02 パーティを組もう
「来週末の授業は、パーティによるゴーレム討伐訓練になります。それではこれから、二人~三人のパーティを組んでください」
ガタンッ!
私は動揺のあまり、椅子から転げ落ちそうになってしまう。
二人~三人のパーティ? それを自由に組め、ですって?
どうしてそんな、残酷なことを言うの!?
『はーい。それじゃあ○人組のグループを作ってくださいー』
オルタナギアに来る前の、苦い思い出が脳裏をよぎる。
グループ作り。それは、ぼっちにとっての死刑宣告。
最後まで一人残されて、結局は先生と組む羽目になるばかりの人生だった。
あー、トラウマが蘇ってくるー。
頭を抱えて、私は机に肘をついた。
――そんな私の肩を、誰かが叩く。
「アリスさん! 私と、パーティを組んでくれない?」
「ふぇ?」
「あーずるい! わたしも!! わたしも、仲間に入れて!」
「俺も俺も!」
「僕も僕も!」
「ちょっとぉ! 人数オーバーになるじゃない。一番最初に声を掛けたのは、私なんだからね!」
……何これ。
これまで見たこともない光景に、私は思わず首をひねる。
なんだか、私の知ってるグループ作りと違うぞ?
先生と組むんじゃなかったの、私?
いつの間にかクラスメート全員が私を取り囲んで、自分が自分がと言い争う、地獄絵図と化してるんだけど。
「あーら、アリスさん。お困りのようね?」
椅子に座ったまま硬直している私。
そこに、クラスメートの波を掻き分けて――チェリルが近づいてきた。
「何を呆けているのかしら? ひょっとして、誰を選ぶべきか、悩んでいるのではなくって?」
いや、そうじゃなくって。
この大混乱の原因が自分だという事実に、ただただ唖然としてるっていうか。
「ふ、ふん。そんなにお困りなのでしたら……わたくしが貴方と、組んであげてもよくってよ?」
「はい?」
「か、勘違いしないでちょうだい! わたくしは別に貴方と組みたいというわけではないのだけれど……貴方が困っているようだから! 仕方なく! 組んであげると言っているのよ」
「チェリルは、素直じゃないよねー」
「ミルミーは黙ってて!」
顔を真っ赤にして腕をぶんぶん振るうチェリルを、にこやかにあしらうミルミー。
「でもまぁ、ボクもアリスちゃんなら大歓迎! チェリルとボクと、三人でパーティを組もうよ」
「あ、えっと……」
「すとっぷ、すとーっぷ!」
そんなミルミーの誘惑を、打ち消すように。
リーリカが私の腕を取って、自分の方にぐいっと引き寄せた。
「絶対だめ! アリスはあたしのものなんだから」
「ちょっ、リーリカ……近いって」
リーリカの小ぶりな胸の感触が腕に伝わってきて、なんだか気恥ずかしい。
だけどリーリカときたら、そんなことこれっぽっちも気にしてない様子で。
さらに私の腕に身体を寄せてきた。
そして――上目遣いに私を見て。
「アリスは……あたしと一緒じゃ、いや?」
うわぁ。なんて小悪魔フェイス。
同性だけど、抱き締めたくなるほどかわいい。
「アリス……」
「い、いやなわけな――」
「ちょっとお待ちなさい! リーリカさん、先に声を掛けたのはわたくしですわよ? 横入りはずるいですわ!!」
「順番とか関係ないでしょ! 誰を選ぶかは、アリスが決めることなんだから」
「ちょ、ちょっと二人とも、落ち着いてなの……」
リーリカの後ろからひょこっと顔を出し、ユピが眉をひそめる。
ミルミーも同じく、「やれやれ」と肩をすくめてるし。
……やっぱりこれ、私の知ってるグループ作りと違う。
そうだよね。
オルタナギアに来て、私は変わったんだ。
今の私は、冴えないぼっちの有栖田真子じゃなくって、一年生トップの実力派魔法使いアリス。
もう、売れ残りになる心配なんてないんだ。
むしろみんなから、引っ張りだこの状態なんだ。
そう考えると、なんだか感慨深いものが……。
「とにかく、アリスはあたしと一緒になるの! さんっざんアリスをいじめてきた、あんたになんか渡さないんだから!!」
「い、いじめてなんていませんわ! リーリカさんがなんと言おうと、学年一・二の実力を誇るわたくしたちが組んだ方が、絶対にいいに決まってますの!!」
「何よ!」
「なんですの!」
――――って。感慨に耽ってる場合じゃないや。
エスカレートしていくリーリカとチェリルの言い争いに、クラスは若干というか、かなり引いちゃってる。
さすがに止めないとまずそう。
「アリス」
そんな私のそばに、ちょこちょこと寄ってきて。
ユピはがくいっと、裾を引っ張ってくる。
「この事態を収められるのは、アリスしかいないの。どっちを生涯の伴侶に選ぶか、決めるときなの。リーリカか、チェリルか、どっちなの?」
「生涯の伴侶!?」
「ごめん、つい言い過ぎたの」
「ついって、レベルじゃないでしょ……びっくりするよ」
「だけど、少なくともこの件について、アリスは結論を出す必要があるの。アリスが決めないと、二人とも絶対に納得しないの」
どうしてこんなに事が大きくなってしまったんだ……。
思わず頭を抱えたくなるけれど。
きちんと言わないと。私の正直な気持ちを。
「リーリカ! チェリル!」
「え?」
「はい?」
ぎゃんぎゃん言い争いをしている二人に向かって、私は思いきって声を張り上げた。
そして、椅子から立ち上がり。
二人のことを、まっすぐに見つめて。
「私が……私がパーティを組みたいのは……っ!」




