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中二病を極めた私、異世界魔法を凌駕する  作者: 氷高悠
第1章 第4話「引っ込み思案な私、試合に挑む決心をする」
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04 試合がはじまる

 翌日の放課後。

 私はリーリカとユピと一緒に、校庭へと向かう。


「い、いよいよなの」

「アリス、頑張ってね。あたしが誰よりも大きな声で、応援するから!」

「うん。ありがとう、二人とも」


 いつだって私の味方でいてくれる二人に、なんだか心が温かくなる。


 二人の応援に応えるためにも、私……頑張るね。


 そんな誓いを胸にしながら、校庭に辿り着くと。

 そこには既に、たくさんの人たちが集まっていた。


「あ、アリスさんだ!」

「主役の登場だわ!!」


 私の姿を見ると、校庭中がさらに沸き立つ。

 ……そんなに注目されると、ちょっと恥ずかしいけど。


「じゃあ、いってらっしゃい。アリス」

「ぜ、絶対勝つって、信じてるの!」


 リーリカとユピに、背中を押されて。

 私は意を決し、人波を掻き分けて校庭の中心へと進んでいく。


「遅かったですわね」


 すると、とっても偉そうな声が聞こえてきた。


 ボブカット風の黒髪を揺らしながら、腕を組んで立ち尽くしているのは――チェリル。

 ちっちゃな身体で、大きく胸を張って。

 銀縁眼鏡の向こうから、鋭い目つきでこちらを見ている。


 その右手に握られているのは、使い込まれた木製の魔法杖。


「こんなにゆっくりやってくるとは、随分と余裕ですわね。アリスさん?」

「いや、まだ約束の時間になってないし……」


 立会人のカンナさんだって来てないのに、せっかちな人だなぁ。


「ちょっとチェリル! 安っぽい挑発はやめなさいよ!!」

「そ、そうなの!」


 リーリカとユピの声が聞こえる。

 見ると、二人は観衆の最前列に陣取って、チェリルのことを睨みつけていた。


「実力でアリスに敵わないからって、言葉でちくちくと……みっともないわね」

「なっ!? わ、わたくしが実力で負けてるですって? 冗談じゃありませんわ。わたくしはアリスさんよりも、ずっとずっと優秀なんですから!!」

「どうだか。尻尾を巻いて逃げ出すなら、今のうちだよ!」

「きぃ!! 相変わらず腹立たしい人ですわね、リーリカさんは!」

「チェリル、チェリル。落ち着いて」


 顔を真っ赤にして地団駄を踏むチェリルに、優しい声が掛けられる。

 ミルミー。

 彼女はリーリカたちのすぐそばに立って、ニコニコといつもみたいに笑っている。


「実力うんぬんは、これから勝負で決着をつけるんだよ? 外野の言葉に惑わされないで、相手をしっかり見ないと。ね?」

「……こほん。ミルミーの言うとおりですわね」


 ミルミーの言葉で落ち着きを取り戻したらしい。

 チェリルは小さく咳払いをすると、リーリカたちの方から視線を外した。


 ……いつもほわほわした調子だけど、ミルミーって案外すごいよね。

 チェリルのことをよく理解して、きちんと導いてあげてるっていうか。


「まぁともかく……今日ここで、わたくしがアリスさんに勝っていることを証明してみせます。わたくし愛用のこの杖――『エッセンドロス』の前に、ひれ伏すがいいですわ」



「はじまる前だというのに、随分と盛り上がっているね」



 喧噪を切り裂くような、澄み渡った一声。


 その声を聞いた瞬間、ざわざわとしていた観衆が、一気に静まり返る。


 そして、左右にざっと別れた観衆の間を通って、彼女はゆっくりと歩いてきた。


 さらさらの青髪を揺らし、堂々たる態度で現れた――立会人のカンナさん。

 相変わらず、浮き世離れした美しさだ。


「二人とも。心の準備は大丈夫かな?」


 向かい合った私とチェリルを交互に見て、カンナさんが微笑んだ。


 心の準備――。


 チェリルと正面から、きちんとぶつかり合うこと。

 私の中二魔法で、異世界魔法を倒してみせること。


 大丈夫。

 もう迷わないって、決めたから。


 私を励ましてくれたリーリカのためにも。

 私の背中を押してくれたカンナさんのためにも。

 何より……真剣に私と向き合おうとしている、チェリルのためにも。


 私は本気で、チェリルと戦う。


「アリス。そしてチェリル。両名はこれより、ルミーユ学園の名のもとに、神聖なる決闘を開始する。両名とも、正々堂々と、全力を尽くして、戦いに挑むことを誓うか?」


「はい!」

「……はい!」


 チェリルと私が、互いを見つめ合い、同時に頷く。

 それを満足げに見やってから、カンナさんはゆっくりと右手を振り上げた。



「それではアリスVSチェリル――試合、開始!」

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