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中二病を極めた私、異世界魔法を凌駕する  作者: 氷高悠
第2章 第2話「友達と先輩に取り合われる私、見てることしかできない」
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06 思わぬ幕引き

 ゴーレムが一匹残らず駆逐された頃。

 太陽はすっかり西に傾いて、空は茜色に染まっていた。


「おつかれさま、みんな」


 私たちが校庭に戻ると、そこには毅然とした態度で、カンナさんが立っていた。


「カンナさーん。なんで手伝ってくんないんすか?」

「わたしが行くまでもなく、君たちの力でなんとかなると思ったからね」

「ったく。相変わらず食えない人だなぁ」


 キサラさんはやれやれと、わざとらしく首を振る。

 しかし特に気にする様子もなく、カンナさんは淡々と告げた。


「それで? キサラ、リーリカ。決闘の続きは、どうする?」

「んなもん、今からできるわけないっしょ。疲れちゃいましたよ、うちは」


 キサラさんがため息をついて、リーリカの方に顔を向けた。


「ま。ゴーレムを倒した数だったら、うちの方が上だったけどね」

「……そうですね。やっぱりまだまだ、あたしはキサラさんに敵わないです」


 だけど、と。

 リーリカは疲れた顔のまま、深々と頭を下げる。


「すみません、キサラさん。あたしはやっぱり……アリスと離れたくないんです。大切な人なんです。ずっとずっと大好きな……と、友達なんです」

「わ、私だってそうです!」


 慌ててリーリカのそばに移動して。

 私もまた、深く深く頭を下げた。


 そして――心からの叫びを、口にする。


「お願いします! 私たちは三人揃って、『フレンドライン』なんです。リーリカが言ってたとおり、この三人でいるからこそ、私は全力で戦うことができるんです! だからお願いです……もう、私のことでリーリカと争うのは、やめてくださいっ!!」


「んー。いいよ」


 …………はい?


 今、なんて言った。この人。


「カンナさーん。今日の決闘って、引き分けってことでいいんでしょ?」

「ああ。引き分けの場合、必要に応じて再度のセッティングを行うことになる」

「んじゃ、再セッティングはパスってことで」


 あっさりと、そんな約束をカンナさんと交わして。

 ネコ耳みたいな髪の毛をぴょこんと揺らして、キサラさんはニカッと笑った。


「じゃ、アリス。さっきまでの話は、なかったってことで!」

「…………は、はぁ」


 私は思わずぽかんと口を開けて、呆けてしまう。


 いや、自分で頼み込んでおいてなんだけどさ。

 あんなに私に執心していた人が、こんなにあっさり引いてくるとは、思わなかったんだもん。


「リーリカも、それでいいっしょ?」

「え……で、でも。どうして?」


 リーリカも戸惑いがちに、キサラさんに尋ねる。


 そりゃそうだ。

 この数日間、この人のせいでさんっざん振り回されてきたんだもんね。


 唐突な幕引きなんてされたら、動揺くらいするって。


「そだね。アリスと組むより、面白そうなことを思いついたから……かな?」


 訝しむ私たちを尻目に、キサラさんはひょうひょうとした態度で。

 リーリカの肩に、ポンッと手を置いて――言った。


「ねぇ、リーリカ。うちと、パーティ組まない?」


「は?」

「え?」


 リーリカと私が、同時に声を上げる。

 後ろで見守っていた群衆も、キサラさんの荒唐無稽な発言に、大きくざわつく。


「それじゃあ、ひとまず決闘は引き分けで終了ということだね。わたしの立ち会いも、ここまでとさせてもらうよ」


 ただ一人カンナさんだけは、顔色ひとつ変えずに、淡々とした態度でその場を去って行った。

 相変わらず超然とした人だなぁ……。


「で、どう? リーリカ」


 そんなカオスと化した校庭で、なんか一人だけテンションの高いキサラさんが、ずいっとリーリカに顔を近づける。

 リーリカは引き気味に、キサラさんから距離を取って。


「な、なんで突然、あたしなんですか!?」

「や。さっき戦ってて、面白そうと思ったからさぁ」

「お、面白そうって……」


「やー。最初は魔法使いとコンビで、前衛・後衛ってがっつり決めちゃうのがいいかと思ったんだけどさ。さっきの戦いで、剣士同士で前衛特化型で攻める方が性に合ってるかもって。それで、それなら――リーリカ。あんたみたいに意思が固くて、気の強いタイプが好みだなぁと思ったわけさ」


 な……なんて……。

 なんて自由で、節操のない先輩なんだ……!!


 まるで気ままな猫みたい。


「えっと……それは、無理です」


 そんなキサラさんに、小声で応じるリーリカ。


「どして? うちと組んだら、楽しいよ?」

「確かにキサラさんは、剣士として憧れの人です。戦い方を教えてもらえたら、すっごく勉強になると思います。だけど……ごめんなさい」


 ちらっと、リーリカが私のことを見た。


 なぁに、リーリカ?

 私は小首をかしげながら、リーリカのことを見返した。


 するとリーリカは、ほっぺたを真っ赤なリンゴみたいに染める。

 そしてすぅっと、深く息を吸い込んで。


 意を決したように、キサラさんに向かって――言い放った。


「あたしには、心に決めた人がいるんです!」


 …………えっと。

 何その、愛の告白みたいなセリフ。


 そしてその相手って、ひょっとしなくても……私?


 ほっぺたが熱くなるのを感じながら、私はリーリカのことを見る。

 すると……リーリカもまた、私のことを見返して。



 ――――くしゃっとした、とてもかわいらしい顔で笑ったのでした。

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