表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
中二病を極めた私、異世界魔法を凌駕する  作者: 氷高悠
第1章 第1話「中二病をこじらせた私、異世界に行く」
5/80

05 アリスの魔力測定

 そんなこんなで、リーリカとのお風呂イベントを終えて。

 私はセーラー服を着直して、髪の毛を乾かした。


 ふわふわと風に揺れる金髪は、太陽のように輝いていて。

 これが自分のものかと思うと――ニヤニヤが止まらないよ。うへへへ。


「ほら、アリス。そろそろ行くよー」


 既に用意を済ませたリーリカが、声を掛けてくる。

 パンッとほっぺたを叩いて気合いを入れると、いそいそとリーリカのところへ。


 そして私はリーリカに案内されながら、女子寮を出てルミーユ学園の校舎へと移動した。


 寮もかなり贅沢な造りだったけど、校舎の方はそれの比じゃない。

 中世の宮殿も裸足で逃げ出しそうなほど、豪華絢爛な内装をしている。

 宮殿なんて教科書でしか見たことないけどね。


 そんなことを考えつつ、螺旋階段を四階までのぼると。

 そこには『学園長室』と書かれた、大きな扉の部屋があった。


「ほら、アリス。心の準備はおっけー?」

「う、うん……多分」

「そんなに緊張しなくても大丈夫だって! アリスくらいの実力があれば、学園長も簡単に入学を許可しちゃうから」


 入学……そういえば、リーリカに流されるまま、忘れちゃってた。

 リーリカは私を、このルミーユ学園に入学させようとしてるんだよね。


 まぁ、どうせ妄想だし。入学しても全然かまわないんだけどさ。


 妄想……だもんね?


 こんなこと、現実に起こるわけないもんね。


「じゃあ行くよ、アリス」


 言うが早いか……コンコン。

 リーリカは学園長室の扉を叩いた。


「……入りなさい」

「はい!」


 元気よく返事をすると、リーリカは扉を開けて、学園長室に入る。

 私も慌てて、その後を追う。


 壁全体には、天井まで届くほどの大きさをした本棚。

 そこには難しそうな本が、隙間もないほど敷き詰められている。


 その中央――書類の束が積み上がった机に鎮座しているのは、初老の女性。

 厳しそうな目つきに、いわゆる『魔女っ鼻』。

 片眼鏡を掛けているその風貌は、いかにも厳格そうな感じだ。


「ごきげんよう、学園長。一年のリーリカです!」

「ええ、ごきげんよう。確か、剣士の子だったかしら?」

「はい。父のように立派な剣士になるべく、ルミーユ学園で勉強させてもらっています」


 へぇ。リーリカって剣士だったんだ。

 女性にしては背が高くて格好良い系なリーリカには、ぴったりなジョブかもしれない。


「それで、そちらの子は?」

「あ、はい。アリスです」

「アリス……聞いたことがないわね。何年生だったかしら?」

「学園長! アリスはまだ、ルミーユ学園の生徒ではないんです」


 怪訝な顔をする学園長に、リーリカは芝居がかった口調で語りはじめる。


 平原に佇んでいる、私と出会ったこと。

 そこに現れたドラゴンを、一撃のもとに消滅させたこと。

 その魔法は既存のものではなく、私自身が考えたものであること。


 中二病ノートである『シュバルツアリス』の存在については、さすがのリーリカも知らないので、語られなかったけど。


「……なるほど。よく分かりました」


 リーリカが語り終えるのを待って、学園長は重々しく告げた。


「それじゃあ、アリスはルミーユ学園に入学……」

「リーリカさんのおっしゃるとおりなら、確かにアリスさんは相当な才能をお持ちなのでしょう。おっしゃるとおりなら」

「……あたしを、疑っているのですか?」

「疑っているのではありません。ただ、学園長たるもの、言われたことを鵜呑みにして判断することはできないということです」


 そう言って学園長は、机の下からゴトンと何かを取り出した。

 体力測定のときに見たことがあるな、これ……握力計?


「これは魔力計です。魔力計を握れば、その者が持っている潜在魔力が数値として現れる。その数値を見れば、先ほどの話が本当か間違いなのか、一目瞭然です」


 ちなみに……と。

 学園長は魔力計を、ギュッと握った。


「――3100!?」


 学園長の叩き出した数値を見て、リーリカが目を丸くする。


「……その数値って、どれくらいすごいの?」

「何言ってるの、アリス! 普通だったら三桁が関の山。1000でも出そうものなら、天才と言っても差し支えないくらいよ!!」


「最低でも、1000は超えてほしいですわね。ドラゴンを一撃で倒した魔力とやらを、お見せくださいな」


 魔力計が手渡される。

 私はゴクリと、生唾を呑み込む。


「アリス、頑張って!」

「う、うん……」


 全然自信ないけど……取りあえず、やってみるしかない。

 ここまでお膳立てしてくれた、リーリカの期待に応えるためにも。


 ――――ギュッ。

 魔力計を、強く強く握り締める。


 お願い! どうか、それなりの数字よ出て!!

 私は祈るように、険しい顔で魔力計を見ている学園長に、目をやった。


「……れた」

「え?」


「こ……壊れたあああああああああああ!?」


 素っ頓狂な声を上げて、学園長は大きくのけぞった。

 その勢いでバランスを崩し、椅子から転げ落ちる学園長。


「きゅ……9999!?」


 リーリカもまた、魔力計の表示を見て大声を上げる。


「何この数値、見たことない! しかもプスプス煙が出てるし……」


「あ、あまりの潜在魔力に、魔力計の上限を振り切ったのです! アリスさんの魔力は測定不能! 9999を凌駕する、凄まじい力を持っているということです!!」


「何それ、すごい! あたし史上、最高だわ!! さすがはアリス!」

「あ、あの……えーっと」


 二人とも、盛り上がってるところ悪いんですけど。

 私はおそるおそる、元の目的に立ち戻って聞いてみる。


「学園長、私はルミーユ学園に入学できるんでしょうか……?」

「も、もちろんですとも! 入学を許可しま……じゃない! ぜひとも、入学してくださいませ! お願いですわ!!」


 入学許可どころか、こちらの方がお願いされてしまった……。

 まぁいいや。


 これで私も、晴れてルミーユ学園の生徒になれたってことだもんね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ