02 チームワークは絶好調
先生が合図を鳴らすと同時に。
各パーティは散り散りになって、アルミラの森の中へと消えていった。
風に揺られて葉音を鳴らす、深く暗い森。
先生やカンナさんの話によると、この森の奥には大量の魔物で溢れているらしい。
「リーリカ。ユピ。気を抜かずにいこうね」
「もっちろん!」
「が、頑張るの!」
そうして声を掛け合ったのと、ほぼ同時。
草むらがガサガサと揺れたかと思うと――巨大な影が、私たちに向かって襲い掛かってきた!
視認する。
それは……土色をした、一体のゴーレム。
「さぁてっと。それじゃあ、はじめましょうかね!」
私とユピを後ろに下がらせると、リーリカが腰にぶら下げた大剣を引き抜いた。
赤い鍔をした、女性が持つには大柄なその剣の名は――『ルクシアブレード』。
リーリカ愛用のロングソードだ。
「あたしの剣技、見せてあげるわ!」
得意げにそう言ってのけると、リーリカは地を蹴りつけて、中空に飛び上がった。
そして、振り下ろされるゴーレムの腕をするりと避けて――横薙ぎにその腕を切りつけた!
「グオオオオオオオオッ!」
ゴーレムが地を震わせるような怒声を上げる。
そんなゴーレムの足元に、ザクッと。
数本の矢が突き刺さった。
矢を打ち出した先にいるのは――ユピ。
ぷるぷる震える両腕でかまえているのは、ユピが母から譲り受けたという銀色の弓『ピルピッドユピ』だ。
「はぅぅ……外しちゃったのぉ」
「ユピ! 弓を射るときは、目を瞑っちゃだめだってば!!」
恐がりなユピは、弓を射るときに目を瞑っちゃう癖があるんだよね。
そのせいでなかなか、狙った標的に当てることができない。
まぁ……あれだけゴーレム討伐を嫌がってたユピだからね。
一朝一夕で、戦いが上手になるわけもない。そんな簡単に実力が身につくんなら、私もかつて体育の時間に苦労しなかったと思うよ。
だから――ユピは取りあえず、そのままで大丈夫。
一瞬でも敵の足を止めてくれれば、それでいい。
「右手に勇気を、左手に涙を。握り締めた二つの心は、ひとつに重なり一閃の『正義』となる。瞬け、私の二律背反――『蝋細工の十字架』!!」
リーリカとユピが作った隙をついて、私が呪文の詠唱を終えた。
それに呼応するように、ゴーレムの背後から十字架がせり上がってきて――その身体を磔にする。
そして振り下ろされる、炎の鉄槌。
その強烈な一撃をまともに喰らって……ゴーレムは、塵となって消滅した。
「やったぁ! さすがはアリス!!」
「すごいの、鮮やかなの!」
リーリカとユピが、離れたところから拍手を送ってくる。
えへへ。そんなに褒められると、照れちゃうんだけどね。
「まず、あたしが切り込み隊長を務めて」
「ユピが、後方射撃で敵の動きを抑えるの」
「そして最後に、私が魔法で一撃必殺……うん。短い期間で練った作戦にしては、結構うまくいったね」
三人で手を握り合い、勝利の余韻を噛み締める。
と――喜びもつかの間。
一本の大木が、ボキリと折られて。
その向こうから、三体ほどのゴーレムが姿を現した。
「ひぃぃ……いっぱい来たのぉぉぉ……」
「落ち着いて、ユピ。さっきと同じ作戦でいけば、だいじょーぶだからっ!」
言うが早いか、リーリカが『ルクシアブレード』をかまえて、敵陣に向かって突っ込んでいく。
三体のゴーレムによる、豪腕攻撃。
しかしリーリカは、紙一重ですべての攻撃をかわしていく。
すごい! さすがは、剣の腕だけなら学年でもトップクラスの実力者!!
「ユ、ユピだって! 頑張るのぉ!!」
リーリカの気合いに触発されたのか、ユピも『ピルピッドユピ』をかまえて、ゴーレムをまっすぐに見据える。
閉じそうになる瞳を、頑張って開いて。
「当たれぇぇぇぇぇ!!」
ユピの腕から放たれた、三本の矢。
今度はそのすべてが――三体のゴーレムの脚を捉える。
地を轟かせる、ゴーレムたちの咆哮。
その隙に、再び私は呪文の詠唱を開始して――。
アルミラの森を進むたびに、ゴーレムたちが何度も何度も立ちはだかってくる。
だけど私たち『フレンドライン』の三人は、怪我ひとつ負うことなく、森の最深部へと進んでいく。
最初はこわごわだったユピも、次第に自信をつけてきたみたい。
目を瞑っちゃうこともなくなって、なんだか笑顔が増えてきた気がする。
リーリカは最初から変わらず、余裕の笑みを浮かべながら、恐れることなくゴーレムに斬りかかっていくし。
なんだろう、この調子だったら。
本当にシルバーゴーレムを、倒せちゃうかもしれない!




