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中二病を極めた私、異世界魔法を凌駕する  作者: 氷高悠
第1章 第6話「パーティを組んだ私、ゴーレム討伐に挑む」
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01 ゴーレム討伐訓練、開始!

『フレンドライン』を正式に結成した翌日。

 私とリーリカとユピは、大急ぎでコンビネーションを組み立てていった。


 なんせ、明日が本番――ゴーレムの潜む『アルミラの森』に出陣する日なのだから。


 とはいっても、不思議と私の心に不安はなかった。

 多分リーリカとユピも、そうなんじゃないかな?


 この三人なら、きっとできる。

 アルミラの森の深層部まで辿り着いて……親玉であるシルバーゴーレムを、必ず仕留めてみせる。


 そんな確信にも似た気持ちが、芽生えつつあったから。




「ごきげんよう。アリスさん」


 そして迎えた、討伐訓練本番の日。


 私たちが三人揃って校庭へと向かっていると、チェリルが得意げな顔をしながら近づいてきた。

 その後ろには、いつもどおりの笑顔なミルミーもいる。


「どうですの? そちらの調子は?」

「うん。絶好調だよ」

「へぇ。ユピさんは戦う気になったのかしら? あんなに怖がっていたのに」

「もう大丈夫なの。ユピは……アリスたちと一緒に、頑張るって決めたの」


「見てなさいよ、チェリル。シルバーゴーレムを倒して表彰されるのは、あたしたちなんだからね!」

「大口を叩いて、後で恥をかくのはそちらじゃなくって? リーリカさん」

「こっちには、学年一の魔法使いアリスがいるんだからね。負ける気がしないわ」


「わたくしのことをお忘れではなくって? このゴーレム討伐訓練に勝利して……わたくしは再び、学年一位へと返り咲くのですわ!」


 おーっほっほっほ、なんて。

 チェリルはマンガみたいな高笑いをしはじめる。



「楽しそうだね。チェリル」



 そんな空気を一刀両断する、透き通るような声。

 私たちはもちろん、校庭へと向かっていた一年生の誰もが、一斉に足を止める。


 まるで時間が静止したかのような空間。

 その空間を――優雅に、気高く。


 カンナさんは、ゆったりとした足取りで、歩いてくる。


「カ、カンナ様!?」

「ど、どうしてカンナ様がここに!?」

「一年生が、初めてのゴーレム討伐に向かうと聞いたのでね。先生にお願いして、見送りに来させてもらったんだよ」


 どよめく一同に対して、落ち着き払って答えるカンナさん。

 相変わらず、カンナさんは大人びていて神々しくて。


 まるで――この世の人ではないかのように、錯覚してしまう。


「アリス。久しぶりだね」

「は、はい。お久しぶりです」


 柔和な笑みを浮かべるカンナさんに、慌てて会釈をする。


「アルミラの森は、魔物たちの巣窟。かつては『禁断の森』と呼ばれていた場所。今でこそルミーユ学園が結界を張って、その侵攻を防いでいるけれど……ひとたび足を踏み入れれば、魔物たちが跳梁跋扈する危険地帯なんだよ」


 カンナさんは私たちを見渡しながら、凜とした声で告げる。


「もちろん、これは訓練だよ。ルミーユ学園が全力をもって、君たちの安全に配慮してくれている。だけど……魔物との戦いに、絶対はない」


 絶対はない。

 つまり――百パーセント、命が保証されるわけじゃないってこと。


 当たり前のことなのに、カンナさんに言われるまで、頭の中から抜け落ちていた。


 それは私だけじゃなく、みんなもそうだったらしい。

 カンナさんの言葉に、周囲が一斉にどよめく。


「戦いとは常に危険と隣り合わせだということを、どうか忘れないでほしい。死なずに帰ってくることも、戦いだよ。自分たちの命を大切にしながら――できうる限りの戦果を上げる。それこそがこの、ゴーレム討伐訓練で学ぶべきこと。わたしは、そう思う」


 たった二歳しか変わらないというのに、カンナさんの言葉はとても重くて。

 気付けば一年生はみな、カンナさんの話に聞き入っていた。


 ――やっぱりすごいな。カンナさんは。


「わたくしは、絶対に死にません」


 そんなカンナさんに。

 一人の優等生が、きっぱりと返事をしてみせる。


 ボブカットの黒髪を揺らしながら、指先で眼鏡をくいっと直しながら。


「わたくしはミルミーと二人で、必ず帰ってきます。シルバーゴーレムを倒して」

「いい気概だね。チェリル」

「ええ。わたくしはいずれ、カンナ様のようになりたい。そのためには――こんなところで、負けてなんかいられませんから」


 チェリルは決意に満ちた目でそう言うと、私の方に向き直った。

 そして――すっと右手を差し出す。


「負けませんわよ、アリス。わたくしとミルミーのパーティ『チェリミル』が……必ずやシルバーゴーレムを討伐してみせます」

「ふんだ! あたしたち『フレンドライン』が、負けるわけないんだからね!!」


 私の後ろから、リーリカが相変わらず強気に言い返す。

 もぉ。すぐケンカ腰になるんだから、リーリカは。


 だけど――私もユピも、気持ちは一緒だよ。きっと。


「どっちがシルバーゴーレムを倒せるか、勝負だねチェリル。お互い、頑張ろうね」

「……上等ですわ」



 かくして。

 ルミーユ学園一年生による、ゴーレム討伐訓練が――はじまった。

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