中二病なわたしが、この異世界を変える
今回は???視点の短編です。
わたしは、学校へ行くのが嫌いだった。
他人と関わり合いになることが嫌いだった。
「どうして?」と聞かれると困る。
だって何か、原因があったわけではないのだから。
いじめ。失恋。虐待。などなど。
人というのは、どうして理由を欲しがるのだろう?
決まっている。理由付けをしないと、自分の認識が追いつかないからだ。
そうして他者を理解しようとするふりをして、自身の安心感を得たいだけなのだ。人間っていう生き物は。
愚かしい。
くだらない。
だからわたしは、学校が。他人が。人間が……嫌いで嫌いで、仕方なかった。
周囲との調和を求めて寄ってくるクラスメートも。
対人関係を心配してくる先生も。
黙ったまま何も話さない娘に、おろおろするばかりの両親も。
愚かしくて。
くだらなくて。
嫌いで嫌いで……仕方なかった。
だからわたしは、引きこもった。
学校へ行くのをやめ。他者と関わることを拒み。
『部屋』という、わたしだけの楽園に籠もることを選んだ。
だけど、世界は常にわたしに干渉してくる。
楽園に籠もっていても、その扉の向こうから、世界はわたしを浸食し続ける。
「ここを開けなさい!」
「みんなも、あなたのことを心配してるんだよ」
「お願いだから、顔を見せて……」
鬱陶しい。
どうして世界は、わたしを放っておいてくれないんだ。
わたしをふるい落としたのは、世界の方じゃないか。
調和を強要し、コミュニケーションを美徳とし。
それを拒む者に生きる道がないと示したのは、お前たちの方だろう?
なのに、どうして――。
「……クソゲーだ」
電気を消したまま、カーテンを閉め切ったわたしの楽園。
パソコンが照らし出す明かりだけが、わたしのことをぼんやりと包んでいる。
「この世界は、クソゲーだ」
誰にともなく呟きながら。
ドンドンと扉を叩く音をシャットダウンするために、ヘッドフォンをかぶる。
耳に流れてくる、聞き慣れたアニメソング。
音楽だけが、わたしの中を満たしていく。
そしてわたしは、腰元まで伸びきったぼさぼさの髪をいじりながら、夢想する。
この世界を一瞬で消滅させる魔法を。
あるいは、この世界を一変させる魔法を。
妄想する。妄想する。妄想する。妄想する。妄想する。妄想する。妄想する。
妄想する妄想する妄想する妄想する妄想する妄想する妄想する…………。
そうして、引き込もってから三年という月日が流れたある日。
わたしが目を開けると、そこには見たこともない景色が広がっていた。
辺り一面に広がる、草の絨毯。
青々とした緑の香りが、わたしの鼻腔をくすぐる。
幻覚――じゃないな。
ここは、異世界だ。
わたしは異世界に、転移したんだ。
そう思った理由は特にない。
理由を求めること自体が愚かしい行為だから。
とにもかくにも、わたしは異世界転移をした。
そのこと自体には特に驚かなかったが、さすがに鏡に映った自分を見たときは、声を上げてしまった。
だってそこには、絶世の美少女が立っていたのだから。
三年間伸ばしっぱなしでぼさぼさだった髪は、流麗な青い髪に変わっており。
細くてしょぼしょぼとしていた瞳は、ややつり目気味だけど大きな瞳に変わっており。
身長は高く。胸は豊満で。整った顔立ちをしていて。スタイルも抜群で。
欠点しかなかった『わたし』が。
並外れた美貌を持つ、わたしになった。
それだけでもすごいことなのに……さらにわたしは、魔法を手に入れた。
妄想し続けて三年。
その魔法が、いとも容易くこの手のひらから発せられる。
しかも、わたしの使う魔法は――この異世界に存在する魔法を、軽く凌駕していた。
わたしが魔法を使うたびに、この世界の人間は驚き、賞賛の声を上げた。
それはまさに、奇跡だった。
世界を厭い。世界から切り離されて。ただ『部屋』という名の楽園で、朽ちていくだけだったはずの自分が。
並外れた美貌と、桁外れの魔力を持って、異世界にやって来たのだから。
「この世界を、クソゲーにはさせない」
わたしは小さく呟く。
神様が与えてくれたこのチャンスを、逃してはいけない。
――この新たな世界には、『魔王』と呼ばれる存在がいるのだという。
この世界の人間が束になってかかっても、百年近くも倒せずにいるという、まさに魔王と呼ぶにふさわしい存在。
その魔王を倒すことこそが、わたしに与えられた使命。
『世界の救世主』となることこそが、わたしに授けられた役割。
そう。
わたしこそが、この世界の救世主――すなわち、『神』になるのだ。
そしてわたしは、今日も自分の魔法を磨き続ける。
汗にまみれて、疲労に全身が包まれても。
わたしはまっすぐに前を見て、この世界で戦い続ける。
この世界を護るために、強くなってみせる。
だけど……わたしだけが強くなっても、意味がない。
魔王を倒し、世界を永遠の安寧で包み込むためには。
この世界の民にもまた、強くなってもらわなければ。
だからわたしは――この世界を護るために。
この世界にいる者たちを、より高みへと導いてみせる。
すべては、わたしが世界の救世主になるために。
――――神に、なるために。
次はアリス視点に戻って、第1章のエピローグとなります。
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