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中二病を極めた私、異世界魔法を凌駕する  作者: 氷高悠
第1章 エピローグ
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エピローグ

「それではこれより、表彰式に移りたいと思います」


 あのゴーレム討伐訓練から三日後。

 休日を挟んで、今日から登校を再開した私たちは、全学年揃って校庭に集められていた。


 昨日・一昨日と、先生方はそりゃあもう、後始末が大変だったみたい。


 それも当然だと思う。

 まさか魔王グランロッサが、学園行事なんかに干渉してくるとは思わないもんね。


 それほどまでに、魔王グランロッサは――ルミーユ学園のことを恐れてるってことなんだろうか?


 魔王を討伐する戦力を育てるために作られた、対グランロッサ学園と呼んでも過言ではない、特別な場所。

 これからも、魔王グランロッサは――私たちに対して、牙を剥いてくるんだろうか?


「それでは、登壇してください。『フレンドライン』のアリス。リーリカ。ユピ」


 ――っと。

 物思いに耽っていた私は、学園長に名前を呼ばれて、慌てて意識を現実へと引き戻した。


 そして隣に立つリーリカ・ユピと目配せすると、歩調を合わせて校庭の前に設置された壇上へと登る。


「『フレンドライン』。貴方たちは、シルバーゴーレムを討伐するという訓練において、魔王グランロッサの遣わした凶悪なグランゴーレムと戦い……これを倒した」


 登壇すると、私たち三人をゆっくりと見回しながら、学園長は告げる。


「魔王グランロッサの計略を見抜けなかったのは、我々のミスと言わざるをえません。そのせいで貴方たちを危険に晒したこと、心よりお詫びいたします」

「い、いえ。あれは仕方ないっていうか、誰にも分かんないっていうか」


「そして……そのような非常に危険な状況にもかかわらず、自分たちの力でこれを制圧した。この実力を評価せずして、何を評価するというのでしょうか」

「そのとおりですわ!」


 校庭の真ん中の方から、聞き慣れた偉そうな声が聞こえてきた。


「チェリル……」

「悔しいですけど、今回は負けを認めざるをえませんわ。あの状況下で、わたくしたちを助けた上に、あんな化け物を倒したのですから」

「ボクもそう思う! シルバーゴーレムなんてレベルじゃない怪物だったもんね。あれを倒したっていうんだから、すっごいと思うよー」


 チェリルに続いてミルミーも、にこにこ笑顔でそんなことを言ってくる。

 そんな二人の声に同調するように、校庭中から拍手の嵐が巻き起こった。


 拍手喝采、雨あられ。


 そんな夢みたいな光景に――私はそばにいるリーリカとユピのことを見た。

 リーリカもユピも、私を見て笑っている。


「それでは、こちらをお受け取りくださいませ。ゴーレム討伐訓練の最優秀パーティに贈られる、トロフィーです」


 学園長から渡された黄金色のトロフィーが、ずしっと私の身体にのし掛かる。


 その重みは、まるで今の自分たちにかけられている期待のようで。

 なんだかちょっと、プレッシャー……。


「アリス!」


 そんな緊張感を覚えている私に、リーリカが横から抱きついてくる。

 うわっと、危ないよリーリカ。

 トロフィー落としそうになっちゃったじゃない。


「ユ、ユピもなの!」

「きゃっ!?」


 今度は反対側から、ユピが抱きついてきた。

 またまたトロフィーを落としそうになって、慌てる私。


 そうして、両側からリーリカとユピに抱き締められ、正面にトロフィーを携えた状態になった私は。

 校庭中に集まったルミーユ学園の生徒一同から、再びの拍手喝采を受ける。


 大切な友達がそばにいて。

 びっくりするくらいの賞賛を受けて。

 私は思わず、涙ぐみそうになる。


 ――――元いた世界のことを、ふっと思い返す。


 机にかじりついて勉強しながら、ぼっちのまま毎日を過ごしていたあの頃。

 つまんない毎日だった。憂鬱で仕方ない毎日だった。


 それでも恋しくないかと聞かれたら……生まれ落ちた世界のことだからね。

 ちょっとはセンチメンタルにも、なるけれど。


「リーリカ。ユピ。二人とも、私と友達になってくれて……ありがとう!」

「当たり前でしょ。アリスはあたし史上、最高なんだから!」

「ユピだって! 噛んじゃいそうなくらい、アリスのこと大好きなの!!」


 それ以上に、この世界で得られた幸せが、大きすぎるから。

 オルタナギアに来て、人生を変えることができちゃったから。

 私は心から……この異世界に転移できて、よかったと思う。



「おめでとう、アリス」



 拍手の嵐を浴びながら、物思いに耽っていると。

 聞き覚えのある、鈴鳴りのように透き通る声が聞こえてきた。


 そして壇上に上がってきたのは――ルミーユ学園最強の魔法使いと呼ばれる先輩。


「カンナさん」

「アリス。この景色はどうだい?」


 カンナさんに言われて、私はもう一度――自分のことを褒め称えるみんなを見渡した。


「そうですね……控えめに言って、最高です」

「この景色を眺め続けるためには、君は勝利者であり続けなければいけない。それだけの才能が、君にはある」


 近くにいるのに、どこか遠くを見ているような。

 そんな深遠な瞳で、カンナさんは私のことを見つめてくる。


「……みたいですね」


 私はじっとカンナさんを見返して、小さく頷いた。


「頑張ります。私にどこまでできるか分からないですけど……頑張り続けてみせます。そしていつかは、私もカンナさんみたいに」

「――待っているよ。アリス」


 私の言葉を、最後まで聞くことなく。

 カンナさんはくるりと背を向け、壇上から降りていった。


 その後ろ姿を、私は見送り続ける。


「アリス」


 そんな私の腕に自分の腕を絡めて、リーリカが笑う。


「あたしは、アリスを信じてるよ。いつか絶対に、ルミーユ学園のトップに立つって」

「ユピだって、そうなの」


 ユピも反対の腕に、自分の腕を絡めてくる。


 ――――ありがとうね、二人とも。




 この世界で、これからも頑張っていこう。


 リーリカやユピと一緒に。

 チェリルやミルミーと切磋琢磨しながら。


 そして、もっともっと強くなって、いつかは――。


 学園で一番の魔法使いになってみせる。

 カンナさんのもとまで、辿り着いてみせる。

 そして必ず、魔王グランロッサの魔の手から……この世界を救い出してみせるから。



 中二病からはじまった、私の異世界冒険譚。

 それはまだまだ、終わらない。

皆さまの応援のおかげで、ここまで書き上げることができました。

感想・評価・ブックマーク……いずれも励みになります!


ストックが溜まるまで、いったん毎日更新は終了とさせていただきます。

連載再開まで少々お待ちいただけますと幸いです。

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