君の秘密を、ミルミーだけが知っている
今回はミルミー視点の短編です。
ボクは、ミルミー!
ルミーユ学園の一年生で、『斧使い』を目指して絶賛修行中!!
体力は結構ある方だから、重たい斧だって、自由自在に振り回しちゃう。
男子にだって負けないよ!
勉強? ああ、そっちは……あはは。
椅子に座ってると、なんだか眠くなっちゃうんだよねぇ。
「そんなことでは、落ちこぼれてしまいますわ!」――なーんて。チェリルにはいつも、怒られてばっかりなんだけどね。
ああ、そうそう。
チェリルっていうのは、ボクのルームメイト。
ちっちゃい頃からの幼なじみで、十五歳になったのをきっかけに、二人で揃ってルミーユ学園に入学したんだ。
斧使いのボクとは違って、チェリルは魔法使い。
入学したての頃から、チェリルの魔法の実力はすごかったな。
その上、成績だってとびっきりいいんだから、本当に感心しちゃう。
成績優秀で、真面目な優等生で、ちょっと高飛車。
みんなにチェリルのことを聞いて回ったら、多分ほとんどの人がそう答えるんじゃないかな?
だけど……ね。
チェリルにはもっと、違う一面もあるんだよ?
それを――ボクだけは、知ってるんだ。
「よし……誰もいませんわね」
寮室の扉から顔を覗かせ、綿密に周囲を見回すと、チェリルは安心したように呟いた。
そんなに警戒しなくってもいいのに。
チェリルの必死な様子に、思わず苦笑しちゃうボク。
バタン。扉を閉めて、チェリルがこちらを振り返る。
「ミルミー。ふ、二人っきりですわね?」
「うん。二人部屋だもんね、ここ」
「そ……それでは、いつもの……お願いしても、いいかしら?」
頬を紅潮させて。声を上擦らせて。
チェリルはボクから視線を逸らしつつ、呟く。
もぉ。初めてじゃないんだし、そんなに恥ずかしがらなくたっていいのにね。
ウブなんだから、チェリルは。
「もっちろん。いつでも大丈夫だよ」
「あ……え、ええ。それじゃあ、お願いしますわ……」
消え入りそうな声でそう言うと――チェリルは、するすると服を脱いでいく。
ぱさりとスカートが落ちる。
白色の下着だけを身につけたチェリルが、もじもじと身をよじった。
「あ……あの。あんまり、じろじろ見られると、恥ずかしいのですが……」
「やだよー。だって恥ずかしがるチェリル、かわいいんだもん」
「うう……ミルミーの、いじわる」
満更じゃないくせに。
チェリルって本当、素直じゃないよね。
「そ、それでは、今日はこれで……」
そう言って。
チェリルはクローゼットを開け、奥の方に手を突っ込み、ごそごそとする。
ボクは取りあえず、ベッドの上にあぐらをかいて待っている。
――――そして。
「チェリル。準備はおっけー?」
「は、はい!」
やっぱり上擦った声で、そう答えると。
チェリルはボクの前に、躍り出てきた。
そして、前屈みの姿勢で腰をくねらせながら。
「な、なんでもチェリルに、お申し付けくださいませ――ご主人様ぁ」
メイド服姿のチェリルは……のりのりで、そんなセリフを言い放った。
上目遣いにこちらを見ている。反応を窺ってるみたいだ。
ボクはニコニコしながら、それに応じる。
「うん。そのコスチューム、ばっちり似合ってるよ」
「本当ですか? 嬉しいですぅ、ご主人様☆」
ぴょんぴょん飛び跳ねながら、チェリルが嬉しそうに笑う。
うん。
今日もやっぱり――コスプレしたチェリルは、かわいい。
成績優秀で、真面目な優等生で、ちょっと高飛車。
そんなイメージのチェリルだけど……みんなに絶対秘密な趣味が、あるんだよね。
それが、コスプレ。
色んなコスチュームを身に纏い、ポーズを決めたりセリフを言ったり。
それを、ボクだけは知っている。
「次はこれですわ!」
猫耳カチューシャ。
それに、白黒の縞模様の水着を合わせて。
「にゃあーん。チェリル猫だ、にゃん☆」
右手を舌先でぺろぺろ舐めながら、頭の悪そうなセリフを言ってのけるチェリル。
「ミルミー。なでなでして、にゃん☆」
「はいはい。チェリル猫は、かわいいねぇ」
「うにゃあーん……」
ごろごろとボクの膝を転がりながら、チェリルは満足げな顔。
「そんなとろっとろの顔、他の人には見せられないねぇ?」
「にゃ!? あ、当たり前ですわ! こんな趣味……恥ずかしくって、知られたら死んでしまいますの!!」
「ボクには自分から、積極的に迫ってくるくせに?」
「そ……それは。ミルミーは、いいんですの!」
頬を膨らませて、ぽかぽかとボクの胸を叩いてくるチェリル。
そんな所作が、いちいち愛おしい。
本当は、かわいい格好が好きなくせに。
本当は、かわいい自分になりたいと思ってるくせに。
人前ではキリッとしちゃって、「真面目な優等生」で居続けようとしている。
それが――ちっちゃい頃から知ってる、ボクの中のチェリル。
「ねぇ、チェリル。次はあっちの服は、どう?」
「え? あ、あれはちょっと、露出が激しすぎるのでは?」
「そんなことないよー。チェリルになら、きっと似合うと思うなー」
「だ、だってあんなの着たら、ほとんど裸……」
「いつも一緒にお風呂に入ってるボクに、それを言う?」
「お、お風呂と部屋では、恥ずかしさが違いますわ!」
いやいやと首を振るチェリル。
そんな彼女に、ずいっと顔を近づけて。
「いいのかなー? ボクってばついうっかり、チェリルの秘密……みんなの前で、ばらしちゃうかもー」
「な……!? お、脅す気ですの? そんなことされたら、わたくし……もう生きていけませんわ!!」
「だったら着てよー。ボク、あれを着たチェリルが見たいんだもん」
「も、もう。ミルミーったら……ちょ、ちょっとだけですわよ!」
顔中を真っ赤にして、チェリルはクローゼットの陰に隠れた。
コスチュームの擦れる音だけが、部屋中に響き渡る。
その、甘美な音に酔いしれながら。
ボクはふっと、まぶたを閉じる。
ちっちゃい頃から変わらない――ボクのチェリル。
大人になってもこうして変わらず、一緒にいることができるのかな?
先のことは分からない。分からないけど……。
「ミ、ミルミー……やっぱりこれ、恥ずかしいのですが……」
クローゼットの横からひょっこり顔を出して、今にも顔から火を噴きそうなチェリル。
そんなチェリルに、ボクはにっこり微笑んで。
「だいじょーぶっ。こっちにおいで、チェリル!」
恥ずかしがり屋で。本当はかわいいもの好きで。いつも一生懸命なチェリルが。
ボクは本当に――大好きなんだ。
次からは再びアリス視点の話に戻ります。
よろしければここまでの評価・感想など、よろしくお願いいたします!




