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中二病を極めた私、異世界魔法を凌駕する  作者: 氷高悠
第2章 第1話「グランゴーレムを倒した私、先輩に目をつけられる」
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06 力がすべて

「やっほー、アリス」


 翌日のお昼休み。

 お弁当を持って中庭に出ようとしていた私たち三人の前に、ひょこっとキサラさんが顔を出してきた。

 ここ、一年生の教室なんですけど。


「昨日の返事が聞きたくってさ。つい来ちゃった☆ で、どう? うちと一緒にパーティを組んでくれる気になった?」


 ネコ耳みたいな髪をぴょこぴょこと揺らして、キサラさんは上機嫌に笑う。

 そんな楽しそうな顔をされると、ちょっと心が痛いけど……はっきり伝えなくっちゃ。


 私は何があっても、パーティを変えるつもりはないんだって。


「キサラさん」


 私は意を決して、キサラさんの目を見つめる。


「何度もお誘いしてもらいましたけど、私は……」

「あ、やっぱりー? アリスもうちと、パーティを組んだ方がいいって思ってくれたんだ!」


 はい?

 私の言葉を遮って勝手なことを言い出したキサラさんに、私は思わず眉をひそめる。


 だけど喋り出したキサラさんは、止まらない。


「うんうん。うちが敵をばっさばっさと切り捨てて、最後は後ろからアリスの魔法。これで倒せない敵なんて、まずいないもんね。最強パーティの誕生だ!」

「あ、あのですね。キサラさん……」

「てなわけで、今日からよろしくっ! パーティ名は何がいいかなぁ。やっぱ格好いいのがいいよね」


 だめだ、この人。

 ぜんっぜん、こっちの話を聞く気がない。

 っていうか、思い込みだけで勝手に話を進めちゃってるよ……。


「待ってください、キサラさん!」

「ん?」


 そうして私が困り果てていると。

 唇をギュッと固く結んだまま、リーリカが一歩前に踏み出した。


 その肩は心なしか震えていて――思わず抱き締めてあげたくなる。


「確か……リーリカだっけ? 何か用?」

「昨日も言ったとおりです。アリスは絶対に、渡せません。渡したく、ありません」

「でも、アリスはうちと一緒になりたがってるんだよ?」

「それはキサラさんの思い込みです! アリスは、あたしたちと一緒にいたいって言ってるんです!」

「え……そうなの?」


 首をかしげるキサラさんに向かって、私は大げさに首を縦に振る。


「マジかぁ……まだ納得してもらえてないとは、思わなかった」


 ようやく私の気持ちを察したらしいキサラさんは、額に手を当てながら、ガクッと肩を落とした。

 ここまでやらないと分かってもらえないとか、本気で突っ走るタイプの人だな。この人。


 そんなキサラさんに向かって、リーリカはさらに言葉を続ける。


「分かってもらえましたか、アリスの気持ち。キサラさんの言いたいことも、分かります。だけどアリスの意思は、変わらないんです。だから申し訳ないですけど……これ以上アリスに付きまとうのは、やめてください!」

「んー……。アリスにふさわしいのは、うちより自分たちだって。そう言いたいのかな、リーリカは」

「そ、そうです! 力ではもちろん、キサラさんに及ばないですけど……」


 ありがとう、リーリカ。

 私の代わりに、キサラさんに思いを全部ぶつけてくれて。


 これでキサラさんも、きっと納得してくれるはず――。


「力は及ばないけど、アリスにふさわしいのは自分……なるほどねぇ」


 だけど、キサラさんは。

 不穏な笑顔を浮かべながら、リーリカの方へ近づいていく。


 そしてリーリカのあごをくいっと持ち上げて、自分の方に向き直らせると。


「ここはルミーユ学園。力がすべてじゃない?」


 ぞくっと。

 背筋が凍りそうな冷たい声で、キサラさんは告げた。


 そして唇が触れそうなほど、キサラさんはリーリカに顔を近づけて。


「強いもの同士が組んで、魔王グランロッサを倒すだけの実力を手に入れる。それこそがこの学園の至上命題。なのに、力が及ばないと分かっていてそばにいたいなんて……傲慢なんじゃないかなぁ?」

「そ、それは……」


 獅子のように鋭いキサラさんの眼光に、リーリカが言いよどむ。


 そんなリーリカの足元に――ザクッと。

 キサラさんの持つ双剣の一本が、突き刺さった。


 私もユピも、もちろんリーリカも、キサラさんの行動に目を見張る。


「あんたが一番アリスにふさわしいって言うんなら、力尽くでうちを黙らせてみてよ。そっちの方が、ルミーユ学園の生徒らしいってもんじゃない?」

「あたしが、キサラさんを……力尽くで?」


 リーリカが表情を失う。

 私とユピも、言葉をなくす。


 そんな私たちと、ざわざわと沸き立っている野次馬のみんなを、ぐるりと見回して……。

 キサラさんはきっぱりと、告げた。


「決闘を申し込むよ、リーリカ」



 ……なんてとんでもないことに、なっちゃったんだろう。

 凍りついた空気を肌で感じながら、私はぶるりと身体を震わせた。

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