04 お買い物に行こう!
そして、放課後。
私はリーリカとユピを連れて、ルミーユ学園の敷地から十分ほど離れたところにある、小さな街へとやって来た。
「早く練習しないといけないのに……」
なんて、リーリカはぼやいてるけど。
「はぅ……人がいっぱいなの」
なんて、ユピは私の後ろにこそこそ隠れてるけど。
私は気にせず、街中へと向かっていく。
――私がユピを励まそうと、思いついた作戦。
それは「三人で仲良く買い物をして、親睦を深めよう作戦」だ!
元ぼっちの私の勘だけど、ユピはゴーレムが怖いってだけで、こんなに嫌がってるんじゃないと思うんだよね。
人見知りが一番恐れるのは、「自分のせいで足を引っ張ってしまう」こと。
そして――「そのせいで相手に嫌われてしまう」こと。
足を引っ張って嫌われちゃうくらいなら、最初から参加しない方がいい。
私が常々、体育の時間に感じていたことだ。
そんなトラウマを思い起こしながら考えるに……。
ユピは多分、ゴーレムが怖いのと同じくらい。
私とリーリカの足を引っ張って、嫌われちゃうことを恐れてるんだと思う。
……私とリーリカが、そんなことでユピを嫌うわけ、ないのにね。
そのことをユピに分かってもらいたい。
私たちにとってユピは、そんな簡単に嫌いになれないくらい――とっても大切な、友達なんだって。
……というわけで、思いきって三人で買い物に来たんだけど。
「きゃあ! ちょっとあれ見て、アリス! ユピ!!」
私とユピの袖を引っ張って、目をキラキラさせてるリーリカ。
視線の先には、色とりどりな服がたくさん飾られている。
「超かわいいっ! 絶対アリスにもユピにも似合うよ!」
リーリカってば、さっきまでのぼやきが嘘みたいに、はしゃいじゃってるなぁ。
まぁ親睦を深めるためなんだし、テンション上がってくれるのはいいんだけど。
「はぅ……ユピには、こういうのはちょっと、なの」
「なーに言ってんの! ユピは素材がいいんだから、何を着たってさまになるよ!」
ちなみにユピの普段着は、いわゆるゴスロリ風の黒いドレス。
さらさらの銀髪ツインテールに、透明感のある肌をしているユピには、とてもよく似合っているのだけど。
「私も見てみたいなぁ、ユピがイメチェンしてるところ」
「な!? アリスまで、リーリカに合わせないでなの!」
「いいじゃない。減るものでもないし」
「さぁ、話は決まったわね! ユピ、行くわよ!!」
そんなこんなで、私たち三人は服飾店に入っていった。
ユピは最後まで、抵抗を示してたけど。
そしてリーリカの提案により……私たちはそれぞれ、いつもと違う格好をしあってみようということになった。
試着室に入って、私は着慣れたセーラー服を脱いでいく。
いきなり異世界転移してきた私は他に服を持っていなかったので、私服のときは当時のセーラー服を着てる。
ちょっとダサいかな……なんて最初は思ってたけど。
セーラー服ってジャンルがオルタナギアでは物珍しいらしく、割とみんなから好評だったりする。それに気をよくした私は、そのまま着続けているってわけ。
だけど、たまには――ちょっとおしゃれするのも、いいよね。
「アリス! ユピ! 着替え終わったぁ?」
隣の試着室から、リーリカが声を上げる。
テンション絶好調だなぁ。リーリカらしいっていうか、なんていうか。
私は急いで背中のチャックを締めて、試着室のカーテンを開ける。
そこに立っていたのは――白いワンピースを身に纏った、リーリカの姿だった。
普段は銀色の胸当てのついたプレートアーマーという、剣士らしい格好をしているリーリカだから、こういうフェミニンな格好は珍しい。
「どう、アリス? あたしも満更じゃないでしょ?」
「う、うん」
満更じゃない、どころじゃないっていうか。
すらりとしたスタイルのリーリカに、ノースリーブの白ワンピの取り合わせは、正直刺激が強すぎる。
セクシーな妖精、って感じ。
「きゃああああ!! アリスってば、何その格好!?」
一方の私はというと。
ピンクのふりふりなコスチュームに、ブーツを履いて。
ゆるふわ金髪の上には、ティアラを装着している。
気分はそう――お姫様!
「うふ……うふふ。あたし史上、最高だわ……最っ高のかわいさだわ!! ちょっとアリスさん、あたしのお嫁さんになりません?」
「ちょ、ちょっとリーリカ! 血! 鼻血が出てるって!!」
ぽたぽた鼻血を垂らしはじめたリーリカの顔に、慌てて手を当てる。
真っ白な服着てるんだから、まずいって!
「二人とも、なんだか盛り上がってるの」
シャッと、試着室のカーテンが開いて。
いつもと違う服に着替えた、ユピが出てきた。
――――服?
服って言うのか、これ?
「きゃああああん! ユピも超絶、かわいいっ!! ねぇ、アリス。アリスもそう思わない?」
「う、うん。かわいいけど……なんで熊?」
ユピが着ているのは、いわゆる着ぐるみ。
クマ。ベアー。
頭から足の先まで、薄茶色のもこもこした生地のクマ着ぐるみを着込んだユピは、童顔と合わさって――お遊戯会に出る予定の、子どもみたいだった。
つまるところ、めちゃめちゃかわいい。
庇護欲をそそる、圧倒的な愛らしさだった。
「ほ、ほら。熊も人のこと、噛むの。だからユピに似てるかなって」
「いやいや。熊は噛むってレベルじゃないよ。食べられちゃうよ」
「むしろあたしが食べちゃいたいくらいだわ、この熊さん!」
「リーリカは何を言ってるのか分かんないよ……」
そんな感じで、リーリカは終始ご機嫌で。
私もみんなと盛り上がれて楽しかったんだけど。
やっぱりユピは――まだ浮かない顔。
うーん。どうにかしないとなぁ。




