聞くからですわ!」
「あ、うん、ごめん……つい、調子に乗っちゃって」
「じゃあさー。今度は初恋の話とかしない? ボク、アリスちゃんの初恋とか聞いてみたいなー」
ガバッと布団から顔を上げて、ミルミーがニコニコしながら言う。
え、私?
私は思わず頬を引きつらせる。
「あー。それ、あたしも聞きたい!」
「アリスほどの美少女なら、モテモテだったはずなの。どんなことがあったの?」
リーリカとユピも、目をキラキラさせてこちらの顔を覗き込んでくる。
あ。うーんと。期待満々で見られてるところ、悪いんだけど……。
「ごめん。私まだ、そういうの、ないんだ……」
嘘じゃない。
私はこれまでの人生で、恋なんてしたことがない。
恋に憧れる気持ちはあるんだけど……オルタナギアに来る前は、ほら、見た目もアレだったし? そういうことをする資格が、なかったっていうか。
私なんかに目を向けてくれる相手がいるなんて、考えたことがなかったんだ。
「うっそだー。絶対あるよー。アリスちゃんほどの美少女が恋愛経験ないなんて、もったいないなー」
「嘘じゃないって。昔の私は、本当に大したことない子だったんだから」
「じゃあ、これから恋する予定はあるの?」
「んー、どうだろうね? でも私、あんまりクラスの男子と話す機会ないし。よく分かんないや」
「確かに。アリスってば、あたしたちとばっかり一緒にいるもんね。男子とか、縁遠いってレベルじゃないよね」
「それはリーリカも一緒でしょ。っていうか、リーリカこそ、好きな人とかいないの?」
「アリス」
即答だった。
「じゃなくって。恋愛的な意味でだって」
「…………まぁ。それは、ご想像に任せるわ」
「何その、含みのある言い方? 誰か気になる相手とかいるわけ?」
「いる……って言ったら、どうする?」
そう言って、リーリカは少し上目遣いに、私のことを覗き込んでくる。
なんでそんな目で、私のこと見てくるの?
「どうって言われても、それは――」
そのときだった。
ガタガタと、窓ガラスが音を立てはじめた。
私たちはびっくりして、一番隅のベッドの方へと移動する。
「な、なんですのお化け!?」
「お、落ち着いてチェリル!? ボ、ボクの首が絞まっ――」
「お、お化けじゃないよ。多分」
そう。
これは合宿や修学旅行にありがちな、あのイベントに違いない。
――気になる女子の部屋に、男子が忍び込んでくる的な、アレだ!




