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中二病を極めた私、異世界魔法を凌駕する  作者: 氷高悠
第2章 第2話「友達と先輩に取り合われる私、見てることしかできない」
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04 負けられないから

「二人とも。心の準備は大丈夫かな?」


 憎らしいほどの晴天の中。

 群衆に取り囲まれた校庭の一角で……カンナさんがそう告げた。


「問題ないっす」


 ひょうひょうとした調子で答えるのはキサラさん。

 ルミーユ学園の制服の両腰に、双剣を携えている。


 キサラさんは野獣のごとき眼光で、正面に立ち尽くす相手を見据える。


「リーリカ。君は?」

「は、はい」


 カンナさんに促され、立ち尽くしていた少女――リーリカは、ゆっくりと一歩前に踏み出した。


 キサラさんと同じく、ルミーユ学園の制服姿。

 右腰に備えているのは、愛用の長剣『ルクシアブレード』。

 そんなリーリカの瞳は……いつもより不安げに揺れている。


「リーリカ……」


 群衆の最前列に、ユピ・チェリル・ミルミーと一緒に並んでいる私は、ギュッと祈るように手を組んだ。

 もう無理だと分かってはいるけれど……このまま決闘がはじまらないでほしいと。

 そう願ってしまう。


 けれど、そんな望みが叶うわけもなく。


「キサラ。リーリカ。両名はこれより、ルミーユ学園の名のもとに、神聖なる決闘を開始する。両名とも、正々堂々と、全力を尽くして、戦いに挑むことを誓うか?」

「もっちろん!」

「はい」


 カンナさんの宣誓に、キサラさんとリーリカが応じた瞬間。



「それではキサラVSリーリカ――試合、開始!」



 バチリと。

 私たちの目の前で、火花が飛び散った。


 キサラさんが挟み込むようにして振り下ろした双剣を、リーリカが『ルクシアブレード』の剣先で防いだのだ。


「へぇ。一撃で決めてやろうって思ったのに、よく反応できたね」

「キサラさんがよく使う戦略ですよね、それ。知ってますよ……実際に戦っているところを、何度も見てきましたから」

「何それ。あんた、うちのファン?」

「そうですよ!」


 リーリカがキサラさんの双剣を弾き飛ばした。


 ステップを踏むように、後ろに下がるキサラさん。

 そんな彼女目掛けて――リーリカが剣を振り下ろす。


「おっと」


 それを紙一重で避けて。

 今度は双剣を重ねると、キサラさんはそれを横薙ぎに振るう。


 だけど……リーリカはそれを、剣の鍔で受け止めた。


「おおっ? これも読んでた?」

「それも見たことあります。だってあたしは、キサラさんのファンだから!」


 鍔を思いっきり持ち上げる。

 その結果、キサラさんの両手は顔の近くまで弾かれる。


 そうして空いた胴体目掛けて――リーリカが剣を薙ぐ。

 空を切る『ルクシアブレード』。


「っとと。あっぶな」


 瞬時にその攻撃を見切ったキサラさんは、跳躍してリーリカと距離を取っていた。


 わずか数秒間の攻防。

 だけど私には、それが永遠にも感じられた。


 見守っていた群衆も、思わず息を呑んでいる。


「ねぇリーリカ。あんた、うちのファンってマジ?」

「キサラさんに憧れない剣士は、ルミーユ学園にいないと思います。あたしもそうです。先輩みたいになりたくって、何度も戦い方を見て、勉強してきました。初めてお話しできたときは、心臓がバクバク鳴って張り裂けそうなくらい……嬉しかったです」


 剣を正面にかまえたまま、リーリカが告白する。


 それは間違いなく、リーリカの本心。

 リーリカはキサラさんに憧れていた。

 ううん……今でも、憧れているんだ。


「それなら分かるっしょ? アリスはうちと組んだ方が、力を発揮できるんだって」

「いいえ。アリスはあたしたちと一緒にいる方が、強いと思います」

「どうして? うちの実力は、知ってるでしょ?」


「アリスは、大切に思う人の前でこそ、全力を発揮できるんです。人一倍優しくって、友達思いな子だから。自分で言うのもおこがましいですけど……アリスはあたしとユピのことを、一番の友達だと思ってくれてます。だからアリスは、『フレンドライン』でこそ力を出すことができるって、そう思うんです」


「だから、アリスを渡さないっていうわけ?」

「いいえ。アリスを渡したくないのは、あたしがアリスを好きだからです。誰にも、渡したくないからです。たとえそれが――憧れの、キサラさんだったとしてもっ!!」


 叫ぶようにそう言って、リーリカはキサラさん目掛けて駆け出した。


「面白いねぇ、リーリカ!」


 舌なめずりしながら、双剣をかまえてリーリカを迎え撃つキサラさん。

 三本の剣が中空を踊り、火花が飛び散り、甲高い音が響き渡る。


 まるで剣劇のような、華麗で激しいぶつかり合い。


「すごい……リーリカちゃん、ボクとやったときとは違う! 落ち着いてキサラさんと渡り歩いてる!!」

「本番に強いですわね、リーリカさん。あんなに平静を失っていたというのに、今日は冷静にキサラさんと戦って……」

「……それがリーリカなの」


 驚きの声を漏らすミルミーとチェリルに、ユピが応える。


「きっと不安でいっぱいだけど、その不安も噛み殺しちゃってるの。大切な人を護りたい……その気持ちだけで、自分を奮い立たせているの」

「リーリカ……っ!」


 私のために、全力以上の力を出しているリーリカ。

 その姿に、私は胸が熱くなる。


 だけど――それでも。

 リーリカの実力は、キサラさんには及ばない。


「ほらよっと!」


 ――――キンッ。


そんな音が聞こえたかと思うと……弾かれた『ルクシアブレード』が、地面に突き刺さった。

 ドサッと、その場に尻もちをついてしまうリーリカ。


 くるくると二本の短剣を回しながら、キサラさんはそんなリーリカへと近づいていく。


「なかなかやるねぇ。久々に燃えちゃったよ」


 なんだか嬉しそうに笑いながら。

 キサラさんは一歩ずつ、リーリカを追い詰める。


「だけど……そろそろ、おしまい」


 終わりの宣告。

 それと同時に、キサラさんは双剣を振りかぶって――――。



「きゃああああああああああああああああああ!!」



 ――まさに、そのときだった。

 学園の外から、けたたましい悲鳴が上がったのは。

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