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中二病を極めた私、異世界魔法を凌駕する  作者: 氷高悠
第2章 第1話「グランゴーレムを倒した私、先輩に目をつけられる」
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03 学園一の剣士な人

「リーリカ。リーリカ!」

「目を覚ますの!」

「はっ!?」


 取りあえず硬直したまま動きを止めていたリーリカの目を、二人がかりで覚まさせる。


「あ、あたし、夢を見ていたの? なんだか巨大なプレゼントボックスの中から、キサラさんが飛び出してきて……あ、あはは。そんなこと、あるわけないもんね。ごめんごめん、寝ぼけちゃって……」


「うちなら、ここにいるよ」


「へっ!?」


 背後から聞こえてきた声に、リーリカは再び固まる。

 そして、ギシギシと首だけで振り返って。


「キ、キサラさん!? や、やっぱり本物!?」

「そゆこと。正真正銘、本物のキサラだよ、うちは」


 ネコ耳状の髪をゆらゆらと揺らしながら、キサラさんはにっこりと笑う。

 その笑顔に、リーリカは真っ赤になってしまう。


 うーん。なんだかリーリカ、いつもと様子が違うような……。


「剣士のリーリカにとって、キサラさんは憧れの存在なの。チェリルにとっての、カンナ様みたいなものなの」


 ユピがこっそり耳打ちしてくる。


 ああ、そっか。そうだよね。

 学園一の剣士なんて言われている人を目の当たりにしたら、同じ剣士として緊張しちゃうよね。憧れとか羨望とか、そういうので。


 だけど、学園事情に疎くって、剣士でもない私からすれば……。


「ま、それはいいとして。アリス? プレゼントなうちを、受け取ってくれる気になった?」


 ……この人は、意味不明な発言をする、得体のしれない先輩にしか見えない。


「いえ……すみませんが、よく分かりません」

「んー、察しが悪いなぁ。じゃあストレートに言っちゃうよ? アリス……うちと、パーティを組まない?」


 私のことをビシッと指差して、キサラさんは猫みたいに口を丸めた。

 突然の申し出に、私はぽかんと口を開けてしまう。


「わ、私とキサラさんが、パーティを?」

「そ。ほら、これでも一応、剣士としては有名だし? アリスにとっても、悪い条件じゃないと思うんだけど」

「で、でも。どうしてキサラさんが、私なんかと……」

「謙遜しちゃってさぁ。かわいいねぇ、後輩」


 ニヤッと口角をつり上げて、キサラさんは私の頬に手を添える。

 そして、唇が触れそうなほどに顔を近づけて。


「あんたがグランゴーレムを倒した話題で、学園中はもう持ちきりさ。一年生の魔法使いアリスといえば、誰もが振り向くレベル。カンナさんの再臨なんて、持ち上げてる人もいるくらいだっての」

「私がカンナさんの!? と、とんでもないですっ!!」

「意外と自己評価が低いんだねぇ。ま、最初はそれでもいいさ。うちが徹底的に鍛え上げて、自信をつけてあ・げ・る・か・ら!」


 そう言ってトンッと、私の胸に触れると。

 キサラさんはしな垂れ掛かるように、私の肩に頭を預けてきた。

 ネコ耳状の髪の毛から、爽やかなシャンプーの香りが漂ってくる。


「ね? だからさぁ、うちとパーティを組んでよ。悪いようにはしないから」

「だ、だけど。キサラさんにだって、他のパーティがいるんじゃあ……」

「いたこともあったけどねぇ。うちって割と自由人だから。なかなか合う奴がいなくって、今はフリーの状態さ」


 自由人っていうか、傍若無人って感じですよ。先輩。


 雰囲気からなんとなく察してたけど、この人――協調性とか、全然ないタイプなんだろうなぁ。


「で、でしたら私も、多分合わないと思いますし。それに学年を越えてパーティを組むなんて、聞いたことないですし」

「もー、細かいことをぐだぐだと! いいんだよ、そういうのは気にしなくって。細かいことは全部、うちがぶった切ってやるから!!」


 いやいや。ぶった切られても。

 さっきから何を言ってるんだ、この人は。


「ちょっ、ちょっと待ってください!!」


 どうやって断ったものか逡巡していると。

 私の後ろから、リーリカが大きな声を上げた。


 その声はどこか、震えているような。


「んー? 誰かな、アリスの友達?」

「アリスの友達で、パーティメンバーの、リーリカです!」

「ああ、『フレンドライン』とかっていうパーティの……そりゃあ、ちょうどいいや。ねぇ、リーリカ? うちにアリスをくれない?」

「あ、あげません!」


 気安い口調でとんでもないことを言うキサラさんに向かって、リーリカはきっぱりと言い放った。

 その返答が気に入らないのか、キサラさんは少し、ムッとした表情になる。


「どうして? だってアリスの実力と釣り合うカップルとなれば、うちを置いて他にないと思うんだけど」

「カ、カップ……!? だ、だめです! いくらキサラさんだとしても、アリスは渡せません! アリスは、あたしの大切な人だから!!」


 リーリカは、私の前に踏み出して。

 唇を噛み締めながら、震える身体で両手を広げた。


 絶対に私を護ってみせるって……そんな決意を滲ませながら。


「リーリカ。ありがとう」


 そんなリーリカのことを、私は後ろから抱きすくめた。

 リーリカはちょっと戸惑いがちな瞳で、こちらを見る。


「ごめんね、アリス。だけど、あたし……アリスと一緒に、いたくって……」

「ううん。いいんだよ、リーリカ。私だって、リーリカと同じ気持ちだから」

「アリス……」

「んー。そっかぁ」


 そうして、私とリーリカが、互いの体温を確かめあっているのを見て。

 キサラさんは困ったように、ぽりぽりと頭を掻いた。


「あくまでも、うちとパーティを組み直す気がないって……そう言うんだね、アリス?」

「はい。私はリーリカとユピと、三人でやりたいです」

「なるほどねぇ。だったら……」


 はぁ、と小さくため息をついて。

 キサラさんは両腰の双剣に手をかけた。


 そして――思いきり跳躍して、真横にあった大木の枝に着地する。


「意地でもうちとパーティを組みたいって、思わせてあげるから」

「意地でもって……どうするつもりですか?」

「そりゃあ、もちろん――こうさ!」


 そう宣言すると同時に。

 キサラさんは枝を蹴りつけて……。



 学園の敷地外へと、飛び出していった。

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