05 ラウンジでのプチバトル
そして午後の授業も終わって。
私はリーリカ・ユピと一緒に、女子寮のラウンジに帰ってきた。
「おかえりなさい、アリスさん?」
「げ」
思わず変な声が出ちゃった。
ラウンジの椅子に腰を掛けて、こちらを見つめているのは――チェリル。
そしてその傍らでニコニコ笑っているのは、ミルミーだ。
「明後日の放課後! 明後日の放課後に、いよいよわたくしたちの決着がつくというわけですわね!!」
「そ、そうだね……」
「言っておきますけど。わたくしは負けるつもりなんて、これっぽっちもありませんからね? 必ずや貴方を倒して、見届け人であるカンナ様に、わたくしの実力を認めていただくのですから!」
「チェリルはとっても、やる気満々だよー。アリスちゃんも、気合い入れてねー」
気合い……入んないよ、そんなの。
争い事が好きじゃないから、すっごく後ろ向きになってるんだもん。
「いい加減にしなさいよ、チェリル」
そんな私の前に立ちはだかって、リーリカが腰に手を当てた。
うわぁ、ありがとうリーリカ!
私の心を代弁してくれようとしてるんだね。
やっぱり持つべきものは、理解のある友達――。
「アリスが負けるわけ、ないじゃない! だってアリスはあたし史上、最高の存在なんだから!!」
リーリカぁぁぁぁぁぁ!?
私の心を代弁するどころか、火に油を注ぎはじめちゃったよ!?
「ユ、ユピだって! アリスが負けるわけないって、思ってるの!!」
ユピまで!?
どうしちゃったの、私の理解ある二人の友達!?
「……言いますわね。リーリカさん、ユピさん。わたくしがアリスさんに負けると、そうおっしゃいたいんですの?」
「そうよ! アリスの実力は、並大抵のものじゃないんだから!!」
ラウンジに響き渡るほどの声を上げたかと思うと、リーリカはそっと、自分の胸に手を当てる。
「……あたしはアリスの第一人者。アリスのことならなんだって知ってるんだから。虫が嫌いで、虫を見ると大声を上げちゃうことも! ボーッと考え事してるときは、ニヤニヤしちゃうところも! 眠ってるときはちょっとだけ、口を開けちゃう癖があることも!! みんな、みーんなっ! 知ってるんだから!!」
「リーリカぁぁぁぁぁぁ!?」
私は思わず友人の口をふさぎ、その場に押し倒した。
あおむけに寝転がったリーリカ。その上に覆いかぶさった私。
「あん! もぉ、アリス。人前でこんな……恥ずかしいよ」
「恥ずかしいのはこっちだよ! なんで私のプライバシーを暴露してるの!! 試合と関係ないじゃない!?」
「あ……あはは。つい、カッとなって」
カッとなって――じゃないよ!
こっちは顔から火が出そうなほど恥ずかしいんですけど!!
「大切な試合の話をしているのに、いちゃいちゃと……随分と、余裕たっぷりですわね。アリスさん?」
くすくすと、ラウンジ中から漏れ聞こえる笑い声に紛れて。
不機嫌そうなチェリルの声が、響いてきた。
「まぁまぁ、チェリル。チェリルにはボクが、いちゃいちゃしてあげるから!」
そう言って、後ろからギューッとチェリルを抱き締めるミルミー。
「ちょっ!? 何をしてるんですの、ミルミー!?」
顔を真っ赤にして、バタバタと両腕を振るうチェリル。
そんな彼女をいたずらな目で見て――ミルミーは、はむっと。
チェリルの二の腕を、甘噛みした。
「に――にゃああああああああ!? ミルミー、何するんですのぉぉぉぉぉ!?」
「えー? なんか柔らかくておいしそうだったからぁ……お腹空いてきてたし」
「わたくしの二の腕は、食べ物じゃありませんわ!!」
はむはむ攻撃を繰り返すミルミーに、ぷるぷると身体を震わせるチェリル。
何やってんだ、この人たち。
「大切な試合の話をしてるのに、いちゃいちゃと……随分と、余裕たっぷりだね。チェリル?」
「あ、貴方に言われたくないですわリーリカさん!」
「……ユピは、どっちもどっちだと思うの」
私たちの戯れをジト目で見ながら、ユピが至極まっとうなツッコミを入れる。
「ねぇねぇ、どっちが勝つと思う?」
「やっぱりアリスさんじゃない? ドラゴンを倒したり、校舎を一瞬で消し去ったり、すごい魔法を使えるんだし」
「いやいや、チェリルも負けてないよ。なんたって、魔法に関する知識量は折り紙付きなんだから」
ラウンジにいた女子生徒たちが、私たちのドタバタ騒動を見て、好き勝手なことを言いはじめる。
ああ……もう。
事態がどんどん、大きくなっていくんですけど!




