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中二病を極めた私、異世界魔法を凌駕する  作者: 氷高悠
第2章 第1話「グランゴーレムを倒した私、先輩に目をつけられる」
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04 キサラさんの実力

 高い壁を飛び越えて敷地外へと消えたキサラさんを追って、私たちは慌てて門に向かって走っていく。


「な、なんのつもりなんだろう、キサラさんって人……」

「学園の外は、夜になったらモンスターがいっぱいいるの。危険なの!」

「…………」


 ユピの言うとおり、夜は学園外に絶対出ないよう、先生たちからも口酸っぱく指導されている。

 それだけ、危険があるってことなんだと思う。


 なのに――キサラさんは躊躇なく、その境界線を越えた。

 本当に破天荒というか、好き勝手な人というか。


「あ、アリス! あそこにキサラさんがいるの!!」


 門のあたりからきょろきょろと周囲を見回していると、ユピが真っ先に声を上げた。

 そちらの方を向くと、そこにはまさに、ゴブリンの群れに囲まれているキサラさんの姿があった。


「キサラさん!」

「お、来たね。後輩諸君」


 芝居がかった口調でそう言って、キサラさんはにかっと笑った。

 そして――両手に双剣をかまえる。


「『ドグリィ』と『マグレイド』――うちの相棒。こいつらがあれば、うちに敵なんてないんだよね」

「何言ってんですか! 早くこっちに戻って来てください!!」

「まぁ見てなって。うちの実力ってやつを。そして――惚れ込んじゃってよね。パーティを組みたいって思うほどにさ!」


 そう言い捨てて……キサラさんはゴブリンの群れ目掛けて、駆け出した!

 そして、跳躍。


 一匹のゴブリンを踏み台に、空中で一回転して、その背後に着地。

 反応の遅れたゴブリンたちに向かって、双剣を振り下ろす。


 リーリカの『ルクシアブレード』とは違い、キサラさんの武器は二本の短剣。

 クリティカルな威力は、発揮できないはず。

 なのに……。


「おっしゃあ、いっくよぉ!」


 キサラさんが一撃を振るうたびに、ゴブリンは地に倒れ、その動きを止める。

 一体、二体、三体……。

 ゴブリンの亡骸は、見る見るうちに積み上げられていく。


「すごい……短剣であんな威力を……」

「しかも、すごいスピードなの。まるで敵を寄せつけてないの」

「――『踊る閃光(ダンシング・レイ)』」


 リーリカがぽつりと、呟いた。


「キサラさんの二つ名。踊るように戦い、閃光のように敵を薙ぎ払っていく……すごい。これが学園一との呼び声も高い、キサラさんの剣技」


 戸惑いと羨望をない交ぜにしたような瞳で、リーリカはキサラさんを見ている。


 その視線の先で、キサラさんは踊るように。

 閃光のように。

 走り、跳躍し、切り裂き、また走り出す。


 うわぁ……これが、学園一の剣士の実力なんだ。


 そうして――キサラさんが数十匹のゴブリンを葬り去ったところで。


「ガアアアアアアアアッ!」

「ん? おっと」


 ガシッと。

 一匹のゴブリンが、キサラさんの脚を掴んだ。


 そしてそのまま、その鋭い歯を突き立てようと、大口を開ける。


「危ない、キサラさん!」


 私は思わず門を飛び出して、両手をクロスした。

 そして慌てて、禁断教典『シュバルツアリス』に書き記した呪文を詠唱する。


「氷河の大地を切り裂いて、凍てつく息吹で世界を包め――『雪の女王(エルディーナ)』!!」


 瞬間、凄まじい冷気が大地を駆けて。

 キサラさんの脚にしがみついたゴブリンも。

 その周囲にかまえていたゴブリンたちも。

 すべてを一斉に凍りつかせてしまう。


「おおー。やるねぇ、アリス」


 嬉しそうに笑いながら、キサラさんは脚にまとわりついた氷のゴブリンを、思いきりよく蹴飛ばした。

 ガシャンという音とともに、怪物は粉々に砕け散る。


「それそれ。その力が、うちは欲しいんだけどなー」

「……今のは、先輩が危なかったから手助けしただけです」


 あくまでもパーティを組む気はない。

 その意思表示をしながら、私はゆっくりと両手を下ろした。


 キサラさんの周囲で身動きをするモンスターは、もういない。

 ひとまずキサラさんの剣技と私の魔法で、近辺の敵は全滅させることができたみたい。


「こーんなに敵を圧倒するほど、お互い強いのに?」

「それをアピールするためだけに、自分から危険に飛び込んでいく人とは、パーティなんて組めないです」

「じゃあもうちょっと、おとなしくするからさぁ」

「そういう問題じゃないんです。私にはリーリカとユピがいるし、学年を越えてパーティを組むこと自体――」


「そこで何をやってるんですか!!」


 そのときだった。

 学園の敷地内から、聞き覚えのある声が聞こえてきたのは。


「ま、まずいの。寮母さんの声なの!」

「見つかったら、怒られるくらいじゃ済まないよ!」

「ああ。それなら、うちに任せて」


 軽い調子でそう言うと、キサラさんは跳躍し、私たちの真横に着地した。

 そして双剣をしまうと。


「ここはうちが引き受けるから、あんたたちは逃げな」


 ウインクなんかして、格好よくきめたつもりのキサラさん。


 いや、そんなことされましても。

 この状況のすべてが、キサラさんのせいですからね。

 ぜんっぜん格好よくないですよ?


「どーせ、うちは怒られ慣れてるし。気にせず行っちゃって」

「なんの自慢にもならないですね……」

「ああ。でもアリス。うちはまだ、諦めたわけじゃないからね? 誰とパーティを組むべきなのか、よーく考えといてねっ!」


 捨てゼリフのように、そう言い残して。

 キサラさんは寮母さんの方へと駆け出していった。


 私たちは三人で顔を合わせて頷きあうと、そーっと別方向へと歩き出した。

 申し訳ないけど、キサラさんには責任を取って、私たちの身代わりになって怒られてもらおう。



 はぁ……まったく、災難だったな。

 困った先輩も、いるもんだよね。

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