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中二病を極めた私、異世界魔法を凌駕する  作者: 氷高悠
第1章 第3話「異世界でちやほやされてる私、一方的にライバル視される」
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04 学園一の先輩

 昼休みの喧噪が、一瞬のうちに静寂へと変わった。


 静まり返った教室の中を――カツンカツンと。

 一人の女性が、堂々とした態度で歩いてくる。


 それは……これまでの人生で見たことがないほど、麗しい女性だった。


 腰元まで伸びた青い髪は、日の光に煌めいており。

 ややつり目気味な瞳の周りには、まつ毛がびっしりと生えている。


 女性にしてはかなりの高身長。豊満な胸にくびれた腰元という、抜群のプロポーション。

 背筋はまっすぐに伸びており、歩く姿はまるでモデルみたいですらある。


 たとえるなら――荒野に咲き誇る、気高き一輪の花のよう。


「カ……カカカカカ、カンナ様!?」


 チェリルが上擦った声で、大きな声を上げる。

 それに同調するように、クラス中が沸き立つのを感じる。


 カンナ様?

 って――ルミーユ学園トップの魔法使いっていう、あの!?


「突然割り込んでしまって、悪いね」

「い、いいいいいえ! カンナ様とお話しできて光栄です!!」


 チェリルは背筋をビシッと伸ばして、カンナさんに向かって頭を下げる。

 横を見るとリーリカとユピも、いつの間にか立ち上がっていた。


 あ、やばっ! 礼儀知らずと思われる!!

 私も慌ててフォークを置いて、リーリカたちに続くように席を立つ。


「そんなにかしこまらなくていいよ」


 カンナさんは苦笑して、私たちの前で足を止めた。

 そして――ジッと、私の瞳を見つめてくる。


「え……?」

「君がアリスか。なんでも、ドラゴンを一人で倒したらしいね」

「あ……まぁ。そうです」


 うわぁ。私の名前って、先輩にまで知れ渡ってるんだ。

 改めて、私ってすごいことしちゃったんだなって思う。


「ドラゴンと一人で渡り合うなんて、並大抵のことじゃない。君のその実力は、きっとルミーユ学園にとって、大きな財産となると思うよ」

「あ、ありがとうございます……」

「カ、カンナ様! お言葉ですが、アリスさんは……っ!!」

「君は確か、チェリルだったかな?」

「……え? どうしてカンナ様が、わたくしの名前を?」


 思いがけず名前を呼ばれて、チェリルは目を丸くする。

 そんなチェリルに向かって、カンナさんは事もなげに。


「知っているよ。一年生トップの成績を誇ってきた、期待の魔法使い。同じ魔法使いとして、注目しないわけがないよ」

「あ、ありがたきお言葉!」


 チェリルは顔を真っ赤にして、再び頭を下げる。


 その口元は超ゆるゆる!

 チェリルってば憧れの先輩に覚えていてもらえて、本当に嬉しいんだなぁ。


「学年一の優等生、チェリル。そして編入したばかりでその名を学園に轟かせる、アリス――魔法使い期待の星が、揃い踏みなんだね」


 私とチェリルを交互に見回して、カンナさんはにっこりと笑う。

 その笑顔はきれいだけど――なんだか空恐ろしい。


「先ほどの言い争いは、聞かせてもらったよ。魔法試合――いいじゃない。やってごらん。見届け人は、わたしが務めるから」

「ええ!? カンナ様が、アリスとチェリルの見届け人を!?」


 リーリカが悲鳴にも似た声を上げる。

 私もさすがに、その提案には首をかしげざるをえない。


「あ、あの……どうしてそこまでして、私たちに試合をさせようとするんですか?」


 そう。

 これはあくまでも、一年生同士のいざこざにすぎない。


 そんな後輩のちっぽけな争い事に――どうして学園トップの実力者が、介入してくるっていうんだろう?


「……ルミーユ学園にとって、益になるからだよ」


 カンナさんが目を細めて、微笑む。


「ルミーユ学園を巣立ったものたちは、いずれ魔王グランロッサと戦う運命にある。魔王に打ち勝つためには、今以上に研鑽を重ねなければならない。そのためには、君たちのような実力ある者たちが、先陣を切って皆を引っ張る必要があるんだよ。それが実力者の、定めというものだから」


 ――皆を引っ張る。

 ――実力者の、定め。


 大仰なカンナさんの物言いに、私は身を強張らせる。


 そんな私の緊張を察してか、カンナさんはポンッと私の肩に手を乗せた。


「あはは、そんなにかまえなくていいよ。要はわたしが、次世代の魔法使い同士の戦いを、この目で見たいというだけのことさ」

「は……はい」

「先生も、それでよろしいですか?」


 カンナさんの言葉に、私は教室の前に目をやる。

 そこには騒ぎを聞きつけたらしい担任が、いつの間にか姿を現していた。


「ま、まぁ。カンナがそこまで言うのなら……」


 先生の返事に、クラス中が沸き立つ。


 嘘でしょ!? そんな軽くOKしないでよ!

 私の心の叫びとは裏腹に、試合の段取りはトントン拍子に進んでいく。


「それじゃあ明後日の放課後。場所は校庭。そこでアリスとチェリルの、魔法試合を開催する。見届け人はわたし――カンナが務めるよ。異論はあるかい?」

「ありませんわ」


 チェリルはニヤッと頬を吊り上げ、不敵に笑う。


「アリスさんも、異論はありませんわよね?」



 ――ここまでお膳立てされちゃったら、逆らえるわけがないじゃんね。

 同調圧力って怖い。


 あーあ。

 試合なんて、全然したくないのになぁ。

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